第十話 【処刑サイド:勇者たち】勇者たち、依頼を受けるも失敗続きに終わる、そして、大事件を引き起こす

 勇者たち一行が二度目の遠征に失敗し、勇者たち一行がマリアンヌ姫とギルドで別れた日から一週間後のこと。

 「勇者」島津率いる勇者たちは、自身の実力を伸ばすため、インゴット王国冒険者ギルドにてモンスターの討伐依頼を引き受けていた。

 先日、「黒の勇者」の正体が、自分たちが裏切って処刑したはずの主人公、宮古野 丈である事実を知り、勇者たちは彼に殺されることを恐れ、彼に対抗できるようパワーアップに励んでいた。

 加えて、自分たちが「黒の勇者」を処刑しようとした事実が国民にばれ、遠征中は立ち寄った町や村で金品を奪い遊び惚けるという醜態まで晒していたため、国民全員から連日大バッシングを受けており、勇者たちは何としても勇者としての実績を上げ、一刻も早く名誉挽回を図る必要があった。

 だがしかし、勇者たちは次々に討伐依頼を受けては失敗し続けた。

 原因は、勇者筆頭である島津のプライドの高さと無計画性にあった。

 島津は、何としてでも「黒の勇者」に実力で追いつき、「黒の勇者」を排除することにこだわった。

 また、勇者としての名誉を一刻も早く挽回したい思いが誰よりも強かった。

 勇者たちは、レベルアップと名誉挽回のため、無謀にも「黒の勇者」の真似をして、相場より達成報酬が低報酬かつ内容が高ランクで難易度が高い依頼、通称ハズレ依頼をいくつも受け続けたのだが、全てことごとく失敗した。

 ハズレ依頼を受け始めた1週目で、勇者たちはSランクやAランクのハズレ依頼をいくつか受けたが、依頼達成ができず全部失敗した。

 モンスターたちを討伐できず、怪我人が続出した。また、モンスターたちを討伐できず、勇者たちの攻撃を受けて怒ったモンスターたちを放置して逃げ帰ってきたため、モンスターの討伐依頼を出した町や村で、怒ったモンスターが暴れ回り、町や住人に多大な被害が出た。

 おまけに、モンスターたちの討伐依頼に失敗し、怒ったモンスターたちを放置して、依頼が未達成に終わったことをギルドに隠していた。

 依頼主の町や村からギルドに、苦情と損害賠償請求が殺到し、事態を重く見たギルドはただちに勇者たちを呼び出し、厳重注意を行った。

 そして、勇者たちはS級冒険者からA級冒険者へのランク降格と、ギルドへの依頼未達成の違約金、依頼主たちへの損害賠償金の支払いという重いペナルティが下された。

 勇者たちには毎月全員に国から支援金という名目で多額のお小遣いが支給されていた。

 「七色の勇者」たちには一人につき月1億リリス、そのほかの勇者たちには一人につき月5,000万リリスが支給されていた。

 だが、勇者たちはその小遣いのほとんどを、ギャンブルやキャバレー、娼館、高級ブランド品の服や化粧品の購入、高級レストランでの食事などの代金に使っていた。そのため、彼らはギルドや依頼主から違約金や損害賠償金を請求されると、慌てて国に助けを求め、何とかその週の分は立て替えてもらった。

 けれど、S級冒険者がA級冒険者に降格するなど、前代未聞の出来事であった。

 勇者たちが依頼に失敗し、ランクが降格し、さらに多額の違約金や損害賠償金を請求された話はすぐに広まり、彼らはさらに国民から信用を失くした。

 Lv.20でC級冒険者に届く程度の実力しかなく、実戦経験も皆無の勇者たちに、SランクやAランクのハズレ依頼をこなすことが無理なことはちょっと考えれば分かることなのだが、勇者やS級冒険者の肩書きと、彼らのプライドの高さが、勇者たちから冷静さを奪っていった。

 依頼に失敗しても、自分たちへの罰金や損害賠償金は全て国が代わりに立て替えてくれるという安心感もあった。

 ハズレ依頼を受け始めてから2週目のこと。彼らは性懲りもなくSランクやAランクのハズレ依頼をまたいくつも受けた。

 しかし、結局また、モンスターたちは討伐できず、怪我人を出し、怒ったモンスターたちを放置して逃げ帰ってきたため、モンスターの討伐依頼を出した町や村で、怒ったモンスターが暴れ回り、町や住人に多大な被害が出る事態になった。

 勇者たちも前回のことを反省して、依頼が未達成で終わったことをギルドに報告したが、ギルドにはたくさんの苦情と損害賠償請求が寄せられ、対応に困らされた。

 勇者たちはまたギルドに呼び出され、厳重注意を受けた。

 勇者たちにはA級冒険者からB級冒険者へのランク降格と、1週間の冒険者活動の停止、ギルドへの依頼未達成の違約金、依頼主たちへの損害賠償金の支払いというさらなる重いペナルティが下された。

 勇者たちはすぐに違約金や損害賠償金を国に立て替えてもらおうと、王城へ戻って宰相たちに相談したが、立て替えを拒否されてしまった。

 国王に直訴しようとしたが、国王は体調不良で倒れ、面会謝絶中と言われた。

 勇者たちに貯金はほとんど残っていなかったため、総額10億リリスの違約金並びに損害賠償金を勇者たちは背負い、自分たちで支払うハメになった。

 おまけに、1週間の活動停止処分を食らい、冒険者として活動し、お金を稼ぐこともできなかった。

 異世界で国王たちに甘やかされ、贅沢三昧の生活の日々を送っていた勇者たちは、我慢が出来ず、闇金から借金をした。

 闇金から借りた金をギャンブルにつぎ込み、一発逆転を狙ったが、ギャンブルに負け、借りた金を全て失った。闇金からの借金は総額10億リリスであった。

 違約金並びに損害賠償金10億リリスと、闇金の借金10億リリス、総額20億リリスという莫大な金を勇者たちは支払うハメにまで陥った。

 しかも、闇金の借金の利息はトイチ、すなわち10日で1割であり、このまま依頼に失敗し続ければ、借金地獄が勇者たちを待ち受けていた。

 闇金業者の背後には、殺しから恐喝、窃盗、詐欺、違法薬物の売買、人身売買などの犯罪行為に手を染める、元A級冒険者の殺し屋たちが多数いる、犯罪者たちの元締めである闇ギルドと呼ばれる組織がいた。

 もし、闇金からの借金を払えなければ、勇者たちは闇ギルドに命をつけ狙われる危険もあった。

 勇者たちはまさに絶体絶命の危機に直面していた。

 ハズレ依頼を受け始めてから3週目のこと。

 ギルドからの1週間の冒険者活動の停止処分が解けたその日、勇者たちはとあるハズレ依頼を受けようとした。

 依頼内容は、王都を出て馬車で東に街道を進むこと1時間ほどの距離にある、王都近郊の草原に現れたBランクモンスター 、ボナコン90匹の討伐依頼。

 達成報酬は5,000万リリスで、ランクはSランク。

 ボナコンの排出する糞の悪臭が風に乗って街道を通る人や、王都東側の住人に異臭被害をもたらしているため、退治してほしいと、王都の東側に住む貴族より依頼が出ていた。

 達成報酬は相場より4,000万リリア少なかったが、借金まみれの金欠の勇者たちには、5,000万リリアの報酬は決して少なくはなかった。

 王都から徒歩でも行ける距離にボナコンのいる草原があったため、勇者たちは即この討伐依頼を受けようとした。

 しかし、失敗続きの勇者パーティーに、ギルドの職員たちは、このボナコンの群れの討伐依頼を勇者たちに受けさせることには難色を示した。

 受付カウンターで受付嬢が、勇者たちにボナコンの群れの討伐依頼は受けないよう勧めてきた。

 「勇者様たちがこちらの討伐依頼を受けることはお勧めいたしかねます。ボナコンはBランクモンスターではありますが、今回90匹以上の大きな群れを作って行動していると依頼主よりうかがっております。ボナコンは悪臭被害をもたらすモンスターですが、性質はおとなしいので、このまま群れが別の場所へ移動するのを待てば、糞の後始末だけで済みます。それに、勇者様たちはすでに多くのSランクやAランクの依頼に挑戦して失敗なされ、ギルドへの罰金や依頼主への損害賠償金の支払いが滞っている状況です。当ギルドでは勇者様たちへのAランク以上の依頼の斡旋を断る方針を先日決定いたしました。ですので、勇者様たちがこちらの討伐依頼を受けることはできません。代わりに、王都からすぐ南にあるカナイ村のブラッドボア討伐依頼をお勧めいたします。討伐数は一匹、依頼の難易度はDランク、討伐報酬は10万リリアです。ブラッドボアが畑の作物を食い荒らして困っていると依頼主より相談がありました。ブラッドボアはDランクモンスターで、達成報酬も相場と同じで、依頼先の村まで馬車にて40分ほどの距離で、大変お手頃な依頼と思います。失礼とは存じますが、勇者様たちのレベルは相変わらずLv.20のままです。実戦経験や知識も不足しております。勇者様たちはまず、難易度の低い依頼からこなし、徐々に実力と実績を伸ばすべきかと考えます。FランクやEランク、Dランクの依頼でしたら、いつでも、お一人でもお引き受けいただくことができます。そうゆうことですので、ボナコンの群れの討伐依頼は諦めてください。」

 受付嬢は淡々と勇者たちに説明した。

 島津たち勇者は受付嬢の言葉がすぐには呑み込めず、ボナコンの群れの討伐依頼を受けようとしつこく食い下がった。

 「お願いします!僕たちにボナコンの群れの討伐依頼を受けさせてください。今回は今いる勇者35人全員で挑戦するつもりです。怪我を急いで治して、城でトレーニングも積んできました。今回こそ必ず依頼を達成してみせます。どうか、お願いします。」

 勇者たちは全員、島津と一緒に頭を下げて頼み込んだ。

 けれども、受付嬢の答えは変わらなかった。

 「ダメなモノはダメです。勇者様たちにこの依頼を斡旋することはできません。先ほどご説明したように、FランクやEランク、Dランクの依頼でしたらすぐに斡旋できます。BランクやCランクの依頼の斡旋も可能ではございますが、依頼を斡旋する前に、どのような作戦で依頼に臨まれるのか、事前に当方で確認させていただいてから、勇者様たちには斡旋させていただきます。何度頼まれても、Aランク以上の依頼は絶対に勇者様たちに斡旋することはありません。」

 受付嬢の厳しい言葉に、勇者たちは皆肩を落とした。

 そんな勇者たちの姿を、周りにいた他の冒険者やギルドの職員たちは笑って見ていた。

 「ギャハハハ、あのカス勇者たち、またSランクの依頼を受けるとか言ってるぜ。寝言は寝て言えって話だよな。」

 「散々依頼に失敗しているくせして、今更Sランクの依頼を受けられるわけねえだろうが。頭おかしいんじゃねえのか。」

 「たった2週間でSランクからBランクに降格する冒険者なんて聞いたことないぜ。しかも、あんだけSランクの依頼を受けといてレベルが上がらないって、もう終わってんだろ、アイツら。さっさと勇者を止めて田舎で農民でもやった方がマシだろ。」

 「「黒の勇者」様の真似をしてSランクやらAランクやらのハズレ依頼を受けてるらしいが、偽勇者にそんなことできるわけねえだろ。アイツらがこの国から出て行ってくれたら、 「黒の勇者」様がすぐ戻ってきて解決してくれるんじゃねえか。本当に迷惑で身の程知らずの連中だぜ。」

 「依頼を受けないなら、さっさと帰ってくれないかしら。アタシたちの仕事の邪魔なんだけど。ただでさえクレーム処理で散々迷惑かけられて、アタシたちギルドの職員がどんだけ苦労したか本当に分かってんのかしら。顔を見るだけで不愉快になるわ。」

 周りにいた他の冒険者やギルドの職員たちが、勇者たちにわざと聞こえるように大きな声で口々に勇者たちへの文句を言い、嘲笑した。

 勇者たちは恥ずかしさと悔しさで顔を真っ赤にしながら、黙ってギルドを出て行った。

 ギルドを出た後、勇者たちは王都の裏路地に集まった。

 島津が他の勇者たちに向かって言った。

 「みんな、こうなったら、ギルドには黙ってボナコンの群れの討伐依頼を僕たちでやろう。ギルドには事後報告になるが、依頼さえ達成すれば、僕たちはSランクの依頼を達成した冒険者になれる。そうすれば、5,000万リリアの達成報酬が手に入るし、ランクだって上がるはずだ。おまけに、ハズレ依頼を達成すれば、勇者としての信頼と名誉を回復することだってできる。これまで依頼を失敗し続けたのは、僕たちに実戦経験が足りなかったのと、全員では一緒に挑まなかったからだ。だが、今回は違う。これまで受けた依頼である程度実戦経験をみんな積んでいるし、今回の依頼は勇者全員で一緒に挑む。城でもトレーニングに励んだ。今回の依頼が一発逆転の機会になるはずだ。勇者一丸になって、必ずこの依頼を達成してみせよう。」

 島津の言葉に、後のない勇者たちは皆賛同した。

 「では、ボナコンの群れがいる東の草原にこれから急いで向かおう。善は急げだ。」

 無謀にも、ギルドからの忠告を無視し、勇者たちはボナコンの群れの討伐依頼を勝手に受けることを決めた。

 それがとんでもない大事件へと発展することも知らずに。

 島津率いる勇者たちは、馬車を利用する金を持っていなかったため、徒歩で、ボナコンの群れがいる、王都近郊の東の草原へと向かった。

 王都を出て、徒歩で東に街道を進むこと、1時間半ほどかけて、目的のボナコンの群れのいる王都近郊の東の草原へと着いた。

 草原には、依頼書通り90匹のボナコンが群れを成していた。

 ボナコンとは、体長8メートルほどの大きさで、赤褐色の体毛に、頭部には内側に向けて螺旋状に巻いた太い2本の角と、馬のような鬣を持っている、巨大な牛のようなモンスターである。Bランクモンスターで、性質は非常におとなしい。

 だが、ボナコンには恐ろしい能力があり、それは、触れるものを焼き焦がし、服や肌にこびりつくほどの強烈な悪臭を放つ糞を、1匹につき一日に10トンから30トンほど排出するというものである。

 ボナコンの群れの傍には強烈な悪臭と熱気を帯びた、一戸建てぐらいの大きさの糞がいくつもあった。

 ボナコンの糞が放つあまりに強烈な悪臭に、勇者たち全員が鼻をつまみ、顔を顰めた。

 ボナコンの群れから少し離れた岩陰で、勇者たちはボナコンの群れを観察していた。

 「ちょっとマジで臭すぎるんですけど~。アレに近づくとかマジで無理なんですけど~。やっぱ止めない、この依頼?ウンコ着いたら超最悪じゃん。ウチはパスするは、この依頼。他のみんなで頑張ってチョ。」

 「大魔導士」にして「木の勇者」、姫城 麗華が言った。

 「フエエエー、そんなこと言わないでよ、姫城さん。確かに臭いけど、今回はみんなで挑まないと絶対に討伐できないよ。お願いだから、力を貸して?」

 「聖女」にして「土の勇者」、花繰 優美が言った。

 「姫城さん、我が儘を言うのは止めてちょうだい。臭いのを我慢しているのはみんな同じよ。この依頼を達成できなければ、私たちに後なんてないわ。それに、あなたや他の何人かは闇金から借金までしているそうね。だったら、尚のこと協力すべきよ。おとなしく「大魔導士」の力を貸しなさい。」

 そう姫城に向かって言ったのは、「弓聖」にして「風の勇者」、鷹尾 涼風であった。

 「へ~い、分っかりました、涼ちん。面倒くさいなぁ~、マジ。」

 鷹尾から注意され、渋々姫城は従った。

 「むぅ、全く臭くてたまらんでござる。こんな依頼を受けるハメになったのも全部、あの宮古野氏のせいなり。アヤツが生きて「黒の勇者」などともてはやされているせいで我が輩たちはいい迷惑なり。思い出すだけで腹が立つなり。いつかこの槍で必ずアヤツを成敗してやるでござる。」

 主人公への逆恨みを言ったのは、「槍聖」にして「水の勇者」、沖水 流太であった。

 「俺もこんなに臭い牛の糞は嗅いだことがねえんだなぁ~。宮古野の奴が生きてたせいで俺たちみんなこんな酷い目に遭っているんだなぁ~。あの牛を殺したら、次は必ず宮古野の奴をみんなでぶっ殺してやるんだなぁ~。」

 主人公への殺意を口にするのは、「槌聖」にして「雷の勇者」、山田 剛太郎であった。

 他の勇者たちも皆、口々に主人公、宮古野 丈への逆恨みを口にする。

 全ては自分たちの自業自得にも関わらずだ。

 「みんな臭いのも、宮古野への恨みも今は我慢して耐えてくれ。まずはあのボナコンの群れをみんなで討伐することに集中しよう。大丈夫、僕たちは勇者だ。そして、今までの僕たちとは違う。絶対に討伐できる。さぁ、みんなで力を合わせてボナコンどもを討伐して、栄光を取り戻すんだ。」

 「勇者」にして「光の勇者」、現勇者筆頭の島津 勇輝が、勇者たちを鼓舞した。

 「では、討伐開始だ、みんな。」

 島津の合図を受けて、勇者たちは岩陰から出て、ボナコンの群れに近づいた。

 そして、ボナコンの群れへ近づくなり、一斉にボナコンの群れへ向かって攻撃した。

 「一斉攻撃開始!食らえ、破邪一閃!」

 「無限詠唱!」

 「聖光結界!」

 「激流突貫!」

 「疾風必中!」

 「雷電爆砕!」

 勇者たちの攻撃がボナコンの群れに直撃した。

 しかし、至極当然だが、Lv.20でCランク冒険者にギリギリ届く程度の勇者たち35人の攻撃が、90匹もいるBランクモンスター、ボナコンに通用するわけがなかった。

 勇者たちの攻撃を受けても、ボナコンたちはびくともしなかった。

 ボナコンたちは勇者たちから攻撃を受け、怒りだし、一斉に勇者たちを襲おうと勇者たちに向かって突撃を開始した。

 「ひ、ひるむなぁ、攻撃をし続けるんだ!」

 島津の指示で、勇者たちは自分たち目がけ突撃してくるボナコンの群れに攻撃するが全く歯が立たない。

 回復術士や盾士の張った防御用の結界もあっさりとボナコンたちは突き破り、勇者たちに襲いかかった。

 「く、くそ、撤退だぁー!全員撤退!」

 島津がそう言って、我先にと走って逃げだした。

 他の勇者たちも慌てて島津の後を追うように逃げ出した。

 だがしかし、ボナコンたちは目に怒りを浮かべて、勇者たちをその2本の角で突き殺そうと、猛追してくる。

 勇者たちは全速力で必死に追ってくるボナコンたちから逃げた。

 そして、ボナコンたちに追われたまま王都へと逃げ帰った。

 勇者たちを追って、90匹ものボナコンの大群が一斉にインゴット王国の王都へと流れ込んできた。

 王都へと流れ込んでくるボナコンの大群に、王都の人々は恐怖した。

 「ぼ、ボナコンの大群だぁー!みんな逃げろぉー!」

 「キャアアアー、誰か助けてー!」

 「な、何でボナコンの群れが王都に入って来るんだぁ!?」

 「み、見ろ、ボナコンの群れの前を勇者たちが走っているぞ!?アイツらがボナコンを引き込んだんだ、クソがぁ!」

 「は、早く冒険者ギルドに知らせろ!このままじゃ王都が滅んじまうぞ!」

 勇者たちは周囲の目も気にせず、ボナコンの群れの追撃から逃れるため、一目散に王城へと逃げ帰った。そして、王城に閉じこもった。

 三時間後、勇者たちのせいで侵入してきたボナコンの群れによって、王都は壊滅的被害を受けた。

 流れ込んできたボナコンたちが民家や商店、公共施設などを手当たり次第に破壊して暴れ回った。

 ボナコンたちが排出する大量の糞が王都に散らばり、王都中がボナコンの糞の悪臭に包まれた。また、ボナコンの糞が着いた建物が、ボナコンの糞の持つ熱の影響で火が付き、大規模な火災が発生した。

 暴れ回るボナコンに轢き殺され、あるいは突き殺され、大勢の一般市民が亡くなった。

 ボナコンを追い払おうと対応に当たった騎士たちや冒険者たちにも、多くの死傷者が出た。

 王都でボナコンたちの被害を受けた死傷者並びに被害者の数は延べ500万人に上った。

 ボナコンたちの襲撃で、王都では家や家族を失くし、難民で溢れた。

 勇者たちが引き起こしたボナコンの群れによるインゴット王国王都襲撃事件は「ボナコン・ショック」と呼ばれ、世界中に衝撃的なニュースとして瞬く間に流れた。

 この事件は後の世に前代未聞の歴史的大事件として記録されることになる。

 そして、この「ボナコン・ショック事件」を引き金に、勇者たちの転落劇が始まった。

 

























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