【中間選考突破!!】異世界が嫌いな俺が異世界をブチ壊す ~ジョブもスキルもありませんが、最強の妖怪たちが憑いているので全く問題ありません~
第七話 主人公、新たな武器を授かる、そして、第三のダンジョンへ向け旅立つ
第七話 主人公、新たな武器を授かる、そして、第三のダンジョンへ向け旅立つ
僕たちが「火の迷宮」を攻略し、「剣聖」前田とその仲間たちを倒してから2週間が経った。
本当はダンジョン攻略後、すぐにでもラトナ公国を出発し、「木の迷宮」があるペトウッド共和国へと旅立つ予定であったが、クリスから僕たちに改めて御礼がしたいと言われ、その準備に2週間はかかり、しばらく待っていてほしいとも言われたため、やむを得ず、ラトナ公国への滞在期間が延びることとなった。
御礼などいらないと言って、すぐに出発しようとしたのだが、クリスがどうしてもと言って僕にしがみついて離してくれず、強引に引き留めてくるため、しょうがなく残ることになってしまったのだ。
2週間の間、特に用事もないため、僕たちはギルドでこれまでと同じように依頼を受けて過ごした。
すでに僕たち「アウトサイダーズ」によって、ラトナ公国内のハズレ依頼はほとんど達成されていたため、AランクからFランクまで、ランクを問わず通常の依頼を適当に受けて過ごした。
ハズレ依頼ほど難易度が高くはないため、特に依頼に失敗することもなく、無事達成することができ、ちょっとしたお小遣い稼ぎになった。
そして、クリスとの約束の期限である2週間が経過した。
僕たちはクリスにより屋敷の応接間へと呼び出された。
応接間に入ると、クリスが笑顔で僕たちを出迎えた。
「やぁ、「アウトサイダーズ」の諸君。ついに君たちへのお礼の準備が整ったよ。色々と話したいことがあるし、とりあえずそこのソファに腰かけてくれたまえ。おっと、ジョー君は私の隣に座ってくれたまえ。」
僕たちはクリスに言われ、ソファへと腰かけた。
「さて、「アウトサイダーズ」の諸君、このたびは私の依頼を受けてくれて本当にありがとう。君たちのおかげで無事、「火の迷宮」を攻略し、「火の迷宮」跡をブラックオリハルコンの採掘場として手に入れることができた。現在、着々とブラックオリハルコンの採掘作業が進んでいるよ。これから我が国を中心にブラックオリハルコンを使用した魔道具や武器などの開発が進むことになるだろう。そして、ブラックオリハルコンの世界唯一の生産地として我が国は莫大な富を得ることになるだろう。それから、我が国が抱えていた大量のハズレ依頼の達成も感謝する。国の治安は改善され、しばらくの間、国民も安心して生活ができることだろう。本当にありがとう、諸君。」
クリスはそう言うと、一旦テーブルに置かれていたティーカップから紅茶をすすると、ふたたび話を始めた。
「君たちに報告したいことがいくつかある。まず、「火の迷宮」攻略の事後処理についてだが、先日世界各国に向けて「火の迷宮」が崩落し、聖双剣を紛失したことを正式に声明として発表した。もちろん、ジョー君、君の立てた筋書き通り、剣聖たち一行が国の許可を得ず、無断でダンジョン攻略をしようと「火の迷宮」へと侵入し、ダンジョン内で暴れた結果、ダンジョンが崩落、結果、聖双剣もダンジョンの崩落に巻きまれて紛失したという内容でね。今頃、我が国からの声明発表を受けて、各国の首脳陣は驚いて頭を抱えているところだろうね。「光の迷宮」に引き続き、またダンジョンが崩落し、聖武器の一つを紛失する事態になった。しかも、今回の場合は勇者たちが原因で聖武器を失うことになったとあっては、まさに歴史に残る衝撃的事件と言えるね。特に勇者たちを抱えるインゴット王国の評判は大ダメージを受けたことだろう。インゴット王国は勇者たちを召喚直後、すぐに勇者たちに自国の国籍と市民権を与え、勇者たち全員を自国の国民とした。他国の了承も得ずに勇者たちを独占するため、囲い込みをしたわけだが、それがかえって裏目に出たわけだ。自分たちも使う大事な聖武器を自分たちで破壊する勇者なんて、そんな馬鹿な勇者は前代未聞だ。勇者たちを管理するインゴット王国政府を非難する声は今後ますます高まるだろうね。今だって、勇者たちの噂を聞くと、国民から金品や食料など、何でも無償で好きなだけ奪っていいなんていうふざけた王命を盾に、勇者たちは国民から金品や食料などを奪い、その上、碌にモンスターと戦いもせず、遊び惚けているだけだと聞いている。インゴット王国政府の勇者たちへの管理責任を問う声はすでにインゴット王国国内で国民から上がっているとも聞いているよ。正直、あんな勇者もどきのクズみたいな連中が大勢でダンジョン攻略のために我が国に来ることが無くなったと思うとホッとするよ。本当にジョー君たちが先に我が国へ来てくれて良かった。」
クリスは一拍置くと、さらに話を続けた。
「死んだ剣聖たち一行は「火の迷宮」のダンジョン攻略に失敗して敗走、装備や服を残して逃亡したとも発表済みだよ。それで、剣聖たち一行の残した装備や服を調べたところ、彼らの残した持ち物の中から、例のドラゴンブラッドが押収されてね。剣聖たち一行の持ち物を押収したこの国の警備隊の騎士たちも大変驚いていたよ。まさか勇者の持ち物から違法薬物が見つかるなんて考えられないことだからね。特に剣聖の残した持ち物から、ドラゴンブラッドの錠剤が10粒も見つかったよ。総額で2,000万リリアといったところだけど、あれだけのドラゴンブラッドを隠し持っていたとは、報告を聞いた私も驚いたし、呆れて物も言えなかったよ。「剣聖」たち一行がドラゴンブラッドを所持していた、そして、使用していた疑いもあることも発表させてもらった。違法薬物に手を出す勇者、実に恥ずかしい限りだ。他の勇者たちの信用もこの件でさらに落ちることだろうね。後、剣聖たち一行が我が国で強盗を働いていたことも分かった。剣聖たち一行と思われる五人組の強盗がインゴット王国からラトナ公国までの街道に面する町や村で貴金属店を襲撃し、現金や宝石類を奪っていたことが分かった。彼らの残した持ち物の中に、盗難届の出ていた宝石類が見つかってね。勇者が強盗までしていたことが判明して、ウチの警備隊の騎士たちも私も驚いたよ。剣聖たち一行は50万リリアの賞金がかかっている賞金首であることも分かったよ。本当につくづく碌でもない連中だよ。あの連中みたいに、他の勇者の連中も平気で犯罪に手を染めかねないかと思うと、頭が痛くなってくるよ。大公である私の権限で勇者たちの我がラトナ公国への入国は制限することを正式に決めたところだ。犯罪者予備軍みたいな連中を私の大事な国には一歩たりとも入れさせはしないつもりだ。私には、魔族やモンスターよりも、あの勇者たちの方がよっぽどこの世界の害悪だと思えてならないよ。」
クリスはすごく迷惑そうな表情を浮かべながら、そう言った。
僕も、前田たち一行が強盗までしていたと聞いて呆れてしまった。
「クリス、報告をありがとう。情報操作もありがとう。しかし、前田たちの奴、違法薬物に手を出しただけでなく、強盗までしていたなんて、本当にどうしようもない奴らだな。まぁ、元いた世界でも碌でもない連中だったし、本当に殺してよかったと改めて思ったよ。クリス、勇者たちを入国制限するのは僕も賛成だ。正直、他の勇者たちも全員碌でもない連中ばかりで、自分たちの目的のためなら何をしでかすか分からない奴らだ。どうせなら、インゴット王国からラトナ公国の国境沿いに検問所を設けて身分確認をしたらどうだろう?交易や人の移動に多少、支障は出るかもしれないけど、僕もこのラトナ公国が勇者たちに荒らされるのだけは絶対に嫌だ。勇者たちがこの国の高い技術力やブラックオリハルコンに目をつけてやって来る恐れもある。絶対に検問所を設けるべきだと思う。」
「国境に検問所を設けて身分確認か。うん、それは良いアイディアだね。それなら、勇者たちも簡単にはこの国には入ってこられないな。鑑定用の水晶玉や魔道具、鑑定士などを配置して、検問所を設置して固めることにしよう。」
クリスも勇者の入国阻止のため、国境に検問所を配置する案に賛同してくれた。
「私からの報告は以上だよ、ジョー君。それで改めて、御礼として君にこの二つを渡したいと思う。まずはこれだ。」
クリスはそう言うと、銀色のジュラルミンケースのような箱を取り出し、テーブルに置いた。
そして、クリスが箱を開けると、箱の中には、直径2センチほどの太さに、長さが10cmほどの、短い黒い棒のようなモノが入っていた。
僕は短い黒い棒のようなモノを見ながら、クリスに訊ねた。
「クリス、この短い黒い棒のようなモノは一体何だ?」
僕の問いに、クリスは急に興奮した様子で、大声を上げて説明し始めた。
「良くぞ聞いてくれた、ジョー君!これこそ、君に2週間待ってもらった理由なんだ!これは、例のブラックオリハルコンをベースに、さらに複数の金属を混ぜ合わせて極限まで魔力の伝導率や強度を高め、そして、形状や大きさ、質量などを、魔力を流すことで自由自在に変化させることができる超魔導合金、その名もトランスメタルの完成品なんだ。先日、ウィスプたちを討伐する際に私が使ってみせた銀色のダガーの完成品がまさにこれだ。私の使ったダガーには通常のオリハルコンをベースに使っていたが、これは、オリハルコンの100倍の魔力の伝導率と100倍の強度を持つブラックオリハルコンを使用することで、形状変化やサイズの変化、質量の変化を起こしても壊れない耐久性をついに実現することに成功したんだ。このトランスメタルに変えたいと思う形状や大きさ、重さなどをイメージしながら魔力を流すと、その通りに変化するってわけさ。すでに実験も終えて、性能は確認済みだ。長年の私の研究テーマであったが、ついに完成したよ。ジョー君、君に私の開発したこのトランスメタルをあげよう。武器や冒険のアイテムとして、大いに役立つはずだ。是非、使ってくれたまえ。」
僕は、クリスが開発に成功したというトランスメタルの短い黒い棒を手に取った。
う~ん、本当に大丈夫なのだろうか?
ギルドの冒険者たちから聞いた限り、クリスの作る発明品は欠陥品が多く、折れたり、爆発したり、と問題が多いという評判だ。
実際、この前のウィスプたちの討伐依頼の際も、このトランスメタルというのはあっさり壊れてしまっていた。
正直、使用するにはかなり抵抗感がある。
「なぁ、クリス、これ、本当に大丈夫なんだよな?急に折れたり、爆発したりとかはしないよな?それに、僕は多分魔力なんて持っていないぞ?霊能力は持っているけど。本当に使えるのか、これ?」
僕はクリスへ不安と疑問を口にした。
「ハハハ、心配無用だよ。安全性も武器としての性能もちゃんと検証済みだよ。それに、君は魔力を持っていないというが、それ以上のレイノウリョクとやらの力を持っている。君なら絶対に使いこなせるはずさ。とりあえず、この場で使ってみてくれ。絶対に大丈夫さ。」
クリスは自信満々にそう言った。
いまだ不安はあるが、試しに手に取ったブラックオリハルコンの短い黒い棒を僕は右手に掴んだ。
そして、黒い棒を伸ばすイメージを浮かべながら、霊能力を黒い棒へと流した。
青白い光の霊能力のエネルギーを黒い棒へと流した途端、10cmくらいの短い棒から、150cmぐらいの長さの長い棒へと一瞬で変化した。
「おおっ、ちゃんとイメージ通りに棒が伸びた!」
僕はそのまま長い黒い棒の先に、大身槍の穂先をイメージした。
黒い棒の先に、大身槍の穂先が現れ、黒い棒は黒い槍へと姿を一瞬で変えた。
僕は槍の穂先をコンコンと何度か叩いたが、壊れる様子もない。
形状が変化しても爆発も起こらなかった。
「確かにクリス、君の言う通りだ。このトランスメタルは僕のイメージ通りに変化する。それに、材質もとても硬い。本当にこれはすごい武器だよ。素晴らしい武器をありがとう。」
「気に入ってもらえて何よりだよ。ブラックオリハルコンを使ったトランスメタル製のその武器は、オリハルコンを使った武器以上の性能を持つ最新鋭の武器だ。勇者たちの持つオリハルコン製の聖武器のレプリカや、本物の聖武器でもそれには絶対に敵わない。今後の君の勇者たちとの戦いにも役立つはずだ。トランスメタルの開発技術は世界中で私だけしか知らない。私だけしか作ることができない。トランスメタルの開発技術については決して外部には公開しないつもりだ。本当は錬金術師たちの集まる学会で発表したいし、開発技術も公開したいが、この技術が勇者たちに悪用される恐れがある以上、私はこの開発技術を非公開とすることに決めた。テクノロジーの進歩が遅れることになるのは惜しいけれど、それ以上に世界の安全が最優先だ。だからジョー君、私がトランスメタルの開発に成功したことは秘密にしてほしい。そして、そのトランスメタルを人類の平和を守るために使ってほしい。約束してもらえるかな?」
クリスがいつになく真剣な表情で僕に訊ねてきた。
確かに、このトランスメタルの性能はすごい。
このトランスメタルを武器の材料に使用すれば、とんでもない武器が次々に生まれることになるだろう。
しかし、トランスメタルの開発技術が勇者たちやインゴット王国の手に渡れば、悪用されることは間違いない。
僕はクリスに向かって答えた。
「分かったよ、クリス。約束する。君がトランスメタルを作れることは絶対に誰にもしゃべらない。そして、君からもらったこの武器を人類の平和を守るために使うことを誓おう。君の思いは確かに受け取ったよ。」
僕の答えに、クリスは笑顔になった。
「ありがとう、ジョー君。それでこそ私が見込んだ甲斐がある。君になら安心して託せるよ。よろしく頼むよ「黒の勇者」様。」
「ああっ、任せてくれ。本当にありがとう、クリス。」
僕はそう言うと、トランスメタルの黒い槍を、元の10cmくらいの短い棒へと戻した。
「そうだな、中国の小説「西遊記」の孫悟空という妖怪が持つ如意棒に似ているから、この棒は「如意棒」と名付けよう。よろしくな、「如意棒」!」
「如意棒」と名付けたその短くて黒い棒を、僕は着ているジャケットの左の胸ポケットへとしまった。
「それから、もう一つ、ジョー君に渡す物がある。丈君、手を出してくれ。」
クリスに言われ、僕は右手をクリスの方に差し出した。
僕が右手を差し出すと、クリスは懐から金色の指輪を取り出し、それを僕の手のひらの上に置いた。
指で摘まんで見ると、指輪には交差する二本の剣と、交差する剣の間に炎をイメージしたような絵が挟まれるように描かれていて、何かの紋章のように見える。
いわゆるシグネットリングと呼ばれるものだった。
「ジョー君、その指輪の印章は我がラトナ家の紋章が描かれている。その指輪は我がラトナ家の一員の証を意味する。つまり、君は晴れて私と親戚になったということだよ。ジョー君、今日から君にラトナ公国子爵の爵位を与える。そして同時に、我がラトナ家の一員として迎え入れよう。おめでとう、今日から君は正式に貴族の仲間入りだ。それも大公であるこの私の親戚だ。期待しているよ、ジョー・ミヤコノ・ラトナ子爵殿。」
クリスがニヤリと笑いながら、とんでもないことを言った。
「ちょ、ちょっと待ってくれ、クリス。僕が貴族で子爵だって!?それも君の親戚になるだなんて、ただの冒険者の僕には荷が重すぎる。第一、貴族ってのは領地が与えられて、領地経営とかしなくちゃいけないんだろ?これから世界中を旅する僕に、領地経営なんてする暇は全くないぞ?それに、ぽっと出の僕が大公である君の親戚にいきなりなったりしたら、僕は他の貴族たちから反感を買う恐れだってあるんじゃないのか?」
僕は慌ててクリスに訊ねた。
「心配はいらないよ。与えるのは子爵の位だけで、領地を君に与えることはない。あくまで子爵になってくれればそれで構わない。調べたところ、君や君の仲間たちには国籍がないことが分かった。だから、君や君の仲間たちには我がラトナ公国の国籍と市民権を与えることに決めた。そして、君には我がラトナ公国の子爵の位を与えることに決めた。君の我が国への貢献を評価しての計らいでもある。私と親戚になることに反感を持つ貴族がいるのではと懸念を持っているようだが、その心配は皆無だよ。「黒の勇者」様と呼ばれる君が我が国の一員になり、私の親戚となることに反対する貴族は誰もいないよ。むしろ、大喜びすることだろう。実際、君や君の仲間たちに助けられたという貴族は大勢いる。有名な英雄が我が国の一員になることは誇り以外ないよ。ラトナ公国子爵という肩書はきっと君の旅に今後大いに役立つはずだ。その指輪を見せれば、他国の王族だろうと、勇者たちであろうと、君に迂闊には手が出せなくなる。まぁ、そんな深く考えず、黙って受け取ってくれ。その指輪は左の小指に嵌めるようになっている。指輪を嵌めて私に見せてくれないか?」
「ハアー、分かったよ。ありがたく頂戴させてもらうよ。」
僕は左手のグローブを外すと、それから左手の小指に、クリスからもらった指輪を嵌めた。
指輪を嵌めた途端、クリスが僕の左手を急に両手で掴むと、突然僕の左手を自分の胸へと押し当てた。
「フフフ、これで君は正式に私と親戚になったわけだ。どうだい、ジョー君。私と親戚になったんだから、この際、私と結婚しないかい?私も女である以上、子供が欲しいし、大公である以上、後継ぎも必要だ。これでも結構、スタイルには自信があるよ。私と結婚すれば、私のこの大きな胸を毎日好き放題触らせてあげてもいい。おまけに私は大公だから、お金にだって苦労はさせないよ。「黒の勇者」様と呼ばれる君と大公の私が結婚すれば国民も大いに喜ぶはずさ。いかがかな、ジョー君?」
突然のことに僕は驚き、固まってしまった。
僕とクリスが結婚?
年齢は一回り以上離れているけど、確かにクリスは美人だし、性格にちょっと難があるけど、ラトナ公国の大公で、優しい大人の女性でもある。
魅力的な女性ではある。
後、思ったより胸が大きい。
普段男装しているから気付かなかったが、Eカップくらいあるんじゃ。
あれこれ僕が考えていると、ふいに後ろから体を掴まれ、クリスから引き剥がされた。
僕の体を掴んでいたのは、玉藻、酒吞、鵺の三人だった。
「クリス様、丈様は現在大事な旅の途中です!あなた様と結婚するわけにはまいりません!大体、自分の胸を殿方に押し付けるなど下品な真似はお止めください!丈様の教育に悪影響です!」
「クリス、いや、ババア、あれほど丈に変なちょっかいを出すなと言ったのに、またちょっかい出しやがったな!丈がお前と結婚だなんて、俺たちが許すわけねえだろ!今すぐそのピンク色の頭をぶっ潰してやろうか、この色ボケババア!」
「丈君があなたと結婚することは100%ない!無理やり結婚を迫るようなら、私たちが断固阻止する!15歳も年下の男に求婚するなんて、正に変態!ショタコン変態年増女は今すぐ死んだほうがいい!この場ですぐに殺すべし!」
玉藻、酒吞、鵺の三人はクリスを殺さんという剣幕であった。
「さ、三人とも落ち着いて!今のはクリスの冗談だから!そんなに怒らないでくれ。僕はクリスと結婚する気はないから。僕は復讐の旅が終わるまで誰かと恋愛をするつもりは全くないよ。だから、とにかく落ち着いて、ね?」
僕の言葉を聞いて、三人は落ち着きを取り戻した。
が、少ししょんぼりと落ち込んでもいた。
「旅が終わるまで恋愛はしない、ですか。」
「恋愛を全くするつもりがねえ、か。」
「誰かと恋愛をするつもりは全くない、それはそれでちょっと複雑。」
三人の落ち込む姿に僕は首を傾げるのだった。
「あ~あ、残念だな。私も結構本気だったんだけどな。でも、ジョー君の決意は固そうだし、一時断念するとするよ。でも、私は諦めたわけじゃないから。まぁ、他の三人も苦労しているみたいだし、頑張ってくれたまえ。私は別に正妻でなくても構わないからさ。やれやれ、恋愛というモノは研究以上に難しいものだね、まったく。」
クリスも三人を見ながら、本気かどうかは分からないが、残念そうに言った。
「ええっと、クリス、爵位と指輪をありがとう。それに、僕たち全員に国籍と市民権をくれてありがとう。おかげでこれからも安心して旅を続けられるよ。君には本当に世話になったよ。感謝してる。それじゃあ、僕たちはこれで失礼させてもらうよ。次のダンジョン攻略が僕たちを待っている。「如意棒」と指輪、大事に使わせてもらうよ。またいつか、みんなで必ず君に会いに行くよ。本当にありがとう。」
「こちらこそ、世話になったよ。君たちの旅の安全を私も願っているよ。私もまた君たちと会える日を楽しみに待っているよ。」
僕とクリスは別れの挨拶を交わすと、固い握手を結んだ。
それから、僕たちは荷物をまとめると、クリスに見送られながら、クリスの屋敷を後にした。
しばらく歩いていると、ラトナ公国からペトウッド王国へと続く街道に出た。
僕は、玉藻、酒吞、鵺の三人に向かって言った。
「三人とも、ペトウッド共和国へ行く街道に出たし、この辺でそろそろ空を飛んでの移動に切り替えないか?」
僕が三人に訊ねると、玉藻が答えた。
「丈様、すみません。三人だけで話がしたいので、少々お時間をいただいてもよろしいでしょうか?すぐに終わりますので。」
「うん、別に構わないよ。ゆっくり話をしてくれ。僕はちょっと離れたところで待ってるから。」
僕は三人から10m離れた場所へと移動し、三人の話が終わるのを待つことにした。
玉藻、酒吞、鵺の三人は円陣を組むと、ヒソヒソと話を始めた。
きっと、ペトウッド共和国までの旅路についてや、「木の迷宮」のダンジョン攻略についてなど、話をしているのだろう。
「お二人とも、丈様は復讐の旅が終わるまで誰ともお付き合いをするつもりは全くないとおっしゃいました。そちらも非常に残念で気にはなりますが、それ以上に、丈様が今後、
「ああ、その通りだぜ。クリスの色ボケババアみたいな連中がわんさかと丈の前に現れるかもしれねえ。丈は今や「黒の勇者」様とやら呼ばれる英雄だ。アイツにたかってくる他の女どもが現れたら、絶対に俺たちで引き離すぞ。丈に悪い虫が付いたりしたら大変だしな。この旅で必ず俺たちの魅力で丈を落とすぞ。多少エロい手を使うのもアリだ。他の女にとられる前に丈を手に入れようぜ。」
「私も同意。ジョー君は今後ますます女性にモテるはず。丈君が鈍感で自分に自信が無いのが幸いしているけど、それもいつかは崩れるはず。他の女にとられるまえに何としても丈君のハートを私たちで射止める。ショタコン、ブラコン、ファザコンの変態女は絶対に丈君に近づけさせない。丈君の貞操は私たちで守るべし。」
玉藻、酒吞、鵺の三人は、旅路やダンジョン攻略についてでなく、宮古野 丈に自分たち以外の異性が寄り付かないための対策と、今後より一層彼へ異性アピールすることについて話をしていたのであった。
玉藻、酒吞、鵺の三人が円陣を解いた。
どうやら、話は終わったようだ。
「三人とも話が終わったようだから、みんなですぐそこの森に入ろう。森の中に入ったら、いつものように空を飛んでペトウッド共和国まで飛ぶことにしよう。」
それから、僕たちは街道のすぐ横の森の中に入り、人目が無いことを確認すると、鵺に運ばれて空を飛んで移動を始めた。
次の目的地は、ペトウッド共和国にある「木の迷宮」と呼ばれるダンジョンである。
僕が異世界に召喚されてから2カ月あまりの月日が経過した。
ラトナ公国での日々は、大公であり変人科学者のクリスと出会い、彼女に振り回される忙しく大変なモノでもあったが、同時に、多くのモノを得ることもできた。
「火の迷宮」を攻略し、聖双剣を破壊した。
「剣聖」前田外4名の勇者たちに復讐できた。
ブラックオリハルコンを使用した最新鋭の武器「如意棒」を手に入れた。
ラトナ公国子爵の位を授かった。
ラトナ公国で僕の復讐は大きく前進した。
僕を虐げる異世界の悪、勇者たち、インゴット王国の王族たち、光の女神リリア、僕と敵対する異世界の者たちよ。
お前たちの計画はこの僕が全部ブチ壊してやる。
そして、必ず全員漏れなく地獄へ落としてやる。
僕の異世界への復讐の旅は、次の復讐の舞台へと向かって進んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます