第六話 主人公、剣聖と再会する、そして、復讐する
僕たちは無事、「火の迷宮」を攻略し、聖双剣を破壊した。
僕たちはダンジョン攻略を終え、ボルケニア火山から下山していた。
雑談をしながらみんなで下山をしていると、ちょうど麓のあたりにまで下りた時、山道の反対側から五人組がこっちへ向かって登ってくるが見えた。
こんな深夜の山の中を歩いて登ってくるのは一体何者だろうか?
僕がそんなことを考えていると、月明かりに照らされて反対側から山道を登ってくる五人組の姿がはっきりと見えた。
その五人組は、同じく反対側から山道を下ってくる僕の顔を見て、驚き、声を上げた。
「て、テメエは宮古野!?何でこんなところにいやがる!?い、いや、どうしてテメエが生きていやがる!?テメエはあの日俺たちが殺したはずじゃ!?」
「剣聖」にして「火の勇者」、前田 敦が信じられないと言った顔でこちらを見てくる。
「久しぶりだなあ、前田。それに他の四人も。勝手に人を殺されちゃあ困るな。大体僕がお前たち雑魚勇者の攻撃なんかで死ぬわけないだろ?ちゃんとこの通りピンピンしてるよ。さて、こんな深夜にコソコソと五人でこの山を登って来たってことは、お前たち、国の許可も取らずに「火の迷宮」のダンジョン攻略に挑みに来たってところだろ?残念だったな。一足違いだ。「火の迷宮」はすでに僕たちが攻略した。お目当ての聖双剣も木っ端微塵に破壊した。ようするに無駄足ってわけだ。本当にご愁傷様。」
僕の言葉を聞いて前田たちは怒った。
「テメエ、宮古野、テメエみたいなジョブもスキルも無い能無しにダンジョン攻略なんてできるわけがねえ!?嘘ついてんじゃねえぞ、コラっ!」
「嘘なんかついていないよ。お前たちは知らないだろうが、僕はこう見えてもS級冒険者でね。一応「アウトサイダーズ」って言うSランクパーティーのリーダーをやっている。まぁ、お前たちが僕の話を信じようが信じまいが別にどうでもいいことだ。だってお前たち全員、今からここでこの僕に始末されて死ぬんだからね。死んでいく人間にどう思われたいかなんて考えるだけ時間の無駄だろ?」
僕はそう言って、ニヤリと笑った。
前田たちは僕からの殺害予告を聞いて慌てだした。
「お、俺たちを始末するだと!?て、テメエみたいな無能にそんなことできるわけが・・・」
「お、おい、敦。今、宮古野の奴、「アウトサイダーズ」って言わなかったか!?それって、例のとんでもない凄腕揃いのSランクパーティーじゃなかったか?」
「あ、「アウトサイダーズ」のリーダーは「黒の勇者」とか言う英雄だって聞いたぞ。宮古野の着ている服は真っ黒だしよ、もしかして本当なんじゃ!?」
「宮古野が「黒の勇者」なら俺たち全員束になってかかっても勝ち目なんてねえよ!?やべえよ、どうすんだよ、敦!?」
「ごちゃごちゃうるせえぞ、お前ら!どうせハッタリに決まってんだろうが!?ビビッてんじゃねえぞ!」
前田たちは混乱し、全員ガクガクと足を震わせている。
「丈様、いかがなさいますか?あの勇者たちは
「俺もあのくそ勇者どもは前々からぶっ殺してやりてえと思ってたんだ。俺たちの大事な丈を殺そうとしたアイツらにはきっちり落とし前を付けねえと気が済まねえぜ。五人もいるんだ、一人くらい俺がぶっ殺してもいいだろ、なあ、丈?」
「丈君を殺そうとした、それだけで万死に値する!あのゴミ共に生きている価値はない。即殺すべし。私もあのゴミ共を殺すのに手を貸す。雷でも落として、アイツら全員焼却処分にする、丈君?」
「アイツらが噂の勇者かい?う~ん、私のモノクルで連中のステータスを鑑定して見るけど、全員Lv.20しかない弱っちい奴ばっかりだよ。正直C級冒険者がギリギリってところかなぁ。ダンジョン攻略にたった5人で、しかも全員近接攻撃に特化した剣士だけっていうかなり偏った構成でパーティーを組んで挑んで来るあたり、多分ほとんど実戦経験がないんじゃないかな?はっきり言って連中は全員ド素人だね。あんな滅茶苦茶なパーティーでダンジョンなんかに挑んだらすぐに死ぬのが分からないのかな?大体、大公であるこの私の許可も得ずにダンジョン攻略をしようなんて、例え勇者でも見過ごすことはできないねえ。明らかに違法行為だ。おまけに可愛いジョー君を殺そうとするなんて実に腹が立つ連中だ。ジョー君、ラトナ公国大公の私が許可する。あの不届きな勇者たちを君の手で即刻処刑してくれたまえ。遺体にもサンプルとしての価値は無さそうだから、塵も残さず殺してくれても構わないよ。」
玉藻、酒吞、鵺、クリスが前田たちを見ながら口々に怒りを露わにした。
「了解、みんな。みんなは手を出さないでくれ。アイツらは全員僕が責任をもって始末する。すぐに終わらせるからそこで見ていてくれ。それじゃあ、楽しい復讐ショーの幕開けと行きますか。霊拳!」
僕は霊能力を全開にして解放した。
僕の全身が青白く発光し、まばゆい光が全身を包んだ。
僕は体に霊能力を纏った。
僕の体の変化に気が付き、前田たちは慌てふためいた。
「み、宮古野、て、テメエ、何をしていやがる!?ま、まさか、テメエもジョブとスキルを持ってんのか!?能無しのはずじゃなかったのかよ!?」
「あ、敦、話が全然違うじゃねえか!?ダンジョン攻略はできねえし、宮古野に殺されるかもしれねえし、どうすんだよ、おい!?」
「敦が絶対大丈夫だって言うから付いてきたんだぞ!お、俺はまだ死にたくねえ、な、なあ、今すぐ逃げようぜ!?」
「み、宮古野の後ろにいる女、大公とか言ってたぞ!?俺たちを処刑しろって言ってるぞ!?マジでやべえよ、どうすんだよ、おい!?」
「みんな、今すぐ逃げるぞ!どう考えたってこのままだと全員殺されるぞ!?勝ち目なんてねえよ、絶対!宮古野のあの姿、絶対にヤバい奴だろ!?」
「ビビッてんじゃねえぞ、お前ら!あんなのこけおどしに決まってんだろうが!?宮古野なんかが強ええわけねえだろう!?良いから剣を抜いて構えろ!」
前田に急かされ、他の四人も剣を抜いて構える。
「ごちゃごちゃ言ってないで、さっさとかかって来いよ。何なら全員まとめてかかって来いよ。余裕で殺せるだろうし。」
僕は前田たちを挑発した。
「調子に乗ってんじゃねえぞ、宮古野!一、孝、お前らでアイツをぶっ殺せ!」
前田から命令され、甲斐元 一、立野 孝の二人が剣を持って僕の方へと突っ込んで来る。
「行くぜぇー、宮古野!高速斬!」
「くそがぁー、鉄壊斬!」
高速で振り回される剣による連撃と、上段の構えから勢いよく繰り出される重い斬撃が、左右から同時に僕を襲ってきた。
しかし、二人の攻撃を僕はあっさりとかわしてみせた。
そして、二人の背後へと一瞬で移動すると、甲斐元の顔面に右ストレートのパンチを打ちこみ、次に立野の胴体に右足で回し蹴りを食らわせた。
僕の右ストレートのパンチを顔面に受けた瞬間、甲斐元の頭部が木っ端微塵に吹き飛んだ。
僕の回し蹴りを食らって、立野の胴体は引き裂かれ、立野の体は上下真っ二つに切断された。
時間にして約10秒。甲斐元、立野の二人はあっという間に僕に殺され、死体となった。
「フウ、まずは二人っと。勇者のくせに全然大したことないな。」
甲斐元、立野の二人が僕に殺されたのを見て、前田を含む残りの三人は茫然となった。
「一!孝!み、宮古野、テメエ、よくも二人を殺りやがったな!こうなったら、アレを使うぞ!等、輝彦、ドラゴンブラッドを飲め!それで三人で一気に仕留めるぞ!」
前田、松元、美川の三人が懐から赤い錠剤のようなものを取り出し、それを飲んだ。
赤い錠剤を飲んだ瞬間、前田たちの目が真っ赤に充血したように変わった。
「ウオオオー、力がみなぎるぜ!」
「ハハハ、半端ないぜ、この薬はよお!これなら勝てるぜ!」
「マジでパないぜ、コイツは!?最高だぜ、おい!」
赤い錠剤を飲んだためか、前田たちがひどく興奮しているように見える。
「ほう、ドラゴンブラッドね。あんなモノに手を出すなんて、もはや勇者とは呼べないな。つくづくどうしようもない連中だな。」
後ろにいたクリスが前田たちの様子を見て、呆れるように言った。
「クリス、ドラゴンブラッドって何だ!?今、前田たちの飲んだ赤い錠剤みたいなヤツのことか?」
僕はクリスに訊ねた。
「ああっ、そうだよ。ドラゴンブラッドって言うのは、違法薬物の一つだよ。飲むと一時的にスタミナを回復したり、パワーやスピード、魔力を強化したり、ジョブやスキルのレベルを上げたりすることができる。だけど、中毒性が非常に高くて、繰り返し使用すると、肉体が度重なる急速な強化に耐え切れず、血管や内臓、脳などに深刻なダメージを使用者にもたらすデメリットもあって、最悪中毒死する危険性があるんだ。世界各国で違法薬物の一つに指定され、所持や使用、製造を禁止されている。ランクアップに悩む冒険者たちが使用して問題になるケースが多くてね。ドラゴンブラッドを使用することは冒険者の恥と言われるくらい忌み嫌われる危険な薬物だよ。ドラゴンブラッドに手を染めるなんて、勇者も地に落ちたも同然だね。全く嘆かわしい限りだよ。」
クリスの説明を聞いて僕も呆れてしまった。
「前田、勇者が違法薬物なんかに手を出すなんて恥ずかしくないのか?お前たち、それでも本当に勇者か?もうただの犯罪者だろ、お前たち?」
「うるせえ!俺たちは勇者だ!違法薬物を使っても強けりゃそれでいいんだよ!俺たちは何したって許されるんだよ!凡人の雑魚が俺たちに説教するんじゃねえ!」
前田は違法薬物を使用することをさも当たり前のように言い、そればかりか勇者なら何をしても許されるなどという暴論を吐いて、逆切れしてくる始末だ。
前田のような悪党を「剣聖」に選ぶ光の女神リリアはやはり碌でもない奴だと改めて思った。
「行くぜぇ、宮古野!テメエに「剣聖」の剣ってヤツをたっぷり教えてやるよぉ。死ねえ、豪火十字斬!」
「行け、疾風斬!」
「食らえ、雷鳴斬!」
前田、松元、美川の三人が一斉に剣を振るった。
炎の斬撃、風の斬撃、雷の斬撃が一斉に放たれ、三つの斬撃が僕を目がけて襲ってきた。
飛んで来る斬撃を、僕は避けずに腕を組みながらそのまま受け止めた。
三つの斬撃が僕の体に直撃し、爆発が起こった。
「ギャハハハ、ざまぁみやがれ!宮古野の分際で調子こいてんじゃねえぞ!死にやがれ、カスがぁ!」
前田たちは自分たちの攻撃が僕に直撃したのを見て笑った。
だが、爆発の衝撃で起こった煙が徐々に晴れると、煙の中から無傷の僕が姿を現した。
「「剣聖」の剣ってのも全然大したことはないな。違法薬物まで使って、この程度とは少々拍子抜けしたぞ、前田。お仲間の二人も大したことはないな。異世界に来てから一ヶ月弱も経っているのにその程度の強さで勇者を名乗ろうなんておこがましいにもほどがあるぞ。どうせ自分のジョブとスキルに胡坐をかいて碌に腕を磨いてこなかったことが分かるぞ。お前たちがこの程度の強さなら他の勇者の連中も多分同じくらいの強さだろうな。もう、お前たちには用はない。さっさと死んでもらおうか。」
自分たちの攻撃を受けても無傷の僕を見て、前田たち三人は愕然となった。
「そ、そんな馬鹿な!?「剣聖」の俺の剣が効かないだと!?ドラゴンブラッドまで使ったんだぞ!?こ、こんなの、あ、あり得ねえ!?」
「お、俺の全力の疾風斬が効かないなんて、どうなってんだ、おい!?」
「あ、敦、や、やべえよ!?宮古野、マジで強ええじゃねえかよ!?ど、どうすんだよ!?」
前田たちは僕との実力差がようやく分かり、全員青ざめた顔をして、体をブルブルと震えさせて恐怖していた。
「さてと、それじゃあ、フィナーレと行きますか。お前たち三人にはとっておきの新技をお見舞いしてやるよ。ゆっくりと味わって、地獄に落ちるがいい。ハアーーー!」
僕は霊能力を右の拳に集中させた。右の拳に集まった霊能力のエネルギーがいつもの青白い色から徐々に黒色へと変化していく。そして、黒い霊能力のエネルギーは掌の上で野球ボールほどの大きさの黒い球へと集まって形を変えた。
僕は霊能力の黒い球を作ると、黒い球を右手に持って、野球のオーバースローのピッチングフォームの構えをとった。
「霊呪拳!」
そして、7mほど前方にいる前田たちの頭上目がけて、ゆっくりと黒い球を投げた。
霊能力で作られた黒い球が、ゆっくりと大きな弧を描き、前田たちの頭上へと向かって落下していく。
「は、ハハハ、何だよ、そのヘロヘロ球はよ!?そんな球で俺たちが倒せるわけねえだろうが!?」
前田たちはゆっくりと自分たちの頭上へと落下してくる黒い球を見て、笑っている。
前田たちの頭上まで1メートルほど近づいたところで、突如、黒い球がバアーンという音を立てて爆発した。
そして、黒い球の爆発とともに、どす黒い煙が発生し、前田たち三人を包んだ。
どす黒い煙に包まれた瞬間、前田たち三人は絶叫した。
「「「ギャアアアアーーー!!!」」」
前田たち三人が同時にバタバタと倒れた。
三人ともピクリとも動かず、声すら聞こえてこない。
僕は前方で倒れている前田たち三人に近づいた。
三人とも霊能力の黒い煙を体に浴びたことで、両目を開いたまま死んでいた。
僕は前田たちの死体を見ながら言った。
「これで合わせて5人っと。「七色の勇者」を1名、その他の勇者を4名始末できたわけか。悪くはない成果だな。勇者たちの強さが分かったし、僕の霊能力の方が勇者たちの持つ力より強いことも分かった。おまけに、霊呪拳が対人戦でも効果があることも検証できた。戦果としては十分だ。」
僕が先ほど前田たちの殺害に使った「霊呪拳」とは、霊能力のエネルギーを凝縮して霊能力の持つ呪いの効果を増幅させて、呪いとなった霊能力を相手にぶつけて呪い殺すという技である。
以前、浴びた者を呪い殺す死の視線という状態異常攻撃を使うカトブレパスというモンスターと戦った際、僕の霊能力が呪いに近い性質を持っていることに気づいた。
僕は、玉藻、酒吞、鵺の三人にそのことを話し、霊能力を呪いに変換して攻撃はできないか相談してみた。三人に相談の上、自身で試行錯誤を重ねて編み出したのが、この「霊呪拳」である。
「霊呪拳」には二つのバリエーションがあり、一つは呪いの効果を増幅させた黒い霊能力のエネルギーを拳に纏って直接相手を殴って攻撃する方法である。この方法は、拳の破壊力と呪いの力を組み合わせることで、拳をぶつけた相手を一撃で即死させる攻撃力がある。
もう一つは、先ほど使った、呪いの効果を増幅させた黒い霊能力のエネルギーを拳に纏って、それをためて黒い球を作り出し、ぶつけた相手を呪い殺す力を持った黒い球を相手に投げつけて攻撃する方法である。前述の方法より攻撃力は下がるが、離れた相手に攻撃できる上、時間差攻撃もできるというメリットがある。
「霊呪拳」を使うには、若干ための時間を要するデメリットが現状あるが、今後霊能力が成長すれば、いずれこのデメリットも無くなると、玉藻たちは言っていた。
とにかく、僕はついに勇者たちの首を討ち取ることに成功した。
元クラスメイトたちを殺したことに罪悪感は感じないかと聞かれると、そうでもなかった。
勇者たちは全員、何の罪もないクラスメイトだった僕を自分たちの都合で裏切り、そして、処刑した。
自分を本気で殺そうとした人間を許せるほど、僕もお人好しではない。
それに、今回殺した前田たちは異世界で禁止されている違法薬物に手を染め、国が管理する重要施設へと侵入し、破壊活動をしようとした極悪人だ。
ラトナ公国の大公であるクリスから処刑を依頼されるほどの悪党たちなのだ。
死刑宣告を受けるような悪人に、僕は異世界の法に則り、刑を執行したに過ぎない。
僕が前田たちとの戦いに勝利し、前田たちの死体を眺めながら考えに耽っていると、玉藻、酒吞、鵺、クリスが僕の方に駆け寄ってきた。
「丈様、お疲れ様でございました。そして、勇者たちを見事に討ち取ったこと、大変おめでとうございます。これで丈様の復讐がまた一歩前進いたしましたね。私も大変嬉しい限りです。これからも丈様の復讐が成功するとこの玉藻、信じて期待しております。当然、私も微力ながら引き続きお傍で復讐をお手伝いさせていただきますので、どうかご安心ください。」
「やったな、丈!ついにあのくそ勇者どもに天誅を下したわけだ。連中、きっと仲間が死んだと聞いて慌てふためくぜ。勇者どもなんか怖くはねえ、ガンガン復讐すればいいぜ。俺もお前の復讐にますます力を貸してやるから期待してろよ。」
「丈君、お疲れ様。あのゴミ勇者たちは死んで当然だった。勇者たちは全員間違いなく悪人。だから、丈君が勇者たちを殺した方がこの異世界の人たちにとってもきっと良いはず。私も丈君の復讐をこれからも全身全霊でサポートする。丈君ならきっと復讐をやり遂げると信じてる。」
「ブラボー、ジョー君!あの無法者の勇者たちへの処刑執行、お疲れ様。あの連中に大切なダンジョンを荒らされでもしたら大変だったよ。せっかくのブラックオリハルコンの採掘の機会がパーになっていたところだよ。君は間違いなく、この国の、そして、この世界の英雄、真の勇者だ。さすがは「黒の勇者」様だね。本当にありがとう。」
彼女たち四人から温かい言葉をかけてもらい、僕は思わず照れてしまった。
「ありがとう、みんな。勇者たちに復讐できたのはみんなの協力のおかげがあってこそだよ。こちらこそ、本当にありがとう。」
僕は彼女たちに御礼を言った。
それから、クリスに向かって言った。
「クリス、聖双剣の紛失についての筋書きを少し変更したい。聖双剣の紛失は火山活動の影響によるダンジョンの崩落が原因としていたが、前田たち一行が無許可でダンジョン攻略のために侵入し、ダンジョン内で暴れ回ったためにダンジョンが崩落したことが原因である、という風に変えようと思う。聖双剣の紛失が勇者たちの暴走によるものだと世界中に伝われば、勇者たちやインゴット国王たちの評判にダメージを与えることができる。それに、勇者たちが他国でダンジョン攻略に挑むことを足止めすることもできる。それから、前田たち一行についてだが、彼らは結局ダンジョン攻略に失敗して敗走し、装備や服を置いて勇者の責務を放棄し、ダンジョン荒らしをして逃亡したことにしてほしい。前田たちの遺体はこの後、玉藻に頼んで装備や服を残したまま溶かしてもらう。前田たちにはダンジョン崩落の犯人になってもらい、ダンジョンの崩落が人為的なものだということが分かっても、その犯人は僕たちではなく逃亡中の彼らだということにしておきたい。こうすれば、真相は全て闇の中ってわけだ。情報操作、よろしく頼むよ。」
「了解だよ、ジョー君。君も案外悪知恵が働く方だねぇ。そうゆうところも気に入ったよ。「剣聖」ご一行様には盛大に罪をかぶっていただきましょうか。まぁ、実際、ドラゴンブラッドに手を染めるは、無許可でダンジョンを攻略しようとするは、すでに十分やらかしてくれているしね。因果応報ってヤツだね、まったく。」
それから、玉藻に頼んで、装備と服を残し、彼女の毒で前田たちの死体を跡形もなく溶かして処理した。
そして、僕たち5人は馬車に乗って、半日かけて首都のクリスの屋敷へと戻った。
クリスの屋敷に戻ると、ダンジョン攻略を祝い、五人だけでささやかながら、お祝いパーティーを開いて楽しんだ。
ダンジョンを攻略し、聖双剣を破壊し、そして、「剣聖」外4名の勇者たちへ死と言う名の復讐を遂げることができ、僕の心は少し晴れやかであった。
だが、まだ僕の復讐は終わったわけではない。
復讐の標的はまだまだ大勢残っている。
僕を虐げる異世界の悪、勇者たち、インゴット王国の王族たち、光の女神リリア、僕と敵対する異世界の者たちよ。
僕は必ずお前たち全員に復讐する。
必ず全員地獄に落としてやる。
僕の異世界への復讐の旅はまだまだ終わりが見えないのだった。
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