第十話 【????サイド】謎の存在、思惑どおりに事が運び、喜ぶ

 勇者たちの遠征が失敗し、勇者たちの歓迎パレードも失敗し、おまけに国王から勇者たちに「光の迷宮」の崩壊と聖剣の紛失という最悪の知らせが届けられたその日のこと。

 異世界アダマスのとある真っ暗な闇の広がる空間に、一人の存在がいた。

 真っ暗な闇の中、その存在は自身の思惑通りに事が運んだことを知り、喜んだ。

 『フフフ、こうも妾の思惑通りに事が運ぶとは。やはりあの少年に目をつけて正解だった。異世界に召喚されてわずか一日で己の力を覚醒させ、S級冒険者にまでなってしまうとは。あの少年には驚かされることばかりだ。お供として傍にいる女たちも中々の実力者だ。人間ではなく恐らく異世界の怪物あるいは神獣の類だろう。あの少年を慕っているようだが、あの女たちには悪いが、いずれあの少年は妾のモノになる。あの少年こそ我が伴侶にふさわしい。人格も能力も申し分ない。「黒の勇者」というあだ名も妾の伴侶に実にふさわしい名前だ。まぁ、女たちは愛人として傍に置かせても良いが。それはさておき、リリアの奴め、きっと今頃聖剣が破壊されたと知って慌てふためいているに違いない。聖剣を作りたくてもあの女では作れんからな。そもそもあの女に頼まれて妾が適当に作った物だし。それから、勇者たちも国王たちも全員阿保ばかりだな。Lv.20程度で実戦経験もない子供がS級冒険者になろうなど、身の程知らずもいいところだ。おまけに戦いもせず、盗賊のような真似をして遊び惚けているとは、あれで勇者を名乗っているのだから、おかしくて笑いが止まらん。あの勇者たちはおそらくこちらから何もせずとも勝手に自滅するだろう。国王たちも、勇者たちを散々甘やかして、自分たちのせいで勇者たちが成長できず、挙句、国民から嫌われてしまうことになったことに気が付かんとは、少々おつむがどうかしているのではないか?あんな馬鹿どもが王族ではいずれ王国は滅びることだろう。妾が選んだあの少年がいずれ馬鹿な勇者たちや国王たちを滅ぼし、そして、お前の魔族殲滅などという、くだらん計画をブチ壊してしまうことだろう、リリア。ああっ、早くあの少年に会いたい。一緒にあの馬鹿女を破滅させてやりたい。会うのが楽しみで仕方ない。』

 暗闇の中、謎の存在は笑い、主人公と出会う日が来ることを待ち望んだ。











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