【中間選考突破!!】異世界が嫌いな俺が異世界をブチ壊す ~ジョブもスキルもありませんが、最強の妖怪たちが憑いているので全く問題ありません~
第六話 【処刑サイド:勇者たち&国王たち】勇者たち&国王たち、勇者たちの歓迎パレードを開催する、しかし、国民は誰も参加しない
第六話 【処刑サイド:勇者たち&国王たち】勇者たち&国王たち、勇者たちの歓迎パレードを開催する、しかし、国民は誰も参加しない
勇者たち一行が2週間の遠征から戻ってきたその日の夕方、王城に戻った勇者たち一行が、遠征の報告をするため、国王の下へと向かった。
勇者たち一行は王の間へと通された。
マリアンヌ姫が国王に向かって言った。
「お父様、この度の勇者様たちの遠征ですが、実は空振りに終わってしまいました。予定ではアープ村のゴブリンの巣の討伐依頼を実戦訓練も兼ねて行う予定でしたが、ギルド本部のミスで、すでに他の冒険者によって達成された依頼を掴まされたのです。ギルド本部には厳重に抗議し、次こそは必ず勇者様たちにふさわしい依頼を持ってこさせます。私が案内役として付いていながら、この度の不始末、誠に申し訳ございません。」
マリアンヌ姫は申し訳なさそうな顔で、国王へと頭を下げ、謝罪した。
2週間もかけた勇者たちの遠征が空振りになったと聞き、国王はショックで頭が痛かった。
加えて、自分も管理していたはずの「光の迷宮」が崩壊した上に、貴重な七つの聖武器の一つ、聖剣を紛失するという大失態を犯したからだ。
娘以上の失態を自分も犯したとあって、とても姫や勇者たちを責める気分では無かった。
勇者たちの歓迎パレードが終わり次第、勇者たちにショッキングな報告をしなければならないかと思うと、胃が痛んでしょうがなかった。
国王はとりあえず笑って答えた。
「マリアンヌよ、そう気を落とすな。誰にでも失敗の一つや二つはある。次の機会を待てば良い。勇者様たちの引率、ご苦労であった。勇者様たちも長旅、お疲れ様でございました。お疲れとは存じますが、この後、勇者様たちの歓迎パレードを執り行わせていただきたく思います。どうかパレードにご参加いただき、皆さまのお姿を国民たちへ見せていただけますか?きっとパレードは大盛り上がり間違いないでしょう。どうぞゆっくりと歓迎パレードをお楽しみください。」
国王から歓迎パレードの開催を聞き、勇者たちは喜んだ。
それからしばらくして、勇者たちは城門の前に集まり、パレードのために用意された豪華な飾りつけをされた馬車や山車に乗って、パレードの開催を待った。
国王や姫も勇者たちと一緒の馬車に乗った。
音楽隊の演奏が鳴り響き、それから、王都の中央通りへと続く城門が開いた。
「勇者様たちのご入場!」
司会の掛け声を合図に、勇者たちの乗った馬車や山車が城門をくぐり、王都の中央通りへと出た。
勇者たち、国王、姫、誰もが、勇者たちの歓迎パレードのために、中央通りにたくさんの国民が集まっている光景を予想していた。
しかし、彼らの予想とは真逆の光景が広がっていた。
中央通りには、「勇者様歓迎」と書かれた大量の旗や横断幕に、きらびやかな飾りつけが施してあった。
だが、通りには勇者たちを出迎える国民の姿は人っ子一人見当たらない。
昼間は賑やかだったはずの中央通りは、勇者たち以外、無人だった。
あまりにも衝撃的な光景を見て、国王は声を荒げた。
「おい、一体これはどうなっている!?勇者様たちの歓迎パレードに国民が一人も参加していないとは、どうゆうことだ?」
国王も姫も勇者たちも動揺を隠せない。
その時、一人の中年の貴族風の出で立ちの男性が国王のいる馬車に駆け寄り、国王に向かって言った。
「恐れながら陛下、国民は誰も勇者様たちを歓迎しておりません。はっきりと申し上げますが、勇者様たちの国民からの評判は最悪です。故に、国民は皆、今回のパレードには誰も参加しておりません。」
「軍務大臣よ、勇者様たちの国民からの評判が最悪とは一体どうゆうことだ?なぜ、国民は勇者様たちを歓迎していないのだ?訳を申せ。」
「はっ。恐れながら勇者様たちは先の遠征でギルドにて冒険者登録をした際、ギルドの規定を無視し、実力や実績もないままS級冒険者への認定を迫りました。そのことで、冒険者たちやギルド関係者たちの間で、勇者様たちを横暴だと非難する声が上がり、広まりました。また、今回の遠征で立ち寄った村や町で、王命を盾に、農民、商人、貴族を問わず、国民から必要以上に金品や物資を勇者様たちは徴収なさいました。このことで、国民の多くが勇者様たちに反感を抱くことになりました。さらに、すでにアープ村のゴブリンの巣の討伐依頼が完了しているにも関わらず、遠征を行い、空振りに終わった挙句、行き帰りの道中でギャンブルや女遊びなどの豪遊三昧をしていたことが噂として国中に広がり、勇者様たちの信用はすでに地に落ちた状況です。」
軍務大臣は一拍置くと、説明を続けた。
「さらに、「黒の勇者」様と呼ばれる冒険者が現在、国中で活躍し、人気を集めていることも影響しております。冒険者登録をしたその日に確かな実力と実績を示し、世界最速でS級冒険者になったと聞いております。また、低報酬ながら高ランクの難しい依頼、通称ハズレ依頼を次々に達成し、「黒の勇者」及び「黒の勇者」率いるSランクパーティー「アウトサイダーズ」は冒険者たち、ギルド関係者、そして、国民から絶大な信頼と人気を集めています。さらに先日、「黒の勇者」なる冒険者がSランクモンスター、カトブレパスのソロ討伐という、かつてSS級冒険者の称号を獲得した歴代最強の勇者パーティーに匹敵する偉業を達成いたしました。このことで、さらに「黒の勇者」の人気が国内で高まりました。今や、「黒の勇者」と呼ばれる冒険者こそ、真の勇者ではないか、異世界から召喚された勇者様たちの方こそ偽勇者ではないか、そんな噂が国中を流れております。陛下に進言いたします。私は今一度勇者様たちの冒険者登録をやり直し、勇者様たちには確かな実力と実績を積んでいただき、勇者様たちの信頼回復に努めるべきが急務かと考えます。併せて、「黒の勇者」なる冒険者に、勇者様たちの教育係を依頼されることを提案いたします。国民から真の勇者と呼ばれるその者が勇者様たちの教育係を務めると聞けば、より国民たちの勇者様たちへの信頼回復につながると、私は考えます。陛下、どうかご一考をお願いいたします。」
軍務大臣は熱心に国王へと訴えた。
だが、国王はそんな大臣の訴えに耳を貸さなかった。
「ええい、黙れ、黙れ!「黒の勇者」だか何だか知らんが、光の女神リリア様に選ばれた勇者は、ここにいる勇者様たちだけだ。たかだかちょっと国民に人気のある冒険者風情が真の勇者と呼ばれるなどあってはならん。大体、そのような輩を頼らずとも、勇者様たちはS級冒険者として、いや、それ以上の実力を持っておる。「黒の勇者」なる者を勇者様たちの教育係に任命する必要はない。それに、勇者様たちは過酷な責務を担っておる。その勇者様たちに奉仕するのは国民の義務である。少し金品を徴収された程度で勇者様たちの悪評を流すなど、そのような者たちは非国民である。即刻国外に追放せよ。「黒の勇者」などに頼らずとも、すぐに国民は勇者様たちこそ真の勇者であることが分かるはずだ。全く、軍務大臣、この私にそのような戯言を進言するなど、お前には失望したぞ。」
国王から罵声を浴び、軍務大臣は肩を落とした。
「そうですか。これだけ申しても、ご理解いただけないと。分かりました、陛下。本日を持ちまして、私は軍務大臣の職務を退かせていただきます。今までお世話になりました。陛下、姫様、そして、勇者様たちに幸多からんことを願っております。私はこれにて失礼いたします。」
軍務大臣はそう言い残すと、国王たちの前から去って行った。
気まずい雰囲気が、国王や勇者たちを包んだ。
軍務大臣の進言はほとんど的確であった。
だがしかし、国王は自身のプライドの高さから、その進言を聞き入れることは無かった。
こうして、勇者たちの歓迎パレードは、無観客という最悪の形であっさりと終わった。
パレード終了後、国王は姫と勇者たちを集めた。
そして、最悪かつ衝撃の事実を明かした。
「勇者様たちよ、大変申し上げにくいのですが、実は七つの聖武器の一つ、聖剣のあった「光の迷宮」が二週間前、突如崩壊してしまったのです。捜索隊を組んで懸命に探しましたが、聖剣を発見することはできませんでした。対魔王への肝心の武器を紛失してしまったのです。皆様、本当に申し訳ない。聖剣に代わる対抗策については現在、国の総力を挙げて模索しております。歓迎パレードが失敗した上に、このような不祥事を起こしてしまい、誠に申し訳ございません。」
国王は勇者たちに深々と頭を下げた。
国王からの衝撃の発表に、勇者たちも姫も茫然自失となった。
「勇者」、「光の勇者」の覚醒に必要な聖武器が無くなったのである。
対魔族及び対魔王への対抗手段、切り札が失われたわけである。
「勇者」にして「光の勇者」、島津は慌てて訊ねた。
「国王陛下、本当に聖剣は失われたのですか?聖剣が無ければ、魔王を倒すのは困難なのでは?「勇者」として僕が覚醒するには聖剣が必要なんですよね?聖剣が無い場合、他に僕が「勇者」として覚醒する方法は本当にあるのですか?お答えください、国王陛下。」
「済まない。本当に済まない、シマヅ殿。必ず聖剣に代わる覚醒の方法は探し出してみせる。どうか、どうかそれまでお待ちください。」
「シマヅ様、私もシマヅ様のため、精一杯サポートいたします。聖剣に代わる「勇者」への覚醒方法もきっと見つかります。どうか元気をお出しください。」
国王や姫から言葉をかけられ、島津は国王に追及することを止めた。
重苦しい空気が、国王や姫、勇者たちを包んだ。
だが、聖剣の紛失を聞き、それを喜ぶ者たちも中にいた。
勇者たちを部屋に残し、国王とマリアンヌ姫は先に部屋を出た。
王城の廊下を歩きながら、マリアンヌ姫は一人呟いた。
「ちっ、役立たずが。聖剣のない「勇者」なんてただの剣士じゃない。こうなったら、他の勇者に乗り換えるとするかしら?「剣聖」あたりは色目を使えば、簡単に落ちそうね。全く、勇者のくせに本当に使えない連中ばかりだわ。いっそ、「黒の勇者」様とやらを雇ってみるのも案外ありかも?お父様は反対していたけど、使える人材なら使うべきだわ。さてと、とりあえず、私は私なりに動くとするわ。」
マリアンヌ姫の本性は狡猾で、恋人である島津をあっさり切り捨てようとするほどのドライな性格の持ち主であった。
国王、姫、勇者たち、彼らの順風満帆だった日々に暗い影が差し込み始めた。
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