第五話 【処刑サイド:国王たち】国王たち、ダンジョンの崩壊を知って焦る

 主人公、宮古野 丈が「光の迷宮」を攻略し、聖剣を破壊した翌日。

 勇者たちがアープ村のゴブリンの巣の討伐のため、遠征していた頃、インゴット国王アレクシア・ヴァン・インゴット13世は、王城内の一室で優雅に朝食を一人とっていた。

 国王は勇者たちが順調に成長し、その成果を遠征で発揮することを期待していた。

 遠征が終わった後は、勇者たちの歓迎パレードを盛大に執り行うつもりでもあり、パレードの開催を今か今かと待ちわびていた。

 国王も勇者たちと同じく浮かれまくっていた。

 だが、国王の下に一つの知らせが舞い込んだことで、国王の気分は一変して最悪な気分へと変わった。

 国王にとって、正にそれは凶報であった。

 国王が優雅に朝食をとっていると、ノックもせずに慌てた様子で、側近のブラン宰相が部屋に入ってきた。

 ブラン宰相は息を切らしながら、国王に向かって言った。

 「ゲホっ、ゲホっ、陛下、一大事でございます!?」

 「何だ、朝から騒々しい!?私が朝食をとっているときにノックもせずに部屋に入ってくるとは無礼な。一大事とは一体何だ?農民どもが一揆でも起こしたか?」

 「そのようなことではございません。落ち着いて聞いてください。「光の迷宮」が崩壊したとの知らせが先ほど入りました。」

 「な、何だと、ひ、「光の迷宮」が崩壊しただと!?そんな馬鹿な!?それは誠なのか?」

 「誠にございます、陛下。「光の迷宮」を見張らせていた国の騎士たちから定時連絡が無く、不審に思った交代の騎士たちが「光の迷宮」へと向かったところ、「光の迷宮」が崩壊した現場に居合わせたとのことです。崩壊の原因については目下調査中でありますが、昨日の朝に、「光の迷宮」の付近の町に住む住民が、「光の迷宮」付近より地響きを感じたとの証言をしております。局所的な地震が「光の迷宮」を襲い、そのために崩壊した可能性があると推察されます。」

 「「光の迷宮」が崩壊しただと!?それでは、聖剣は、聖剣は一体どうなる?あの聖剣は対魔族に特化した聖武器のはずだ。聖剣が無ければ、魔王の討伐は不可能と言われている。宰相、何としてでも聖剣を崩壊した「光の迷宮」から回収するのだ。金と人員は惜しまん。今すぐ捜索隊を編成し、聖剣を回収させよ。これは最優先事項である。分かったな。」

 「はっ、かしこまりました。すぐにそのように手配いたします。」

 宰相は慌てて国王の前から立ち去った。

 「光の迷宮」の崩壊に、聖剣が行方不明と聞き、国王の顔色は真っ青だ。

 朝食を口から吐き出したくなるような強い吐き気が、襲ってきた。

 国王はぐったりと椅子にもたれかかると、呟いた。

 「何故だ!?何故、「光の迷宮」が崩壊したのだ?地震程度で壊れる代物ではないはずだぞ?それに聖剣が行方知らずだと?もし、聖剣が失われたとなれば、それが世間に知れれば、我が国は世界中から顰蹙を買うことになる。私は聖剣を失った王として末代まで笑われることになる。何故だ、どうしてこうも悪いことが続くのだ?あの能無しの悪魔憑きが勇者召喚に紛れ込んで現れたりするなど、前代未聞のトラブルがこうも続くとは?頼む、聖剣よ、どうか無事見つかってくれ。」

 しかし、国王の願いが叶うことは無かった。

 なぜなら、主人公、宮古野 丈によって、すでに聖剣は跡形もなく、木っ端微塵に破壊されてしまっているからだ。

 勇者たちが遠征から戻って来る二週間の間、宰相主導の下、大規模な聖剣の捜索隊が組まれた。

 だが、「光の迷宮」はがれきの山と化し、がれきの撤去だけで困難を極めた。

 何とかがれきの山を撤去し、ダンジョンの中へと潜ろうとするが、ダンジョンの中もがれきだらけで、捜索はより困難を極めた。

 がれきを撤去しながら、何とかダンジョンの最深部まで辿り着いたものの、聖剣の姿を捜索隊は発見することができなかった。

 勇者たちが遠征から戻ってきたその日、国王の下には宰相より聖剣を発見できず、捜索を打ち切る旨が伝えられた。

 国王はあまりのショックに、思わず気絶しそうになった。

 だが、聖剣が失われたことをすぐに勇者たちに伝えて良いものか、迷った。

 国王は迷った末、歓迎パレードが終わった後、勇者たちに聖剣紛失の事実を伝え、何かしら聖剣に代わる対抗策を練ることを考えた。

 だが、勇者たちの歓迎パレードは最悪の結果で終わることになることを、国王は知る由も無かった。













  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る