第九話 【????サイド】謎の存在、妖しく微笑む

 主人公、宮古野 丈が、勇者たち、インゴット王国の国王たちによって処刑された直後、異世界アダマスのとある真っ暗な闇の広がる空間に、一人の存在がいた。

 真っ暗な闇の中、その存在は不気味に一人微笑んだ。

 『フフフ、光の女神リリアよ。このわらわが何もせず、黙って貴様の思い通りに事を運ばせると思ったら大間違いぞ。貴様の思い通りになどさせはせん。すでに貴様の計画は破綻しているのだ。』

 謎の存在は笑いながら続けた。

 『ククク、リリアよ。貴様が碌に封印の整備もせず、長年放置してくれたおかげで封印に綻びができて、妾が外部に干渉できるようになったことに気が付いておらんとは、相変わらず詰めが甘い。だが、そのおかげで、あの異世界からの来訪者に干渉することができた。リリアよ、貴様は気付いていないだろうが、あの異世界からの来訪者は、あの少年はその身にとんでもない力を宿している。歴代の勇者など比にもならんほどの圧倒的な得体のしれない力をだ。あの少年が召喚されたことを知った時、すぐに妾はそのことに気が付いた。あの少年にはちと悪いが、あの馬鹿な女の手垢が付くのは御免だった。だから、勇者のジョブとスキルが与えられるのを妨害させてもらった。大分力を消費したが、すべてはあの馬鹿女の、リリアの計画を破綻させるためだ。何、あの少年ならおそらくジョブやスキルが無くても全く問題ないだろう。悪いが、利用させてもらうぞ、少年。君ならきっと、勇者たちと光の女神リリアを倒し、封印されている妾や魔族たちを救ってくれる、そう期待している。ああっ、早く妾を迎えに来てくれ、少年。』

 謎の存在は高らかに笑い続ける。

 そう、主人公が勇者のジョブとスキルを光の女神リリアより与えられなかったのは、今も暗闇の中で笑い続ける、この謎の存在が、勇者の召喚に干渉したことが原因であった。

 しかし、主人公も誰も、その事実を知る者はいない。

 主人公と謎の存在が出会う日はやって来るのか、二人の出会いが異世界に何をもたらすのか、誰も分からない。

 









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