第七話 【処刑サイド:勇者たち】勇者たち、異世界生活に浮かれまくる、しかし、地獄への片道切符を切ったことに気が付かない

 主人公、宮古野 丈が、勇者たち、インゴット王国の国王たちによって処刑されてから一週間ほど経過した頃のこと。

 インゴット王国の王都の中央にそびえ立つ、巨大な黄金の城に設けられた訓練場で、勇者たちは、自分のジョブとスキルのレベルを上げるため、訓練をしていた。

 豪華な装飾の付いた鎧や武器、防具に身を包み、剣術や魔術、弓などの練習に、勇者たちは励んでいた。

 とりわけ豪華な装飾の付いた鎧や武器、防具に身を包んだ7人がいた。

 主人公を裏切り、処刑した通称「七色の勇者」と呼ばれる7人であった。

 他の勇者たち同様、己のジョブとスキルが上がり喜びを隠せないようである。

 「いやあー、最初は不安だったけど、僕もみんなも無事、レベルが上がったようで何よりだ。これなら、魔族討伐も大丈夫そうだ。」

 そう言ったのは、勇者筆頭であり、「勇者」にして「光の勇者」、クラス一のイケメンである島津 勇輝であった。


 ネーム:島津 勇輝


 ジョブ:勇者Lv.10


 スキル:破邪一閃Lv.10


 「ハハハ、全くその通りだぜ、勇輝!俺ら異世界に来てすぐにLv.10までレベルが上がるとか、マジでヤバくねえ!?ジョブもスキルもLv.1の頃と段違いだしよ。マジ最強だわ、俺ら。」

 そう言って浮かれるのは、「剣聖」にして「火の勇者」、不良でクラスの男子のNo.2である前田 敦であった。


 ネーム:前田 敦


 ジョブ:剣聖Lv.10


 スキル:豪火十字斬Lv.10


 「ハアー、もう訓練ダルいんですけど~。毎日魔法の練習とか飽きるし。そろそろモンスターでも狩りに行きたい気分なんですけど。正直退屈過ぎて死にそう、マジ暇。」

 不満を言ったのは、姫城 麗華。「大魔導士」にして「木の勇者」、ど派手なギャルで、クラスの女子たちのリーダー的存在である。


 ネーム:姫城 麗華


 ジョブ:大魔導士Lv.10


 スキル:無限詠唱Lv.10


 「ひ、姫城さん、そんなこと言わず、一緒に訓練がんばろ。私たちがもっと強くなれば、モンスターとも魔族ともすぐに戦えるようになるって、教官さんたちも言ってくれてるし。私もみんなをサポートできるよう、全力で頑張るから。」

 姫城にそう声をかけたのは、花繰 優美。「聖女」にして「土の勇者」、小柄で愛嬌があり、クラスメイトたちからマスコットキャラクター的存在として可愛がられている女子だ。


 ネーム:花繰 優美


 ジョブ:聖女Lv.10


 スキル:聖光結界Lv.10


 花繰の言葉を聞き、姫城は「へいへい、分かりました、優美ちん。」と言って、練習を再開したのだった。

 「グフフフ、我が輩の強さは最強なり!我が輩がこの異世界で天下を取る日は近いなり。いざ、行かん、冒険の旅へ。そして、待っているのだ、我が輩のロリっ子ハーレムたちよ。」

 己の気持ち悪い願望を公然と口にするのは、沖水 流太。「槍聖」にして「水の勇者」、ひょろっとした体格で、ゲームやラノベをこよなく愛する生粋のオタク。異世界召喚物の物語が大好きで、勇者たちの中で最も異世界に来たことを喜んでいる男だ。


 ネーム:沖水 流太


 ジョブ:槍聖Lv.10


 スキル:激流突貫Lv.10


 「まったく、みんな少し浮かれ過ぎじゃない!?まぁ、順調にレベルは上がっているし、今のところ何も問題は起こっていないけど、もう少し危機感を持つべきだわ。はぁ、早く魔王を倒して、元いた世界に帰りたいわ。」

 冷静に呟くのは、鷹尾 涼風。「弓聖」にして「風の勇者」、常に学年成績上位の才女でクールな性格の持ち主。クラスの学級委員長を務め、クラスの女子のNo.2でもある。


 ネーム:鷹尾 涼風


 ジョブ:弓聖Lv.10


 スキル:疾風必中Lv.10


 「そいやー!フウー、俺も大分レベルが上がったみたいだなぁ~。魔族もモンスターもすぐに俺のハンマーでぶっ潰してやるんだなぁ~。」

 ハンマーを振り回しながらそんなことを言うのは、山田 剛太郎。「槌聖」にして「雷の勇者」、柔道の実力者で、身長190cmの巨漢。前田と仲が良く、男子のNo.3。一度切れたら手が付けられないほど暴れ回る暴力的な一面を持っている。


 ネーム:山田 剛太郎


 ジョブ:槌聖Lv.10


 スキル:雷電爆砕Lv.10


 勇者たちが訓練場で訓練をしていると、一人の女性が勇者たちに声をかけた。

 「勇者様たち、訓練お疲れ様です。順調にジョブとスキルのレベルが上がっていると聞き、私も嬉しい限りです。」

 勇者たちに声をかけたのは、インゴット王国王女、マリアンヌ・フォン・インゴットであった。長い美しい金髪を縦ロールにし、金色のティアラ、金色のドレスに身を包んだ美少女だ。

 「マリアンヌ、公務で忙しいはずなのに応援に来てくれてありがとう。君の笑顔を見ていると訓練の疲れもすぐ吹っ飛ぶよ。」

 「まぁ、そう仰っていただけますと私も嬉しいです、シマヅ様。」

 異世界から来てまだ数日ほどしか経っていないが、島津とマリアンヌ姫の間は急接近していた。

 もはや恋人同士と言っても過言ではない。

 一見お似合いの美男美女だが、そんな二人の様子を見て、他の勇者たちは面白くなかった。

 特に、クラスメイトの女子たち、勇者の女子たちは彼らの仲睦まじい姿を見て、嫉妬し、舌打ちをする者もいる。

 マリアンヌ姫が勇者たちに向けて言った。

 「勇者様方に朗報です。皆様のジョブとスキルは現在驚異的なスピードで上がっております。後、一ヶ月もすれば、全員Lv.20にまで到達するでしょう。一ヶ月後、勇者様たちには冒険者ギルドにて冒険者登録をしていただきます。そして、実際にモンスターたちと戦う実践訓練に挑んでいただきます。勇者様たちでしたら、きっと問題なくモンスターたちと戦えるはずです。私も皆様の活躍を心から期待しております。それから、父が皆様方を歓迎するための歓迎パレードを、国を挙げて行うとも言っておりました。そちらも是非、期待してお待ちください。それでは、公務があるため、私はこれにて失礼いたします。皆様、引き続き、訓練、頑張ってくださいね。」

 そう言うと、マリアンヌ姫は勇者たちの前を立ち去った。

 姫の言葉を聞いて、勇者たちは興奮し、喜んだ。

 だが、勇者たちは知らなかった。

 姫が話した言葉が決して実現しないことを。

 最悪の未来が待ち受けていることを。

 自分たちが裏切り、能無しの悪魔憑きと呼んで処刑した主人公のために、彼らの異世界生活が地獄へと変わることに。

 勇者たちはすでに地獄への片道切符を切っていた。

 しかし、誰もその事実に気が付いていなかった。















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