第2話無能
はぁはぁ」
ヴェルテックと遭遇してから一週間が経過した。
その間はずっとレベリングに明け暮れていた。
『経験値を獲得しました』
『レベルが1上昇しました』
『レベルが20に到達しました』
『スキルの第一進化を開始します』
「よっしゃぁぁ!」
ついに、スキルの第一進化ができるようになった。
俺の周りにはいつの間にか白い物体が宙に舞っており、それが俺の体の中に入り込んでくる。
「これが進化……特には実感は湧かないと思ってたけど、確かに、強くなったような感覚がある」
『スキル操影が進化しました』
『剣ソードを獲得しました』
何だ、一回の進化で獲得できるような物なら、最初から教えてくれたら良かったのに」
じゃあ、あの黒い半円がゲットできるのは第二進化くらいかな?
お!詳細が出てる……は?
『剣ソード』
『魔力を使用し、影の剣を召喚する、現在のレベルでの召喚可能本数1/1』
1本しか出せないの!いや確かに、ヴェルテックみたいに一気に出せるとは思ってなかったけど……こんなに少ないとは思わなかった。
「マジか……しょうがない、今日はこの辺りで引き返そうかな」
俺がダンジョンの入口から外に出ると……一組のパーティーと遭遇”してしまった”
「チッ!おい何してんだよ影山!」
目の前にいたのは……金髪の派手な髪をして青年……徳光金次とくみつきんじスキル操光レイトライトを有するこの日本で10人もいないS級覚醒者の一人である。
「無能は大人しくその辺りの草仕事でもしておけばいいのに、何でまだ覚醒者やってるんだ?」
こいつのスキルは何もかもが俺のスキルとは正反対である。名前も、効果も。
影を操る俺と、光を操る金次……当然俺にも期待の眼差しを向けられこいつのパーティーからスカウトがやってきた、当然大型パーティーで断る理由も無く入ったが、そこでの冷遇ぶりは考えるだけで腸が煮えくり返りそうだ、そしてどこから漏れたのかは知らないが、今まで向けてくれた眼差しが落胆に変わるまではそう遅くなかった。
「こんな最弱ダンジョンまで何のようだよ!」
予想外の遭遇により、少し声が荒げてしまったがすぐ冷静になろうと努力するが……まだ時間がかかりそうだ。
「何でそんなに声を荒げる必要があるんだよ、別に何もおかしくないだろ、『覚醒者』が『ダンジョン』を攻略しに来る位」
実際何もおかしい事は何もない……ただ、俺がこいつの性格が嫌いなだけだ、強ければ何をしても良いと本気で思ってるようなカスだしかし今回はこいつの言っていることの方が正しい……簡単に言えば八つ当たりだ。
「でも、何でS級のお前がこんな報酬も美味しくないダンジョンにやってきたんだよ」
ダンジョンは難易度と比例して報酬が上がっていく。S級の金次を満足させる物がこのダンジョンにはあるとは思えないし。
「実は最近、このパーティーに新しい遠距離火力が入ってな、今はその子のレベリングに付き合ってる所だ」
後ろにいたのは白髪の髪を首まで伸ばし、黒を基調とした魔法使いのような服装を身に纏った女性だった。
「流石に誘拐はどうかと思うぞ」
せめてもの口車に乗っかってくれるとそれを文春に送りつける位はするが……こんな簡単に騙されるよじゃ、S級なんてやってないよな。
「はっ!勝手に言っとけ……しかし、こいつはお前と違ってちゃんと優秀だし、スキルを使わなくても、本職じゃない近距離戦もこなせる、”優秀”な人間だ」
口車には乗らなかったが、珍しいこいつがこんなに人を褒める事ができるとは思わなかった。俺が入ってからはチームの悪口、俺の悪口しか言っている所しか見てこなかったが、まだ人間の心が残っていたらしい。
「おい、挨拶しろ……一応このパーティーの先輩”だった”人間だからな」
斜め後ろに居た女性が金次の前を通り過ぎ、俺の前にやってきた。
「こんにちは真白沙織ましろさおりと申します」
「じゃあ、俺等はここで……精々足掻いておくんだな”無能”」
そうして、金次たちはダンジョンに潜っていった。
「考えても仕方ない……別のダンジョンでレベル上げするか」
帰る予定だったのを取り消し、近くに合った星2ダンジョンに向かって足を進めていった。
「ここが【朧月夜ダンジョン】……入ってみてわかったが【手軽ダンジョン】とは明らかに格が違う」
とりあえず、1層でレベリングをして、どれほど敵が強いか確認してから帰ろう。
「ふぅ……良し!」
そうしてダンジョンの中を進んでいった。
「はぁぁぁぁぁ!」
1層からゴブリンが出て来るとは思ってたけど……明らかに数が多いんだけど。
ダンジョンに存在する魔物達は時に”群れ”と呼ばれる集まりで行動することがある。しかし、【手軽ダンジョン】では、どんなに多くても、その群れが5匹ほどだったが、【朧月夜ダンジョン】では、1層から10匹の群れに遭遇した。
「剣」
影の剣を出しながら、自分で戦うがレベル差があってか、中々致命打にならない。
「はぁはぁ……このままだったら魔力が切れて剣が維持出来なくなるのが目に見えてる……どうすれば」
やはり、このダンジョンに挑むにはレベルが圧倒的に足りないのだろうか?
ダンジョンは星が一つ上がるたびに、難易度が10倍される……と聞いた事があったがまさか本当だったとは。
「このままでは逃げる以外に方法がなくなってしまう」
どうする、考えろ……というか、このままやったら負けて死ぬ、だったらここで逃げるのが正解ではないか?
きっと正解だと思う……けど無能や下手くそと罵られながら過ごす位なら、このままゴブリン達と戦ってでも一発逆転を決める方がいいに決まってる!……当然怖い、でも、今のままじゃ駄目なんだ、変わらないと”この世界”では搾り取られるだけだ!
「来いよゴブリン共……俺が相手してやるよぉぉぉ!」
『勇気ある行動を確認しました……称号【勇気あるもの】を確認しました』
『この称号を装備時、勇気ある行動をした時全ステータスが10%上昇します』
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