偽ギャルDays⑥
小百合の額に冷や汗が滲んでいた。 濃い目の化粧がすぐに浮いてしまうが、今はそれどころではなかった。
―――見られた・・・ッ!
「べ、別に・・・」
そう言って電源を消そうとするがスマートフォンを奪われてしまった。
「ちょっと!」
「ふぅん? ツウィッターのDMか」
ツウィッターでの名前は本名ではなく適当なためすぐにバレることはないかもしれない。 だがDMは過去のやり取りを遡ることができる。
それを見れば誰と誰のやり取りなのかはすぐに分かり、これまで隠そうとしてきたのが無意味になってしまう。 いや、それどころか今度は自分がいじめの標的にされるかもしれないのだ。
「止めて、見ないで!!」
「どうしてそんなに慌てるのさ?」
「それは・・・ッ」
小百合の行動を不信に思った茉耶は画面をスクロールしていく。
「・・・何これ」
「・・・」
絶望感に苛まれ俯いてしまう。 やり取りでは互いの本名が書かれていた。 先程まで打とうとしていた内容は消してあるためまだよかったが、茉耶が機嫌を悪くするのは明白だ。
「これ吹奈宛てだよね? そうだよね?」
「・・・」
「そっかー。 ウチらには気付かれないようにこうやって連絡を取り合っていたんだ。 賢いねー」
茉耶は不気味に笑っていた。
「まぁ、小百合が吹奈を庇おうとしていたのはウチらも分かっていたことだし。 今更どうこうするつもりはないよ」
そう言って茉耶は小百合のスマートフォンを持ち去ろうとする。
「ちょっと、返してよ!」
奪い返そうとするがヒョイと避けられてしまった。
「あとで授業が終わったら返してあげる」
茉耶がウインクをして立ち去ると同時に授業開始のチャイムが鳴ってしまった。 強引にでも奪い返したかったが、恐怖が勝り強気で歯向かうことができなかった。
―――吹奈は・・・?
何となく吹奈が気になり見てみると、どこかへ行っていたのか丁度教室へ戻ってきて今のやり取りは見ていないようだった。
―――・・・嫌な予感しかしない。
先生が来てしまったため出歩くこともできず不安を抱えながら授業を迎えた。
「小百合ー。 貸してくれてありがとー」
授業が終わると茉耶がスマートフォンを持ってやってきた。 正直、こんなに簡単に返してくれるとは思ってもみなかった。
何だかんだいっても数日、いや、数週間くらいは返ってこないことも覚悟していた。 なのに本当に言った通り小百合のスマートフォンは授業が終わり手元へ戻ってきた。
外から見る分には特に異常は見当たらない。
「え、何々? 何かあったの?」
それにつられ千尋も来る。 千尋は先程いなかったため何があったのか分からないようだ。
「ちょっと楽しいことがあってねー」
スマートフォンを小百合に返すと茉耶は千尋に先程の出来事を話し始めた。 その隙に急いでDMを確認する。
「なッ・・・!」
そこには見覚えのない文章が送られていた。 小百合が言うはずもない吹奈を非難する言葉がたくさん並んでいる。
―――・・・授業中にこっそり送っていたんだ。
全て既読のチェックがついているため吹奈は全てこの文章を見ている。 茉耶は小百合よりも前に席があるため何をしているのかまでは見えなかった。
いや、もし何かしていることが分かったとしても授業中であったし相手が茉耶であることもあり、何もできなかったとは思う。 しかし、このようなことをするとは想定していなかった。
「どう? 小百合の代わりにたくさん言ってやったよ」
そう言って笑う茉耶。 急いで撤回しようと吹奈のもとへ行こうとした。
「おっと、どこへ行くのかなぁー?」
千尋に止められる。 行く手を阻まれたためDMでメッセージを送ることにした。
“吹奈!! 今のはアタシが送ったんじゃない!!”
吹奈の席を見ると吹奈は俯いた状態でスマートフォンを眺めていた。 表情は見えない。 そして返信を知らせるポップアップがピコンとついた。
“・・・だよね。 小百合じゃないよね?”
“そうだよ!! 信じて!!”
“でもこのツウィッターのDMは二人だけの秘密のはずだったのに”
“それは・・・”
それからは返事が来ることはなかった。 小百合と茉耶よりも吹奈は更に後ろの席にいるためどちらが本当の操作をしているのか見えないのだ。
―――・・・この鍵アカDMはアタシと吹奈だけが知っている場所。
―――それなのにアタシ以外から送られてくるなんて普通は考えられないよね・・・。
息が詰まるような苦しさになっていると茉耶が言った。
「昼休み、期待しててね」
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