第15話 死纏飛竜
「グォオオオオ!!!」
腕を切断された
――我流剣技、
しかし
「……シン!」
俺は攻撃を即座に中断、縮地を使い一気にレティシアの元へと後退する。
次の瞬間、俺の元いた場所に炎の柱が突き立った。かなり距離があるというのに、ここまで熱気が伝わってくる。
凄まじい熱量だ。あのまま剣を振るっていたらと思うとゾッとする。
「……助かった。ありがとなレティシア」
「……ん」
上空へと視線を向けると、そこには新たな
炎の柱が消えた場所に目をやると、巨大な穴が空いていた。その奥にいた
……同じ魔物がいてもお構いなしか。
「……かなり面倒だな」
加えて三体がいるのは最初の
ここで
「……ならわたしの出番」
レティシアが呟くと一歩前に出た。そして、右手を上空へと向ける。
しかしそれも一瞬。すぐに立て直すと、一斉に魔術式を記述した。
次々と記述される無数の魔術式。だが、レティシアのほうが早かった。
右手を中心にして立体魔術式が組み上がっていく。それと共に、赤黒く可視化できるほど濃密な魔力がレティシアから溢れ出す。
そして一瞬にして魔術が完成した。
――闇属性攻撃魔術:
レティシアの手のひらに黒い穴が出現、空間を歪ませながらゆっくりと膨張していく。
そこにレティシアが魔術式を記述、すかさず転移魔術を発動した。
それは夜空に浮かぶ黒き月のようだった。
一瞬にして二体の
「……あっ。……ずれた」
一撃で二体を倒したのだ。結果は十分すぎるほど。だけどレティシアはそんな言葉を漏らした。
「ずれた?」
「……ん。……本当は三体の中心に転移させた。……あの個体。……転移阻害の魔術を使ってる」
レティシアが指差したのは生き残った個体、初めに
そしてその個体の魔術式はいまだ健在。赤熱するように輝くと巨大な炎の球が生み落とされた。
それは複数の魔術式を一つに接続して放たれる炎属性攻撃魔術。地形が変わるほどの威力を持つ事から禁術に指定されている魔術だ。
その名も
しかし禁術指定なんて物は人類の事情だ。魔物には関係ない。
生み落とされた無数の隕石が炎を纏い、落下してくる。
「あれはまずいな」
まともに食らえば消し炭だ。
しかしレティシアには転移魔術がある。退避すればいいだけだ。
「一旦退避するか? それとも転移阻害とやらで無理だったりする?」
「……転移阻害ならもう問題ない。……一度
レティシアがなにやらとんでもないことを口にした気がするが、今は突っ込んでいる時間はない。
隕石から放たれる凄まじい熱気が周囲の巨樹に引火し、炎を放っている。もう数秒の猶予もない。
「なら退避を――」
「……ううん。……
レティシアは再び手のひらを
「……うそ……だろ」
立体魔術式の多重展開。
そんな物は聞いたことも見たこともない。
俺が呆気に取られている間に魔術式は完成した。
赤黒く発光し、生まれ出るは黒を凝縮したような球体。それが隕石の数と同数。
――闇属性攻撃魔術:
その球体は隕石とは比べるべくもなく、小さな物だった。しかし内包する魔力量が途轍もない。
そしてレティシアは告げる。
「……潰れろ」
黒き球体は音すら置き去りにして隕石へと衝突した。次の瞬間、隕石の全ては黒き球体に呑み込まれレティシアの言葉通りに跡形もなく潰れた。
「……シン」
「ああ!」
俺はレティシアの呼び掛けに頷く。
そしてレティシアがさらに魔術式を記述。俺の視界が即座に切り替わった。
眼下に見えるは、
俺は遥か上空に転移していた。
そして
なぜなら竜種という魔物にとって空は己の領域。敵が自分より
故に気付けない。
ならば後は俺の役目だ。
……この一撃で墜とす!
俺は空中で、
――我流剣技、
俺の力に落下エネルギーを乗せた剣撃を
直後、凄まじい轟音が鳴り響き、
起き上がる気配は、無い。
「――次!」
レティシアがいるのは遥か彼方。俺の言葉が届くことはない。
しかしレティシアは俺の考えを汲み取り、最初の
目の前には片腕と片翼を切断され、全身に火傷を負った満身創痍の
もはや俺らの敵ではない。
「終わりだ」
俺は
炭化した竜鱗の間を抜けるようにして首を落とした。
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