絶体絶命。


 起きろ。

 

 

 ――何かが来る。

 


 感覚強化魔術のひとつである“危険察知”によって倍加された本能が、俺の薄れかけた意識を休む間もなく引き戻した。



――――――――――――――――


・お

・うおおおお

・おきた??

・あぶな

・生きとったんかワレ!

・寝たら死ぬぞ


――――――――――――――――


 そんなコメントの盛り上がりに比例するように、心臓が高く鼓動を打ち始める。


 嫌な予感。


 どれくらい意識が混濁していたかは分からないが、少なくともさっきの戦闘からまだ十五分と経っていないはずだ。


 無理な魔術発現による魔力流出は収まる兆候を見せているが、万全には程遠い。簡単な魔術――たとえば魔弾程度でも、うまく練れるかどうかといったところか。

 

 

 なのに……。


「嘘だろ……」


 立ち上がった俺は、そう呻いて前方に視線を向けた。

 

 さきほど俺が魔術によって燃やし尽くした木々の向こうから、が近づいてきている。


 それが何かは分からない。

 ……というか、分かりたくもない。



 駄目元でインベントリを開く。

 先の戦闘によるドロップアイテムは…………やはり、なにもない。



 逃走は不可能だろう。


 どこに逃げても、ろくに休む時間も取れずに捕まるだけだ。まだ接敵していないが、そんな確信があった。


「――――」


 俺は腰を落として、を待ち受ける。

 それから、


「みなさん、お願いがあります」


 ――視線を外さずに、俺はそう呼びかけた。


について何か知っていることがあれば、何でもいいので教えてください」






――――――――――――――――――――――――――――――――

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