馬車
自業自得だと思っている。
いつの間にかはっきりわけられた女子と男子の線引き。
男子は男子とだけつるむべし、女子と遊ぶのは恥ずかしいと、声高に言われたわけではないけれど、つるんでいたやつらの空気がその意見で充満していたのだ。
だから。
小学校の昼休みの校庭で、幼馴染に遊ぼうと呼びかけられた時。
幼馴染が女子のグループと一緒にいたのもいただけなかった。
俺は幼馴染を突き放した。
さっさと女子から、女子の集団から離れたかったのだ。
幼馴染はだが、ついてきた。諦めずに遊ぼうと言い続けてきたので、俺は走って逃げて、つるんでいたやつらと合流した。
幼馴染に悪いことをしたと罪悪感を持ったまま。
本当はもう遊ばない方がいいのだろうが、遊びたい気持ちと急に突き放した幼馴染に申し訳ない気持ちがあって、俺は幼馴染の家に行って、言った。
もう、みんなの前では話しかけてこないでくれって。
遊ぶならもう家の中にしようって。
外では遊べないって。
女子のおまえとは。
意味がわからない。
幼馴染は言葉でも態度でも表情でも、ひしひしと俺に訴えてきたが、それでも、わかったと頷いてくれた。
俺は安心した。
これで、つるんでいるやつらとも、幼馴染とも遊んでいけると思ったのだ。
甘かった。
悪いことをしているように、こっそり会い続ける時間がそう長く続くわけがなかったのだ。
何より、そんなこそこそ会い続けるのが嫌だったのだろうし、俺自身も嫌になっていって。
距離はどんどん遠くなっていって。
俺が男子だ女子だどーでもいいと思うようになった頃には、どう話しかけていいかわからなくなって。話しかけられなくて、勝手に寂しくなって、乙女ゲームに走って、熱中して。
で。今に至る。と。
「あーあ。前世の記憶がないにしても、最後に謝っとけばよかったかなあ」
ガタガタゴロゴロヒヒーン。
後進と一緒に幌馬車の荷台に乗って小さくなっていく町を見ながら、俺は呟いた。
(2024.1.19)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます