抹殺




「え?なに?なんだったの?」


 ぐふぐふぐふ。

 幼馴染はすぐに立ち去って行ったため、何の用だったのかさっぱりわからない。

 わけではない。

 きっと、自分が気に食わなかったのだろう。

 推し、ではなくて、婚約者と長時間いる自分が。

 自分が婚約者にモーションをかけているように見えたのだろう。

 そんなことはないと否定はできない。

 色恋ではないにしても、好意は持っている。いいところを見せたいし、見せてほしいと思っている。近づきたいとも思っているし、仲良くなりたいと思っている。

 しかし、幼馴染のことを考えれば、この気持ちに蓋をすべきなのだがっちりと。


(いかんいかん。推し、そっくりの侍と一緒に過ごせて有頂天になって我を忘れていた。いかんいかん)


 幼馴染と推しそっくりの婚約者の幸福を願っているのならば、自分がすべきは一つだ。




 聖男の抹殺である。











(2024.1.13)



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