幸福




 幼馴染の婚約者は、幼馴染の婚約者に決まった時から、俺と同じく幼馴染の護衛を担っている。

 護衛役としては俺の方が先輩なのだが、実力は俺と大差なく優秀。

 どういう原理かはさっぱりわからないが、悪霊が幼馴染に襲いかかるより前、姿を見せるまさにその直前に幼馴染の近くで発生した途端、こう、脳にビビビッと信号が走って知らせてくれるので、幼馴染に危険が及び前に、なんなら姿を見せた瞬間に即刻、悪霊を捕獲できるのだ。

 なんたって、優秀な俺と、優秀な幼馴染の婚約者がいるのだ。

 さささっと解決できるのね。

 まあそもそも、幼馴染には悪霊退散のお守りを渡していて常に身に着けてもらっているので、よっぽどのことがない限り、危険が及ぶことはないだろうけど。




「流石は、先達せんだつ。手際のよい任務達成ぶり。いつもながら勉強になります」


 俺と幼馴染の婚約者は名前で呼び合わず、幼馴染の婚約者は俺を先輩という意味の先達と呼んで、俺は幼馴染の婚約者を後輩という意味の後進こうしんと呼んでいる。


「いや~。後進も、いつもながら惚れ惚れする仕事っぷりだよ~」


 推しの外見にも雰囲気にも口調にも似ている後進から褒められて、いや、褒められなくてもこうやって対面しているだけで、ニヤニヤが止まらない。筋肉が仕事をしない。




「ご苦労様。下がっていいわ」


 和風の大きな邸の自室で休んでいた幼馴染に、悪霊を無事に捕獲できたと報告しに行ったのだが、幼馴染は婚約者である後進に対しても、ツンツンしている。

 もしかしたら、俺がいるからかもしれないけど。

 二人きりになったら、どうか、デレも見せてほしいと願わずにはいられない。

 お互いに。

 幼馴染も後進も幸福になってほしいのだ。











(2024.1.1)



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