悪霊




 乙女ゲームに登場するキャラクターは侍も含めて十人いた。

 主人公の聖女と、聖女の心を射止める老若男女九人だ。が。

 普通、九人全員のハッピーエンドが用意されているはずなのに、この乙女ゲームはどんなルートを選んでも、一人の男とのハッピーエンドしかないのだ。

 これはいわゆるクソゲームなのだろう。

 その聖女の心を射止めるたった一人の男は、聖なる男。

 聖男だ。






「ご苦労様。下がっていいわ」


 恐らく幼馴染に記憶はないのだ、と思う。

 まあ、記憶があったとしても、俺のことなんてすっかりさっぱり覚えてないだろうけど。

 ぐすん、かなしみ。


(まあ、それはそれとして)


 異世界転生前はこんなにツンツンしてなかったのに、なあ。

 ツレナイにもほどがある、ような。

 主、だからだろうか。

 護衛如きに、心を開く必要はないと、遮断しているのだろうか。

 それとも、全部を遮断しているのだろうか。




 幼馴染は家宝として、大事に大事に育てられてきた。

 一応は、その体裁は、整えられている。

 自然エネルギーとは別に、悪霊も動力源になるこの世界で、悪霊を呼び寄せる希少で貴重な存在なのだ。

 健康でいてもらわなければならない。

 動力源を集めてくれるのだから、と。











(2023.12.31)



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