推し




 幼馴染は小中高も一緒の学校に行っているのだが、頻繁に遊んでいたのは小学校まで。

 中学校になると、たびたび。

 高校になるとまったく遊ばなくなったばかりか、まったく話さなくなった。

 幼馴染は人気者グループに、俺は底辺グループに属するようになって、気軽に話しかけるような感じではなくなってしまったのだ。

 遥か遠い存在になってしまい一緒に行動できなくなってしまったその寂しさを埋めるべく、何かゲームでもしようとあちらこちらとネットを彷徨って、見つけた乙女ゲーム。

 俺はそこで、押しキャラに出会った。

 片眼に眼帯、つむじから短いしっぽ、あご無精ひげ、渋く幸薄そうな顔立ちに、ほんの少しガタイのいい体形の侍に。




 幼馴染の婚約者は、俺が推して、推して、推しまくる、その侍に、そっくりだったのだ。











(2023.12.31)



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