第8話

(贔屓、狴犴、睚眦の計三名)


贔屓「ああ、えた。あれだよ」

狴犴「あれが、アンタの……いえ……?」

贔屓「そうなるね」

狴犴「いや……絶対ぜったいいえいきにはおさまってないでしょ……」

睚眦「さなが城砦じょうさいごと有様ありさまよな。しかれでいのよ。贔屓ヒキよわい」

狴犴「あぁ……まぁ、そうか……」

贔屓「それ、本人ほんにんまえうかな? 普通ふつう本人ほんにんないところことでは……」

狴犴「あたし普通ふつうく? アンタだってその立場たちばにゃないんだよ?」

睚眦「然様さようわらわなんぢ尋常じんじょうすることなどい。なんぢわらわするのだ」

贔屓「然様さよう御座ございますか……どこまでも肩身かたみせまことで……」

睚眦「……む」

贔屓「あぁ、問題もんだい御座ございません。そのほう迅速じんそくことはこぶがゆえこと御座ございます」

狴犴「え、なに唐突とうとつなんはなし……?」

睚眦「れよ」

狴犴「あれ……? あ、だれる……」

贔屓「あれ、ぼくいもうと

狴犴「へぇ〜、アンタいもうとなんたんだ。てっきり一人ひとりかと思ってた」

贔屓「なんひどくない?」

狴犴「いや、けてるようえて、案外あんがいしっかりしてるもんだからさ。まぁでも、それは兄貴あにきでも一緒いっしょか……」

贔屓「そうともえないよ。ぼくより彼女かのじょほう余程よほどしっかりしている……ぼく彼女かのじょに教えられたがわ

狴犴「あ、そうなの?」

贔屓「うん」

睚眦「……で、如何いかがする」

贔屓「あぁ、さきもうげましたとおり、問題もんだい御座ございませぬ」

狴犴「ん〜······あ、そういうこと、って……!」

贔屓「……いったいな……相変あいかわらず容赦ようしゃいなぁ」

睚眦「彼奴きゃつなんぢいもうととは、かんががたいがな」

狴犴「ちょっと! 大丈夫だいじょうぶなのそれ!」

贔屓「大丈夫だいじょうぶ大丈夫だいじょうぶぼく頑丈がんじょうだからね。手当てあてをすればなおるさ」

狴犴「頑丈がんじょうって……はらのドなかさって、頑丈がんじょうだからではなしがどこにあんのさ……」

贔屓「まぁ本当ほんとうは、たんうごけなかっただけなんだけどさ。さて、なにいてあるのかな」

睚眦「のやぶみ、平生へいぜい斯様かようとどくのか?」

贔屓「いいえ。斯様かようときは、何等なんらかで機嫌きげんそこねておりますね。平生へいぜいであればかたわらにさります」

睚眦「ふむ? たりとやつか」

贔屓「それはいかと。彼女かのじょ滅多めったことでは機嫌きげんかたむことはありません。こちらとしても心当こころあたりは……あぁ……」

狴犴「……どうしたのさ、眉間みけんなんえて。そのかみなにいてあったの」

贔屓「え〜·····いや、かなくていよ……あといやでもことになりそうだから」

睚眦「ふむ?」

狴犴「いやでもって……面倒事めんどうごと予感よかんがするんだけど」

贔屓「それについては……んでもうわけいとしか……」

狴犴「なんいやだなぁ……」

睚眦「此処迄ここまでしまったのだ。かったふねぞ。かえってたのしめばいのよ」

狴犴「はぁ……わかったよまったく……もうどんなものてもおどろきゃしないよ」

贔屓「そうってもらえると、うれしいかな……」

狴犴「もうれもちかいし……日帰ひがえりは出来できそうにいなぁ……」

睚眦「あきらめよ。れが肝要かんようときろうよ」

贔屓「色々いろいろつかれたし、えずいたら部屋へやたい……」

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