第2話

(狴犴、男(贔屓)の計二名)


狴犴「一つ、気になる事があるんだけどさ」

男「何だい?」

狴犴「このお願い、好待遇過ぎない?」

男「と云うと?」

狴犴「見返りを求めない所が怪し過ぎる。この街じゃ、誰でも何かする時は見返りを要求するもんだよ。この街じゃそれが普通だし、それが無かったら却って心配される。その不安感から殺されたお人好しも居るし」

男「おぉう、そりゃ恐い」

狴犴「この街に来たって事は、オニーサンも、その事は知ってる筈だよね」

男「うん。知ってるよ」

狴犴「タダより高い物は無いって言葉は?」

男「知ってるね」

狴犴「あたしが何を云いたいか、解ってるでしょ?」

男「うん。どうせこれからは一応の仲間として関わるんだったら、恩を売って損は無いだろうなってね」

狴犴「あっ、それ……」

男「そう。オジサン、一応八龍の一人なんだよね。それも、最近死んでいった奴の片方の息子なんだ」

狴犴「へ? って事は……」

贔屓「そう。オジサンは新しく贔屓として据えられた、名目上の、代理の、仮置きの贔屓って事」

狴犴「そうだったんだ……」

贔屓「そうなんだよ。重きを負う事を好むとか、どこのマゾヒストだよって思うけど、これをやらないと勘当だって云われて、仕方無くねぇ……」

狴犴「へぇ……贔屓の方も大変だね。そっかぁ……考えてみれば、そういう事も在り得るのか……」

贔屓「だからオジサンは、こんな土地勘も何も無い所に来なきゃいけなくなっちゃったんだよねぇ……」

狴犴「だとすると、あたしとオニーサンは同じ様な境遇な訳だ」

贔屓「そうなるね。一応、これから宜しく」

狴犴「うん。あたしオニーサンが気に入った。こっちこそ宜しく」

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