第18話

 ルレロとヘルマンの2人。 ダンジョン『輝く回廊』の道順を思い出す。


「いいか、ルレロ。コイツは確認だ。序盤、中盤は普通のダンジョンだった。だが、終盤の回廊……」


「魔物の群れに追われながら、ダンジョンボスを撃破した。 そのまま、群れに追いつかれないように走り抜けて出口にたどり着いた」


「ところがどっこい、その出口は、ダンジョンの入り口になってた。これはどういうことだ?」


 2人の認識が正しいのならば、途中で


『入口から進んだ通路』


『出口に到着した通路』


 この2つが交差してなければならない。


「単純に考えれば」とルレロは考える。


「入る時は気づかない隠し通路があって、出る時は走らされるから気づかない……という事か?」


「本当にそうか? あの『輝く回廊』から出口まで扉はなかったはずだぜ。それに、どれだけ巧妙に通路を隠したって、入り口付近に何か痕跡は残っているはずだぜ」


「……」と2人は、再びダンジョンに足を踏み入れた。


「気をつけよ。本当に隠し通路があるとしたら、あの魔物の群れもまだ残っているはずだぞ」


 ヘルマンの言葉にルレロは頷いた。


 2人は入り口付近の壁を慎重に確認して回ったが……


「何もなかったな。それじゃ他に考えられることは?」


 ヘルマンに言われたルレロは――――


「ダンジョン内が魔力で空間が歪んでいる。気づかぬ間に転送魔法のような物が仕込まれている可能性がある」  


 魔法使いの観点から、考えた。


「ずいぶんと勉強してるなぁ。見直したぞ、将来は魔法博士か?」


「……グリファン卿から支援をされているんだ。勉強もするさ」


 ・・・


 ・・・・・・


 ・・・・・・・・


 ルレロたちはダンジョン入口に戻り、休息を取ることにした。


 元々、彼の目的はダンジョン攻略ではない。 存在が不確かな魔剣を手に入れるため……それが冒険者ギルドから依頼内容。


 これから、何度もダンジョン内部を調査しなければならないのだ。 


「いいか? 休息を取るなら壁を背にして、正面に焚火だ」


 慣れた手つきでヘルマンは火を起こした。


「これなら、魔物が襲ってきても攻撃は左右からしかできないだろう。十分に休息が取れたら、またダンジョン探索が始めるからな」


 それから両目を閉じて横になる。だからと言って、ヘルマンは寝ているわけではない。


 意図的に意識レベルを落とし、睡眠状態に近い状態で体を休めているそうだ。


 ルレロも、その真似をしながら横になる。


 その間も、いろんな事が頭に過ぎっていく。


 ダンジョンボスを倒して、さらに奥に進むと入口に戻される仕掛け……なんのために?


 あると言われている魔剣の隠し場所と関係しているのか?


「そもそも、ダンジョンボスから手に入れた剣。あれは――――」


 そう言えば、ダンジョンボスから手に入れた装備品を調べていなかった事を思い出した。


(もしかしたら、あの剣こそが探し求める魔剣ではないのか?)


 すぐに思い立ったルレロは荷物を漁り、剣を―――― 『スターソード』を取り出した。


「スターソード……しかし、ダサい名前をしているなぁ」とそんな感想をぼやきながら鑑定を始める。


 鑑定……と言っても、情報を読み取る魔眼を使用するだけだ。


「う~ん(星属性なんて初めて見る魔法属性だ。これも、魔剣と言ってしまえば魔剣なのだろうが……)」


「止めとけ」とヘルマンが声をかけた。


「ソイツは、求めてる魔剣じゃねぇ。今までだって、あのダンジョンボスに挑んで勝った奴はいたそうだ。だが、依頼主さまが言うには別の魔剣――――見つかれば、はっきりとソレってわかる品物だそうだ」


「なんだそれは? 他には? どういう魔剣で、何のために探しているとか、情報はないのか?」


「ない! だから、存在すら怪しい魔剣の調査って依頼なんだよ」


「う~ん」とルレロは考え込む。 魔力によって空間が歪んでいるダンジョン。


 ならば、通常の方法では入れない部屋が隠されていてもおかしくはない。


(だが、魔法によって巧妙に隠された部屋があったとしても、なんの痕跡も残っていないはずもない。問題は、どう隠しているか……)


 そう試行している間にルレロは深い眠りについていた。


 激しい疲労もあったのだろう。泥のような眠りであった。


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