第11話 お金はなく、あるのは納期だけ

「金がない!? どういうことだ!?」


 馬車の中でエリス姫達から衝撃の事実を聞かされた俺は、思わず声をあげてしまった。


「現在、国庫には余分なお金は一切ございません」


「この国の窮乏は知っている。しかし、改革のための費用すら、全くないとは・・・」


「なにしろ我が国は絶賛衰退中ですから」


 いくら衰退しているとはいえ、金が全くない状態で、改革など不可能だ。


「・・・しくじったな。2か月という期限を設定すべきではなかったか」


 金がないなら、溜まるまで待つしかない。となると、改革の期限を設定したのは失敗だったか。今更期限を撤回すれば、信用を失ってしまうだろう。


「いえ、セイオウ様が設定された2か月という期限は正しいものです。後2か月で、我が国は破算しますから」


「何だと!?」


「借金の返済が延滞しており、再来月の支払いがなされなかった場合、我が国は破算。国の女たちは奴隷として売られることになります」


 平然と答えるエリス姫。


 なんてことだ。


 自己破産のシステムがない上に、奴隷制があるのか。払えなければ文字通り体で払えという事か。


「もちろん、そうならないように私が姫の名をもって国民全員から国籍を奪い、責はわたくし一人で負うつもりです」


「姫様だけに背負わせはしません。私もご一緒します」


 マイヤ事務官が自分も、運命を共にする決意を述べる。それ自体は立派な覚悟だが、何の役にもたたないものだった。


「ふう、改革を行う資金もなく、あるのは期限だけか・・・」


 完全に崩壊寸前のブラック企業そのものだ。


「何しろ我が国は絶賛衰退中ですから」


 平然と述べるエリス姫。


 本当に崖っぷちだった様だ。


「国債・・・金を借りることはできないのか?」


「できません、我が国の経済的信頼はゼロですので」


「むう・・・」


 堂々と言う事ではないだろう。


「何しろ我が国は絶賛衰退中ですから」


「それはもういい」


 国の信用がゼロなら、俺が金を作るしかない。


 元の世界の持ち物の中で、何か売れそうなものはないだろうか。


 必死でポケットをまさぐる。身に持っているのは時計とスマホと財布、ソーラー付きのモバイルバッテリーと、あとワイヤレスイヤホンと、チョコレートだけだった。

 

「とにかく資金を確保しないと、どうしようもない。姫、この国に市場はあるか?」


「はい。ご案内します。もう閉まる時間ですので、急ぎましょう」



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