第五章
第42話 新たな始まり
通いなれた駅までの道のり。
そこから電車に乗り東武練馬で降りた俺は、気怠い足取りで学校へと向かう。
六月八日、火曜日。一か月後に行われる体育祭、その組み分けが発表されるのだ。
横断歩道を渡りながら、友達と楽しそうに話す学生の姿を見て思わずため息が漏れる。
何故か……それは俺の通う友橋高校の体育祭がクラス単位ではなく、全学年を含めた赤組と白組に分けられて行われるからだ。
しかもクラス毎に赤白振り分けられるわけじゃなくて、クラス内でも二分割されるのがいやらしいところだ。
なにしろこういうイベントでありがちなクラスで一致団結が出来ないからな。とは言え俺には関係のない話だが。
とりあえず赤白の体育祭なんて小学生ぶりで何が起きるかわからないのが怖いところだけど、端っこのほうで無難にやり過ごすことに全力を注ごう。
とか考えている内に教室に辿り着くと、既に中は組み分けの話題で賑わっていた。
「赤組と白組どっちがいい?」
「断然赤っしょ。情熱に燃えるぜ俺は!」
「いやいや白組でしょ。なんか白の方がカッコイイし」
「なら次は誰と一緒になりたい?」
「俺は断然──」
「王道だな。オレは──」
などと他愛のない雑談を耳にしながら、俺は自分の席へと腰を下ろすと、
「丸口さんおはようございます!」
元気いっぱいに挨拶してきたのは三日月の髪飾りが特徴の女子、
元気なのと人の良さが取り柄のおバカちゃんだ。
「おはよう。どうした?」
「実はですね青援部のみんなで同じ組になれるようにお守りを作ってきたんです!」
茅野は得意げにそう言うと、懐からポチ袋くらいのお守りと手書きされた折り紙を差し出してきた。
「なんだこれ……中に何か入ってるのか?」
「ふっふっふ、なんと私の髪の毛が入ってます!」
……は?
「えっと聞き間違いか、今髪の毛って聞こえたけど入ってないよな?」
「入ってますよ、私の髪の毛が。いのりちゃんに教えてもらったんです! 女の子の髪の毛には特別な力が宿るって!」
うん、聞き間違いじゃなかった。マジふざけんなよ麻倉お前だけは許さん。
「ありがとう、嬉しいんだけど返すよ」
「いえいえ遠慮なさらずに、丸口さんのは特別に五本入れておきましたから! それじゃまた後で!」
「えっ、おい、待って茅野さん」
俺の制止も聞かずに自分の席へ駆け戻っていく茅野。
右手に残る手作りのお守り(髪の毛入り)。
頭を抱えながらため息をついていると、ガラガラと音を立てて担任の先生が入ってくる。
「はいはーい皆席についてー、出席取った後お待ちかねの組み分け発表だよ!」
いつも通りテンション高めの先生を尻目に、とりあえず後で絶対に返すことを決めて俺はそっとポケットにお守りをしまった。
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みなさんお久しぶりです、そしてお待たせしました。
今日からモブから始まる高校生活の連載を再開したいと思います。
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