第23話 中間試験

 そして、時は廻り中間試験当日。

 高校に入学してから初めてのテスト(小テストを除いた)ということもあり、教室内は静かな緊張をはらんだ空気に包まれている。


 この一週間、様々なことが無かった。日中は授業、放課後は図書館で吉野と共に茅野に勉強を教え、家に帰れば姉さんに絡まれての繰り返し。

 特筆すべき事を上げるなら、たまに麻倉が図書館までついてくる事と、たまに茅野が上の空になる事くらいだろう。


 そんななんてことない日々の中で、手ごたえががあったかと言われれば微妙なところ。こちらとしても勉強を誰かに教える事が初めてなのもあり、これでいいのか? はたまたダメなのか? の判断がつかない。

 強いて言えば、自分の復習にはなった。おかげで今回の中間テスト、俺は自信がある。

 まあ、重要なのは俺の点数じゃなくて茅野の点数なんだけど。


 「おはようございます、丸口さん」


 そう声を掛けてきた茅野はなんだか眠げだ。


 「おはよう茅野さん。徹夜でもしたの?」

 「あはは、少し不安で。私にとって大事なテストなので精一杯頑張りたいんです!」


 頑張るのは大切だけど、それでテストに支障が出たら元も子もないんだけど大丈夫か? 一応、クマはないみたいだけど。


 「ちなみにどれくらい寝たのか聞いても?」

 「えっと……昨日は十一時に寝て朝は七時に起きました」


 八時間バッチリ寝てるな。徹夜とはなんだったのか。


 「あの……丸口さん。私が赤点回避したら、お、お姉さんに会わせてほしいです」


 少し緊張したように辿々しく口にする茅野。

 俺の許可なんて取らずに勝手に会いに行けばいいのに。学校なら大人しいし。


 「姉さんに会うくら俺を通さなくてもいいよ。同じ学校の先輩なんだし」

 「いえ、私には何の接点もないのでいきなりは緊張するというか、丸口さんがいてくれると助かります」


 一理あるか。確かに何の関わりもない一年が来れば、例え同性だとしても怪しまれるか。


 「なら、麻倉さんか部長にでも頼めばいいんじゃないか? 二人とも姉さんのこと知ってるみたいだしさ」


 そうだ、それがいい。俺が茅野を引き連れて姉さんに会わせるとか、後が怖いし。


 「挨拶だけならそれでもいいんですけど、少し確認したいこともあるので丸口さんがいなきゃ意味がないんです」


 め、面倒くさい。どうして諦めてくれないんだ。もう、多少強引にでも断るか?

 いや、待て。その結果テストに悪影響が出る可能性は十分あるのではないか?

 だとすれば、ここは受け入れるのが得策だ。ご褒美があれば、よりやる気も出るというものだろう。


 「……分かったよ。茅野さんが赤点を回避したら姉さんに紹介する」

 「はい、ありがとうございます!」


 ぺこりと頭を下げると、茅野は鼻歌まじりにスキップしながら自分の席へと戻っていった。テスト大丈夫か?

 それから程なくして予鈴が鳴り、先生が教室に入ってくる。出来る限りの事はした、後は茅野を信じるだけだ。

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