第9話写真撮影
「着いたー!」
池袋駅からサニーシティへ移動した俺たちはエレベーターを利用してようやく目的地であるサニー水族館に行き着いた。
まだエントランスなのに麻倉はテンション高く目を輝かせている。
「ねぇねぇプラネタリウムもあるよ、ここ」
エレベーターから少し進んだ先にある看板を指差しながらはしゃぐ麻倉。
「行かないからな。今日の目的は水族館なんだから」
「だよね。じゃ、じゃあ今度さ行こうよ」
「そうだな、みんなで行くか」
爽やかな笑顔で答える一条に項垂れる麻倉。
今のは俺でも分かる。鈍感は罪だな。手助けしてやりたいが一条の言うみんなに俺が含まれてる可能性はないため口出しするのは避けるとしよう。
「いきますよー。はい、チーズ」
声に合わせシャッターを切る音が耳に入る。
見ればペンギンのお腹部分に今日の日付、その左横に『SUNNY AQUARIUM』と書かれた看板を前にして、五人家族が写真撮影をしていた。
「せっかくだし俺たちも撮ってもらおうぜ」
「賛成! 私ちょっと頼んでくる」
言うが早いか麻倉はスタッフさんに近づいて行き話しかけている。
写真なんて撮りたくないんだけどな。
「吉野は反対しないのか?」
「今更したって意味ないだろ。ボクはもう諦めた」
吉野なら最後まで喰らいつくと思ってたんだけどな。仕方ない俺も諦めるか。
結果、流されるまま看板後ろに並び立つ。
「ポニーテールのお嬢さん、もう少し彼氏さんの傍に寄ってくださーい」
「最悪だ。なぜ吉野が俺の彼女に見えるんだ」
「うるさいぞ、ボクだって不本意だ」
スタッフさんの指示に従いこちらに詰めてくる吉野。トンっと腕へ何かが当たり目を向ける。
吉野の肩だ。吉野の肩が俺の腕に当たっている。
コイツ距離感バグってんのか。近すぎるわ。
「いいですね。それじゃあ撮りますよー。いちたすいちはー?」
「「にー」」「「……」」
そんな感じで俺たちの写真撮影は終わりを告げた。
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