第一章
第1話 いつの間にかフラグが立っていたようだ
入学式から、はや一ヶ月が経ったGW終わりの木曜日。
入学式当日こそフィクションさながらのイベントを目撃したが、その後の今日に至るまでの一ヶ月間は、俺の夢見た理想通りの学校生活を送れていた。
休み明け特有の気怠さに襲われ授業も身に入らない地獄の一日も、先ほど終わりを告げた。
そう、待ちに待った放課後の到来だ。正直、寄り道して帰りたい気持ちはあるけど、かなり体が怠くやる気も起きないし、真っ直ぐ家に帰ろう。
よしっと気持ちを入れ直し机の横に掛けてある鞄を手に取った時だった。
「ちょっといいか、
顔を上げると俺とは縁のなさそうな女子が眠たげな目でこちらを見つめていた。
「吉野さん? えっと何か用?」
水色の髪を赤色のシュシュで結びおさげにした幼い容姿のクラスメイト、
「部活に行くぞ」
「? ご自由にどうぞ」
何言ってるんだ? 部活に行くなら勝手に行けばいいのに何故に俺へ報告しに来たのか。てか、部活とか入ってたんだ吉野さん。
「何か勘違いしてるだろ。もちろんボクも行くが彼方も行くんだ」
「え? なんで? 俺部活とか入ってないけど」
「やっぱり忘れてたのか……
「はい?」
あぁーいや、ちょっと待てよ。そういや入学直後の仮入部期間に興味本位で見学しに行った青春援助部で入部届に無理やり名前を書かされた気がする。
仮入部期間だったし、てっきり無効になってるもんだと思ってた。
「あのー退部したいんだけど」
「無理だ。ボクに言ってもどうしようもない」
「まじか」
「とりあえず部室に行くぞ。話はそれからだ」
吉野は何の恥じらいもなく俺の手を取ると歩き出す。
「部室に行くのはいいから手を、手を離してくれ」
「却下だ。目を離した隙に逃げるかもしれないからな」
「逃げないから離してくれ。視線が──」
「視線ん~? 気にするな減るもんじゃない」
減るんだよ、主に俺の平穏な学園生活が。自分が可愛いことをもう少し自覚してほしい。
妬みと悪意に満ちた視線に晒されながら吉野に手を引かれ俺は教室を後にした。
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