3-10 お兄さんのオチンチンの味
「お兄さん、無事ですかっ!?」
生徒会室の扉を開け放ち、俺のピンチに駆けつけてくれたのはリサさんだったわけだが……
「エロサキュバスッッッッ――!?」
コスプレ姿がどちゃシコ万歳だった。
ボディは黒の小悪魔風超ミニスカワンピース。背中には水色の悪魔の羽。頭のツノと尻尾に加え、首元のチョーカーにアームカバー、黒タイツとディテールにもこだわっている。
ほんのりと赤く染まったほっぺにはハロウィンのフェイスペイントまで施されており、完璧なまでの『ロリロリセクシーサキュバス』が爆誕している。
これが高校の文化祭ってマジ?
「良かったぁ。お兄さん、元気そうで……。って、あれ? マリアちゃんも一緒……? あっ! もしかして、お兄さんのこと守ってくれてたの!」
「………………そう」
ん?
「やっぱりそうなんだ!」
「体を張って会長から守ってた……。偉い?」
「さっすが、マリアちゃん! 頼りになるうー!」
「頑張った……」
「……」
うん。マリアさんが俺を助けようとしてくれてたのは事実だ。単に『お腹が空いてチカラが出ないよ〜』状態で俺に寄りかかってただけ、なんて野暮なことは言うまい。
俺の無事を確認したリサさんの怒りの矛先は部屋の奥で青ざめる金髪オールバックへと向けられる。
「ちよっと、どういうことですか! 山田先輩! お兄さんにこんなことするなんてヒドいじゃないですか!」
「リ、リサくんっ、誤解だっ!? その男に危害を加えるつもりはなかったし、すべてキミのためを思って……。というか、どうしてその男がここにいると分かったんだ!?」
「――私が教えたんです」
リサさんに続いて颯爽と部屋へ入って来たのは知的なメガネを掛けた女生徒だった。
黒髪ストレートの髪の毛を頭の後ろでひとつに結んでおり、見るからに優等生。シャープな顔に凛とした佇まいは、まさに『インテリ美人なお姉さん』って感じだ。
「なっ!?
「私の
インテリ美人は得意げにメガネの位置を正す。鷹上――ということは、この子が『副会長』か。ミニスカのスーツ姿とかめっちゃ似合いそうなのに普通に制服姿だ。ちょっと残念。
「なにか?」
「あ、いえ……」
鷹上さんと目が合って慌てて視線を逸らす。頭の中でエッチなコスプレをさせてたなんて言えない。
「噂通りの方のようですね?」
噂とは?
インテリ美人な鷹上さんは呆れたように溜め息をついたあと、手提げ袋からビニール袋とハサミを取り出す。ビニール袋にはひと口サイズのドーナツが入っている。
「四葉さん、おやつです」
「わぁ、サーちゃん、ありがとう」
鷹上さんはマリアさんにドーナツの袋を手渡すと、俺の四肢に巻きついていたガムテープをハサミで瞬く間に断ち切ってしまう。
「えっ……?」
あまりにも慣れたハサミ使いに若干恐怖すら覚える。
「ど……どうも……」
「いえ、お気になさらず。これも
鷹上さんは真面目顔でメガネの位置を正した。
「へ、へぇ……」
なかなか個性的な子だ。
まあ、とにかく助かった。ドーナツを食べるのに夢中なマリアさんのスタイル抜群なボディを持ち上げて、一緒に立ち上がる。
「よっこらせ」
「もぐもぐ……」
たわわギャルはどんな時でもマイペースだ。
「お兄さん? 痛いところはありませんか?」
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ? ここへ連れて来られて軽く話をしただけなので」
「よかったぁ……」
「――リサくん!? お願いだから目を覚ましてくれ!?」
俺たちのやり取りを黙って見ていた金髪オールバックが懇願してくる。リサさんは軽く溜め息をついてから彼と向き合う。
「前にもお伝えしましたよね? みなさんの好意にはお応できないので、そのおかしな団体は解散してほしいって」
「わ、我々はキミの幸せを願って……」
「私は今とても幸せです。ミサキとアヤネさんと一緒に、ここにいるお兄さん……じゃなくて、名雲さんとお付き合いができて」
「そんな浮気男と一緒にいてもキミは幸せになどなれない!?」
「私の幸せを山田先輩が勝手に決めないでください。そっ、それにっ……」
リサさんは頬を染めながら俺のシャツの裾をギュッと掴んで大声で叫ぶ。
「わっ、私はもう!! お兄さんの『オチンチンの味』も知ってるんですからねえー!!」
「「「かはっ――!?」」」
初心っ子妹ギャルの思いもよらないカミングアウトに、自称お兄ちゃん達は揃って口をあんぐりさせるのだった。
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