3-8 ヘソ出しミニスカポリス、現る

 スポットライトに照らされた社長椅子がくるりと回転し姿を現したのは、生徒会長と思しき金髪オールバックの男子生徒だった。指パッチンのポーズでキメ顔決めてて、なんか鼻に触るが、わりとイケメンだ。


「フッ、決まったな……。あ、もういいぞ、。電気を点けてくれ」


「わかった」


 おや? 今の透明感のある優しい声って、最近知り合ったの声じゃ……?


 電気が点くと部屋の全体像が見えてきた。広さは一般的な教室の半分といったところ。


 部屋の中央に長机が縦に2つ並んでいて、その奥に独立した大きめの机。あとはホワイトボードやら書類棚が置かれているだけのオーソドックスな生徒会室だ。


「よく来たな、名雲優希。歓迎するぞ」


 金髪オールバックがカーテンと窓を開け放ちながら話しかけてくる。


「歓迎されているようには見えないぞ。というか、何で俺の名前を……いや、それよりも"さん"をつけろ"さん"を」


「バカを言うな。を敬う気など……ない!」


 振り返った金髪オールバックが思いきり睨んでくる。俺のことを随分とご存知なようだ。


 俺をここへ連れて来た男子生徒たちも冷ややかな目を向けてくる。どうやらこの空間にいる全員が敵らしい。あ、いや、ひとりだけ……


 俺を取り囲む男子生徒の向こう側へ声をかける。


「そこにいるのは、もしかしてですか?」


 俺の呼びかけに応えるように男子生徒の横から美人が顔を出す。


「どうして私の名前を知ってるの?」


 やっぱりそうだ。たわわギャルのマリアさんがどうしてこんな場所にいるのかは不明だけど。


「ほら、俺ですよ。名雲ゆ――」


「わあ、チャーハンの人だ」


「いや、チャーハンの人じゃなくて、名雲ゆ……って、エロポリスッッッ――!?」


 男子生徒の向こうから姿を現したマリアさんの超絶シコいコスプレ衣装を着ていた。


 おへそ丸出しショート丈の水色ポリスシャツに、紺色ミニスカートとパンプス。シャツはもちろん第2ボタンまで開いているので特盛りオッパイの谷間が丸見えである。


 ホワイトブロンドのロングヘアーの上に黒のポリスハットもきちんと装備した完全無欠の『ヘソ出しミニスカポリス』が爆誕している。


 エチチチチチチチチッ!?


「チャーハンの人の顔、おもしろーい」


 俺としたことが、ポリスギャルのあまりの破壊力に少々取り乱してしまったようだ。いや、失敗失敗。


「なんだ、四葉。その男のことを知っているのか?」


「うん、お友達。お部屋でチャーハン食べさせてもらった。スプーンで『あーん』ってして」


 マリアさん?


「あーん……?」


 金髪オールバックのこめかみがピクリと動く。


「あと、手を繋いでお家まで帰った」


 マリアさん?


「手を繋いで……?」


 金髪オールバックの体がワナワナと震え始める。


「あと、ドエムでスケベ顔」


 マリアさんッ!?


「なるほど、よーくわかった。つまりあれか。この男はというわけだな……」


 バンッ!!


 机に怒りの拳を叩きつけた金髪オールバックが睨み殺しそうな目つきを向けてくる。


「覚悟はできてるんだろうなぁぁ……名雲優希ぃぃ……」


 あ、完全にブチギレてる。


「ご、誤解だ! この子とはそういう関係じゃない! というか、お前たち、何の恨みがあって俺にこんなことするんだよ!」


「そんなの決まっているだろう!! お前たち!!」


 金髪オールバックの号令で俺の両サイドにいた男子生徒4人がヤツの周りに集結する。何を始めるのかと思いきや、5人は一斉にスクールシャツを脱ぎ捨て、お揃いのTシャツ姿になる。


「えっ……」


 水色のTシャツの胸部分には『妹♡LOVE』とデカデカと印刷されていた。


「我ら!! 妹大好きクラブ所属!! 雨宮リサの公式お兄ちゃん!!」


 そして、金髪オールバックがキメ顔で決める。


「妹の顔を曇らせるヤツは、我々『お兄ちゃん』が許さん」


「……」


 ヤベー奴らに捕まっちまった。

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