3-4 空腹で動けない系ギャル

 俺の足に抱きついてきたお胸ぱつぱつギャルが制服スカートのポケットからスマホを取り出す。


「これ見て……ミーちゃんからのラインに書いてある……」


 アプリの画面に表示されていたのは今日の夕方ごろのやり取りだ。会話を確認しながら下へスクロールしていく。


まりあ

【お腹すいた】

【ファミレス行きたい】


 この子の名前は『マリアちゃん』か。

 

みーちゃん

【すまねーな、マリア】

【リサが絵の具の水ぶちまけちまってな】

【まだ帰れねーんだわ】


りーちゃん

【ちょっと!!】

【ぶちまけたのミサキでしょ!!】


みーちゃん

【リサ、激おこなんだけどー笑】


「……」


 うん、なんかそんな気がしてたけど。この子、ミサキさんとリサさんのギャル友だな。


りーちゃん

【教室に来ればお菓子があるよ?】


まりあ

【お菓子じゃなくてご飯が食べたい】

【みんなまだ帰れないの?】


みーちゃん

【リサがダメって言ってる】


りーちゃん

【当たり前じゃん!?】

【誰のせいでこうなったと思ってんの!?】


みーちゃん

【すまねーな、マリア】

【ファミレスへはひとりで行ってくれ】


まりあ

【わかった】


りーちゃん

【ダメだよ!】

【マリアちゃんをひとりで寄り道させないでねって】

【マリアパパにお願いされてるでしょ!】


 え? マリアパパ? 友達の父親とも知り合いってこと? ギャルのコミュ力マジ半端ねー。


みーちゃん

【あ、そっかー】

【ひとりでファミレス行っちゃダメだぞ、マリア!】

【あーしらとの約束だ!】


まりあ

【わかった】

【けど、いっぱいお仕事したからご飯食べないとお家まで帰れない】


りーちゃん

【マリアちゃん、生徒会のお仕事頑張ったんだね!】


まりあ

【がんばった】


みーちゃん

【しゃーねーな】

【お仕事頑張ったマリアのために】

【とっておきの場所、教えてやんよ】


まりあ

【知りたい】


みーちゃん

【このマンションの301号室に行ってみな】

【地図】

【おいしいご飯がたんさん食べられるぞ】

【みんなには内緒な?】


 俺の部屋はギャル御用達の食事処じゃない。


まりあ

【わかった】

【みーちゃん大好き】


りーちゃん

【え?】

【ここって、お兄さんの部屋じゃ?】


みーちゃん

【大丈夫だって】

【あーしがちゃんと話は通しとくから】


りーちゃん

【ならいいけど】


まりあ

【ミーちゃんもリーちゃんもありがとう】

【また明日ね】



「ね……? 書いてあるでしょ……?」


 たわわギャルことマリアさんが可愛らしく小首を傾げる。


「……」


 ドスケベボディの友達をひとりきりで独身男の部屋に送り込んじゃいかんだろ……。いやまあ、ミサキさんが俺のことを信頼してくれてるってのは分かるし、俺もこの子をどうこうするつもりはないけどさ……。


「と……とりあえず、部屋へ入りましょうか?」


 このままマンションの廊下で話すわけにもいかないし。


 俺はしゃがんだ状態から立ち上がる。一方のマリアさんは腹這い状態のまま、なぜか両手を「はい」っと差し出してくる。


「えーっと?」


「もう動けない……」


「え?」


「お部屋まで連れて行って……」


 いや、玄関は目の前なんだが?


「連れて行って……」


 スクールシャツから溢れそうな艶々豊満バストがおねだりしてくる。


「しょ、しょ〜がないなぁ〜♡」

 

 俺は玄関の扉を華麗に開け放ってから、彼女の脇の下へ両手を失礼して、ゆっくりと体を持ち上げる。


「よいしょっと」


「わぁ……チカラ持ち……」


 可愛い。


 彼女の足を引きずる形にはなったものの、制服を汚さないように部屋の中へ入り、廊下口へ彼女の体をいったん下ろす。


 ローファーを脱がせてから、先ほどと同じ要領で彼女の体を洋室まで運んで行く。


「よいしょ、よいしょ」


「あーれー」


 ん? この子、もしかして楽しんでる?


 洋室へ到着したので、彼女の体をベッドへ寄りかからせる。


「はい、着きましたよ」


 まったく世話の焼ける子だ。普段からこうなのだろうか?


「ありがとう……」


 まあ、俺に対して甘える分にはいっこうに構わない。ギャルの世話には慣れっ子だ。それにキチンと感謝はしてくれてるしな。


「ちゃんとお礼を言えて偉いですね。よしよし」


 軽く頭を撫でてみる。


「褒められた……嬉しい……」


 マリアさんは猫のように目を細めて気持ちよさそうにする。なんだこの可愛らしい生き物は!


「よしよし」


「嬉しい……」


「よしよし」


「とっても嬉しい……」


 あ〜、癒されるな〜♡ ずっと撫でてられるよ〜♡


「……っと、いかん。癒されすぎて忘れるところだった」


 俺は甘えん坊なギャルの頭を撫でつつ、スマホで電話をかける。念のため確認しておかないと。


 プルルル……プルルル……ガチャ


『どったの、オッサ……あっ、違った。もしもしぃ〜、ですぅ〜』


 もちろん電話の相手はミサキさんだ。というか、わざわざ言い直さなくてもいい。


「あの、学校で妻って言うのは止めてもらえ――」


『誰から電話?』

『あーしとリサの旦那ぁ〜』

『ああ、1日で48手制覇したっていう彼氏かー』


「……」


 ミサキさん、お友達に全部報告してるじゃーん!

 

『で? どーしたの、オッサン?』


「えっ……あっ、どうしたじゃありませんよ。お友達が来るなら来るって、前もって連絡してくれないと」

 

『お友達?』


「マリアさんのことですよ。今日家に帰ってきたら、玄関前にこの子がいてビックリしたんですから。ミサキさんが俺の家へ行くよう提案したんですよね?」


『……………………あっ』


 完全に忘れてただろ?


『ダメだった?』


「別にダメじゃないですけど……」


『だよね! オッサンならそう言ってくれるって信じてだぞ! さすがあーしの旦那ぁー』


 ミサキさんは相変わらず調子がいい。


「それで、俺はマリアさんにご飯を作ってあげればいいんですか?」


『そおー。あっ、それとね。ご飯食べ終わったら、マリアのことお家まで送ってあげてほしい。マリア、ひとりで帰らせるとから』


「危ない……? ああ」


 何となく分かる気がする。言葉巧みに誘われたら、知らない男の人にもついて行っちゃいそうだもんな、この子。


「うーん……?」


 俺の視線に気づいた甘えん坊ギャルが小首を傾げる。ミサキさん達の代わりに、俺がこの可愛らしい生き物を守らなきゃ。


『頼んだぞ! オッサン!』


「任せてください!」


『最後に一個言っていい?』


「はい、なんですか?」


『マリアのオッパイがからって、ぜってー触んなよ? 彼女の友達のオッパイ揉むとか、マジ最低だからな?』


「ほーう……」


 朗報。マリアぱい、アヤネぱい超えだったことが確定する。


「たわわギャル、万歳!!」


『あ? テメー、今なんつった?』


「あ……」


 その後、電話越しに30分ほど説教されたことは言うまでもない。

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