1-56 コスプレは兎と小悪魔と猫と鬼と…あと、小学生

 19時過ぎ。


 帰り支度も整い、さあ家を出ようかというタイミングになって、3人が壁掛けカレンダーの前で会議を始めてしまった。お家の方にはすでに帰宅の連絡を入れているので、あまり遅くなるわけには――


「じゃあ、次の土曜日にPってことで」


 よよよよっ、4Pいいいいいい――――ッ!?


 心配事も軽く吹き飛ぶ衝撃発言である。唖然とする俺をよそに3人の会話は続いている。


「ちょっと待ってよ、ミサキ? それじゃあ、私。初体験が4Pになっちゃわない?」


「あーしとアヤネが手え繋いで見守っててやるぞ! リサの!!」


「人の初体験を『始球式』みたいに言わないでくれるう!?」


「ええー、いいじゃーん? みんなでしようよー、4Pいいー」


「しないからッ!!」


 リサさんはプイッとそっぽを向いてしまう。というか……


「なんでそんな話になってるんですかっ!?」


 俺は堪らず声を上げるが、振り返ったミサキさんにキョトンとされてしまう。


「なんでって、チューが終わったからさ、次はもちろん『ラブラブエッチ』するでしょ?」


「ラ、ラブラブエッチ!?」


「あーしら付き合ってるんだもん! 当然じゃん! オッサン、そんなことも知らないの?」


 ギャルにクスクスと笑われる。


「お泊まりの度にエッチしまくろうねぇー♡ オッサーン♡」


「ギャルとエッチ三昧いい!?」


「オッサンのこと、寝かさないぜ! バーン!」


 ミサキさんが指で鉄砲を撃ってくる。


「ぐっ……」


 俺はハートを撃ち抜かれそうになるが、どうにか踏みとどまる。


「あとね、コスプレもしてみたい! バニーガールとか小悪魔風とか……あっ、あと猫も! にゃんにゃん♡」


「ぐはっ」


 にゃんにゃんギャルの破壊力が凄まじく、俺はその場へ倒れ込んでしまう。


「あ、オジさんが完全にやられちゃった」

「とっても幸せそうな顔してますね、お兄さん」


 アヤネさんとリサさんが顔を覗きこんでくる。


「ねえ、オジさん? 私は鬼のコスプレしてあげよっか? ほら昔のアニメであったでしょ? 鬼の女の子」


「ムチムチのラムちゃんんっ!?」


 アヤネさん、エチチチチチチチッ!?


「えっ、アヤネさんもコスプレするんですか!? 私はどうしよう……?」


「リサさんはランドセルを背負ってみたらいいんじゃないですか?」


「え? ランドセル?」


「はい。コスプレです! すごく似合うと思いますよ!」


「……」


 リサさんは無表情のまま握った拳を頭上高く振りかざす。


「あ……あの……?」


「お兄ちゃんのバカあああああ!!」


 次の瞬間、妹の怒れる拳が俺の無防備なお腹へ勢いよく振り下ろされるのだった。



 3人に着てほしいコスプレ衣装に、裸エプロンの他にバニーガールと小悪魔と猫耳とラムちゃんと最終的には小学生も加わったので頑張ってコンプリートするぞ! と仰向けのままで早くも意気込んでいると、顔がニヤけていたらしく『ロリコン』という称号を与えられてしまった。


「この歳で女子高生と付き合ってる時点でロリコンですって! なーっはっはっはっはっ!」


 なんて冗談めかして返事を返したら、3人のカンに障ったらしく、速攻で『超ロリコンなスケベ野郎』に不名誉な昇格を果たしてしまったものの、3人にをするなら今だと思い、俺は真面目な顔で正座する。


「みんなに伝えておきたい話があるんですけど」

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