第53話 ギャルはオッサンの妻(仮)になる

 4人で楽しく?2時間弱プレイした金太郎鉄道もついに結果発表を迎える。


「楽しみだね! ワクワク!」

「最初に電車が弾かれた人が最下位だからね!」

「ふふっ、誰かなー?」


「……」


【最初に脱落するのは……】

【オッサン社長だーーーー!】


「だろうなッ!!」


 俺が待ってましたと言わんばかりにそうツッコむと、ドッと笑いが起こる。


 結局、3人にハメられ続けた俺はぶっちぎりで最下位である。


 ゲームの最後に4人の総資産の変遷を記録した線グラフが表示されたのだが、俺のグラフだけ直滑降をキメていた。


「オッサン、地面にめり込んでんだけど!! 超ウケるー!!」


 パシャパシャと撮影会が始まる始末。


「なんだこれ……」


 こうして、キャピキャピゲーム大会は3人のギャルの大爆笑とともに幕を閉じた。


「……」


 とんだ、クソゲーだな!

 (普通に遊べば神ゲーです)


「ってか最後のミサキ、絶対おかしいってー」


 リサさんがテーブルにぐでーっと突っ伏しながら不満を漏らす。


「なに、あの怒涛の追い上げ? あんなのされたら勝てないってえー……」


 まあ、気持ちは分からなくはない。


 序盤から堅実に資産を増やしていたリサさんとアヤネさんが常に1、2を争っていたのだが、終盤になって状況が一変した。


 謎のを発揮させたミサキさんが、まさにお祭りフィーバー状態で資産を積み重ねていき、そのまま2人をかわして見事1位に輝いたのだ。


「あんなのチートだよ! チート!」


 リサさんが頬を膨らませる。リスみたいで可愛い。ほっぺをプニプニしたい。


「ミサキには勝てないよぉ……昔っから運がいいんだもん……。くじ引きとかも、当たりばっか引くし」


「あーし、日頃の行いがいいからね! だって毎日『家のお手伝い』してるもん!」


 ミサキさんは鼻高々である。ギャルの日頃の行いが微笑ましくてホッコリする。


 ちなみに彼女の『豪運』はこのあと、別の場所でも発揮されたりする。


「って、もうこんな時間じゃないですか!?」


 気づけば部屋には西日が差し込んでおり、時計は18時5分を指していた。楽しい時間はあっという間である。


「3人とも、そろそろ帰る時間ですよ?」


 俺は立ち上がりゲーム機を片付けていく。


「えっ、まだ6時過ぎじゃん! オッサン家で晩ご飯も食べる!」


 ミサキさんが甘えるように抱きついてくる。


「無茶言わないでくださいよ。晩ご飯の用意なんてしてませんし、帰りが遅くなったらお家の方が心配します」


「いいじゃん、ちょっとぐらい! まだオッサンと遊びたい! 遊びたい遊びたい遊びたい――」


 ミサキさんが体を小刻みに弾ませて駄々をこね始める。ふかふかオッパイがおねだりしてくるんだが?


「なにそれ、楽しそう! 私もしたい!」


 リサさんが正面から抱きついてきて、同じように体を弾ませる。JKの柔らかボディが俺の股間を擦ってくるんだが?


「じゃあ、私も」


 とうとう最終兵器まで投入されてしまう。

 ムッチムチの双丘が俺の腕を挟み込み、それはもう弾む弾む!


「ちょっ、ちょっと!? 3人とも!?」


 ギャルの柔らかボディが気持ち良すぎて声が上ずる。いかん、このままだとマジで押し切られる!? かくなる上は!


「か……鍵を!? 今度、俺の部屋のをお渡しします!?」


「へ? 鍵……?」


 3人の動きがピタリと収まる。


「そう、合鍵です! それで好きな時に遊びに来てくれたらいいですから、今日のところは帰りましょう!……ね?」


「――――合鍵ッ!?」


 俺の提案にギャル3人は雷に打たれたような表情をしたあと、パッと顔を輝かせる。


「ヤバあっ!! 彼氏の部屋の合鍵持てるとか、大人の恋人じゃん!!」


「確かにヤバいかも! それってつまり『通い妻』ってことだよね?」


「妻あ――ッ!? 私、彼氏ができてまだ2日目なのに、もう人妻ってこと!? えっ、ヤバっ!?」


「いや、別にそういう訳じゃ、ありませんからね!?」


 俺は必死に訴えるが、スイッチの入ったギャルたちに俺の言葉は届いていない。


「あーし達、今日からオッサンの妻なんですけどおお!! 現役JK妻なんですけどおお!!」


「じゃあ、夏休みの間はお兄さんのお家に3人で住んじゃう?」


「えっ!? 住む!?」


「それいいかも。朝はオジさんをお見送りして、夕方帰って来たオジさんを出迎えるって、いかにも妻って感じだよね」


「じゃあ、あーしやってみたい!」


「アレって?」


「決まってんじゃん! 妻といえばアレじゃん!」


 軽く咳払いをしたミサキさんがその場で寸劇を始める。


「ガチャ……お帰りなさい、アナタ。今日もお仕事疲れたでしょ? 先にご飯にする? お風呂がいい? それとも……ワ・タ・シ♡ ってやつ!」


「ギャルが裸エプロンでお出迎えええ――ッ!? って、あ……」


 思わず声に出してしまった。

 3人がからかうような笑みを向けてくる。


「オジさん? 裸エプロンで……なんてひと言も言ってないよ?」


「ぐっ……」


「お兄さんってば、ほんとスケベですね?」


「ふぐっ!?」


 最後にミサキさんが俺の肩をポンと叩く。


「合鍵くれるお礼に、今度裸エプロンでお出迎えしてあげてもいいけど?」


「あ……じゃあ、その……お願いしますぅぅ……」


 俺は縮こまりながらそう答えた。


 そのあと、夏休み期間中の過ごし方について俺と彼女たちの間で話し合いがなされたのだが……。


「いいじゃん、住んでも! あーし達、オッサンの妻なんだから!」


「いや、ダメですって!? ご両親が心配しますから!?」


 と、こんな感じの押し問答が繰り返され。

 俺の家に住むと言って聞かないギャルたちを、週1回のお泊まりでどうにか納得してもらうのに、30分以上かかったのだった。



 19時前。

 帰り支度も終わって、さあ家を出ようかというタイミングになって、3人が壁に掛けられたカレンダーの前でなぜか会議を始める。


「じゃあ、次の土曜日にPってことで!」


 よよよよっ、4Pいいいい――――ッ!?

 

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