1-54 ギャルのうんちに囲まれる
午後4時過ぎ。俺は3人のギャルに攻められていた。
「あ、ちょっと!?」
「オッサン? ここがいいんだろ?」
「ああっ、そんなっ!?」
「ダメですよぉ、お兄さん? 逃げようとしちゃぁ」
「ああっ! そこだけはー!?」
「ちょっとどこ行くの、オジさん? 逃がさないからね♡」
「ああああああ!? らめええええええ!?」
【グェッヘッヘッ! 金などいらぬ! 出た目の数だけ金を捨ててやるぞ! オッサン社長!】
【37!】
【グェッヘッヘッ! 37億円を捨ててやったぞ! よろこべ!】
【オッサン社長の持ち金は、マイナス202億2800万円になった】
「うおおおおおおおおいッッ!?」
テレビ画面には理不尽すぎるほど膨れ上がった俺の借金の金額が表示されている。もう叫ばずにはいられない。
「やばっ!! 超ウケるうう!! オッサンの借金、200億円突破してるんですけどおお!!」
3人のギャルは『キングビンボー』の暴れ回るテレビ画面を見ながら大爆笑である。
「コイツらあぁぁ……」
俺はふつふつと湧き上がる怒りを必死に抑える。
今、俺たちが遊んでいるテレビゲームはスゴロクゲームの金字塔『金太郎電鉄』の最新版である。ゲーム機本体は持っていたので、午前中、食材を買いに出たついでに中古品を購入しておいた。
だってしてみたいじゃん! 令和のギャルと一緒に楽しむキャピキャピゲーム大会!
「ほらほら、オッサンの番だよ。サイコロ振らないと!……って、動けないんだったああ〜」
煽り顔のミサキさんが煽り散らかしてくる。この野郎おお!!
「っていうか、このゲームって個人戦ですよね!? 3人で結託するとか卑怯ですよ!?」
完全にハメられた……。
序盤こそ、わきあいあいと4人で楽しく遊んでいたのだが、だんだんと俺に貧乏神が取り憑く機会が増えてきた。
おかしいな、と思ったころにはもう手遅れだった。3人が阿吽の呼吸で俺を陥れていたのだ。
今だってそうだ。
キングビンボーの取り憑いた俺の駒は3つの『うんち』で完全に包囲され、身動きが取れなくなっている。
この障害物が線路上から消えるまで、俺は毎ターン、ただただ金とカードをむしり取られていくのみ。物件など、とうの昔にすべて手放している。
「協力プレイ、はんたーい」
俺は不貞腐れながら抗議する。
「何言ってんの、オッサン? たまたまじゃん! たまたまそこにウンチが落ちただけだし!」
いや『うんちカード』ってプレイヤーが指定した場所に障害物を置くカードだからね? 本人の意志以外あり得ないからね?
「ほら、オジさん、頑張んなよ。ゲームはまだ折り返しだからさ」
アヤネさんが俺の背中をポンッと叩いて元気づけてくれる。あぁ……ほんとキミは俺の天使だよぉ……。
彼女の言うとおり、勝負はこれからだ! なんせ俺には強力なお助けカード大天使ミカエルならぬ『大天使アヤネル』がついていてくれるんだからな!
アヤネさん……いや、大天使アヤネルのためにも絶対勝ああああつ!!
「ああっ、お兄さんを囲んでいたウンチがなくなっちゃいました!?」
よし! これでようやく動ける。
まずは徳政令のカードを手に入れて、積もりに積もった借金をチャラにする。だが、その前に……
「ああっ! オッサンがあーしにビンボーなすりつけようとしてるんですけどお! 近づいてくるんですけどお!」
「悪く思わないでくださいね、ミサキさん! ぶっとびカードで俺のそばに飛んできたミサキさんが悪いんですからね! 覚悟おおおおお!!」
「はい、牛歩カードね♩」
【アヤネ社長は牛歩カードを使った】
【オッサン社長は1マスずつしか進めなくなった】
ちょっ!? 天使アヤネル、なにしてんのおおおお!?
「だって、貧乏神なんかに取り憑かれたら、ミサキが可哀想でしょ?」
いや、そういうゲームだからね!?
「アヤネ、ナーイス♩」
「いえーい」「いえーい」
2人は笑顔でハイタッチした。何が天使だ。この悪魔め……。
「よおーーーく、分かりました。そっちがそのつもりなら受けて立ちましょう」
こうなりゃ、俺が証明してやる! 金鉄(金太郎鉄道)というゲームが、この絶望的な状況からでも大逆転できるゲームだってことをなああああああッ!!
――1時間後
「結果発表、楽しみだね!」
「最初に電車が飛んでった人が最下位だからね!」
「ふふっ、誰かなー?」
「……」
テレビ画面に映し出される最終結果の演出を3人のギャルとともに見守る。
え? 結果発表、いる?
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