第54話 あーし、爆発しちゃうって

 19時過ぎ。

 帰り支度も終わって、さあ家を出ようかというタイミングになって、3人が壁掛けカレンダーの前で会議を始めた。


「じゃあ、次の土曜日にPってことで」


 よよよよっ、4Pいいいい――――ッ!?


 ギャルの口から予想だにしない単語が飛び出て、俺はその場で固まってしまう。


「えっ……ちょっと待ってよ、ミサキ。それじゃあ、私。初体験が4Pになっちゃわない?」


「いいじゃん! あーしとアヤネが手え繋いで見守っててやるじゃん! リサの!!」


「人の初体験を『始球式』みたいに言わないでくれるう!?」


「ええー、いいじゃーん……しようよ4Pー」


「しないから!」


 リサさんはプイッとそっぽを向いてしまう。というか――


「なんでそんな話になってるんですかっ!?」


 俺が堪らず声をかけると、振り向いたミサキさんはキョトンとする。


「なんでって、チューが終わったら、次は『ラブラブエッチ』するに決まってんじゃん?」


「ラ、ラブラブエッチ!?」


「そお。あーし達、付き合ってるんだから当然じゃん? オッサン、そんなことも知らないの?」


 ギャルに軽く笑われる。


「お泊まりの度にエッチしまくろうね、オッサン!」


 ミサキさんが満面の笑みを向けてくる。


「ギャルとエッチ三昧!?」


「そお! オッサンのこと……寝かさないぜ! バーン!」


 ミサキさんが指で鉄砲を撃ってくる。


「ぐっ……」


 ギャルが可愛すぎるって!?

 俺はどうにか踏みとどまる。


「あとね、コスプレもしてみたい! ウサギとか悪魔とか……あっ、猫も! にゃんにゃん♡」


「ぐはっ」


 ギャルに甘えるような猫の仕草をされて、耐え切れなくなった俺はその場へ倒れ込む。


「あ、オジさんが完全にやられちゃったね」

「とっても幸せそうな顔してますね、お兄さん」


 アヤネさんとリサさんが覗きこんでくる。


「ねえ、オジさん? 私は鬼のコスプレしてあげようか? ほら昔のアニメであったでしょ? 鬼の女の子」


「ムチムチのラムちゃん!?」


 アヤネさん、エチチチチチチチ!


「えっ? 私はどうしよう……?」


「じゃあ、リサさんはランドセルを背負ってみるのはどうですか?」


「ランドセル?」


「はい。小学生のコスプレです!」


「……」


 リサさんは無言で拳を振りかざすと――


「ふんっ!」


 俺のお腹を目掛けて、怒れる拳を叩き込むのだった。


 ゴン!


「うごっ!?」


 俺は床の上で悶え苦しむ。


「もおおー! お兄ちゃんのバカあ!!」


 リサさんが俺のことを怒鳴りつけると、部屋は笑い声に包まれるのだった。


 ◆

 

 ひとしきり笑ったあと、俺は上体を起こしながら3人に話しかける。


「みんなに伝えておきたいことがあるんですけど」


「なになに?」


 俺のそばにいたアヤネさんとリサさんに続いて、ミサキさんも女の子座りする。


「3人とも学校は楽しいですか?」


「もっちろん!」


「まあ、勉強は大変だけどね」


「確かに」


「ふふっ、そうですね」


 俺が3人の頭を順番に撫でていくと、彼女たちはとても幸せそうな顔をする。


「俺、3人には高校生活をうんと楽しんでもらいたいんです。お友達と一緒に遊んで、勉強して、学校行事に参加して……。一生に一度しかない高校生活を大切にしてほしい。だから、在学中にするようなことは絶対に避けましょうね!……って聞いてますか?」


 3人はキョトンとしている。俺は慌てて要点を伝える。


「つ、つまりはですね! エッチは高校を卒――」


「もおー! オッサンが真面目な顔して話すから、ちょっとビックリしたじゃんかあー! の話かよッ!」


 ミサキさんがズビシッと突っ込みを入れてくる。アヤネさんとリサさんは呆れたように溜め息をつく。


「そんなのコンドームで避妊するに決まってるじゃん」

「学校で習いましたもんね」


「いや、それはもちろんなんですけど、ここは万全を期しましょう!」


「万全を期す?」


「はい」


 俺は3人の体を両手で優しく包み込み目を閉じると、ありったけの愛を込めて伝える。


「ラブラブエッチは高校を卒業するまで、お預けにしましょうね! 俺も我慢しますから!」


 そりゃあ、俺だってこの子たちとヤりまくりたい。若さ溢れるキャピキャピギャルの体を好き放題にしたい。けど、彼女たちのことを思えば我慢できる。


 俺はやるぞ!! 3人全員と真剣交際だってことを認めてもらって、将来は3人一緒に――


「はあ? 卒業するまでお預け? オッサン、何言ってんの?」


「え……?」


 3人のギャルが下から睨み上げてくる。怖いったらない。


 あれ? 俺の激カワ天使たちはどこへ?


「卒業まで待ってたら、あーししちゃうって」



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