1-52 エロ動画、爆音で見てるじゃーん!!

 ミサキさんのお腹が鳴って、ようやく3人のエンドレスキッスから解放された俺はゆっくりと体を起こす。1週間分のキスをした気がする。

 

「お昼ご飯にしましょうか? 準備するので、3人は部屋でくつろいでいてください」


「準備って何するの?」


「そうですね。下準備したエビフライを揚げて……サラダを盛り付けて……スープを温め直して……」


「えっ、もしかしてオジさんの手作り?」


「もちろん。彼女に食べてもらう料理ですからね。作りたての揚げたてを振る舞うのが俺流です! 午前中に買い物へ行って準備しておきました!」


「お兄さん、料理できるんですか!? すごっ! カッコいい!」


 妹の好感度が上がった。


「できるといっても、定番のモノしか作れませんよ? 休みの日にすることがなくて、なんとなく料理をしていただけなので。っと、そんなことより。油を使うので台所へは近づかないようにしてくださいね? いいですか?」


「はーい」

「はーい」

「はーい」


 3人のギャルは揃って手を挙げる。可愛い。いつもこれくらい素直に言うことを聞いてくれたら助かるんだけどな。なんてことを考えながら、俺は幸せな気分で台所へ向かう。



「フンフフーン♩」


 俺は鼻歌交じりに冷蔵庫からエビを取り出す。衣はすでにつけてあるので油を熱したフライパンへ次々と投入していく。


「にしても、やけに静かだな……」


 俺が台所で作業を始めたころは、それはもう賑やかなギャルトーク(ちょっとエッチなやつ)が部屋から聞こえていたのだが、どういうわけか今はひっそりとしている。


 時折、小さな物音やヒソヒソと話す声は聞こえてくるのだが……


(ねえ、パスワード4桁だって)

(4桁か……あっ、誕生日とかは?)

(あり得るー!)


 いったい部屋で何をしているのやら。キッチンから3人の様子が確認できないだけに不安は募るばかりである。


 まあ、アヤネさんの汗だくブラジャー以外に見られて困るような物なんて置いてないけどな。


「もしや、アダルトなDVDを探してるのか?」


 だとしたら無駄だぞ、ギャル達! 今の時代、男のオカズはすべて『デジタル』なのだよ! ガハハハハハッ!


「ねえ、オッサン! 誕生日、何月何日?」


 ミサキさんが何の前触れもなく大声で質問してくる。


「誕生日ですか? 8月3日ですけど?」


 なぜ今それを聞く?


(0803っと……。わはっ! 開いたぁ!)


 ああ、あれか。サプライズ的なやつを計画してくれたりするのだろうか? 例えばそうだな……。


「オッサンへのプレゼントは『ギャルの詰め合わせ、食べ放題』だぞ♡」


 とかなあー!


「ちょいちょいちょい! 3人一緒なんて、さすがに食べきれな――」



【イクっ!! イクっ!! イッちゃううううっ!!】



「え゛ッ!? なにごとッ!?」


 部屋から突然、特大の『喘ぎ声』が聞こえてきた。俺は菜箸片手に大急ぎで部屋へと向かう。


「ちょっと!? 3人とも何して……わひゃあああああああああッッ!?」


 部屋の光景を目の当たりにして思わず絶叫してしまう。


【ああァっ♡ 気持ちいぃっ♡ もっと突いてぇ〜♡】


 テーブルの上に置かれた俺の『ノートパソコン』が大音量で喘いでいた。


「うぎゃあああああああッ!?」


 俺は悲鳴を上げながらテーブルへ覆い被さりパソコンを閉じる。


「オッサンさぁ……」


 テーブルの向こう側に並んで座るギャル3人がニヤリと微笑む。


爆音で見てるじゃん!!」


「しかも『ギャルのハーレムもの』だしね」

 

「お兄さん、超スケベですね♩」


「……」


 のおおおおおおおおおおッ!?

 

 俺は心の中でのたうち回る。


「てか、オッサン。いくらエロ動画が好きだからって、あんな爆音で見てたら近所迷惑だって」


「いや、動画見る時はちゃんとイヤホンしてますからね!? っていうか、俺のパソコン勝手に見ないでくださいよ!?」


「なんで? 別にいいじゃん」


「ダメです!」


「リサがエッチの勉強したいって言ってるのに?」

 

「言ってないからッ!?」


 リサさんのツッコミがキレッキレだ。


「別に恥ずかしがることないって、オジさん」


 アヤネさんが俺の頭をよしよしと撫でる。


「私たち、ちょっと気になってさ。オジさんがいつもどんな動画を見てるのかなーって。彼氏のことを知りたくなるのは、彼女として当然のことだと思うけどな」


「それはまあ……そうかもしれませんけど……」


「それにオジさん、今料理中でしょ?」


 アヤネさんは俺の握る菜箸を指差す。


「あっ、しまった!? 忘れてたっ!?」


 俺はキッチンへ飛んで帰り、慌ててコンロをオフにする。幸いエビフライは無事だった。少し揚げすぎた感はあるが、これなら許容範囲だろう。にしても……


「オッサン、ギャルのハーレムものばっか見てるね」


「まあ実際、彼女が3人もいるからね」


「ねえ、ミサキ? 男の人ってさ。この動画みたいに、乳首舐めながらおチンチン触ってあげると気持ちいいものなの?」


「リサ、興味津々じゃん!!」


「ちがっ!? 聞いてみただけだからねっ!?」


 俺の部屋で『第1回エロ動画鑑賞会』が始まってしまった。


「はぁ……」


 俺はキッチンで料理を盛り付けながら溜め息をつく。日頃お世話になっている俺の秘蔵っ子たちがギャルたちの目に次々と晒されていく。


「こっちは爆乳系で……こっちはロリ系じゃん!」


「人妻系もあるね」


「えっ!? この車、外から丸見えじゃない!?」


「マジックミラーごうもあるじゃん!」


 もう、やめてくれ……。性癖を丸裸にされてるみたいで、恥ずかしいったらない。


「お、そうだ」


 あの子たちをもう一度お仕置きすればいいんじゃないか? 俺を辱めた罰として。


「ぐふっ、いける」


 さっきは最終的に受け手に回ってしまったが、次はそうはいかない。俺が男……いや、強いだってことを、その唇に徹底的に教え込んでやるからな!


 俺は揚げたてのエビフライを皿に乗せ終えると、意気揚々とギャルたちが盛り上がる部屋へ乗り込んでいくのだった。


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