第51話 オッサン、性癖を露わにされた挙句、返り討ちに遭う

「フンフ、フーン♩」


 ギャル3人との濃厚なキッスを思う存分堪能した俺は鼻歌混じりにIHコンロのスイッチを入れる。


 フライパンで熱した油に、下処理を済ませて衣をつけておいたエビを投入していく。


「にしても、やけに静かだな……」


 俺が台所で作業を始めたころは、それはもう賑やかなギャルトーク(ちょっとエッチなやつ)が聞こえていたのだが、どういうわけか今はひっそりと静まり返っている。


 時折、小さな物音やヒソヒソと話す声がするだけだ。いったいあの子たちは何をしているのやら……。


 台所からでは、その様子が確認できないだけに不安は募るばかりである。


 まあ、アヤネさんの汗だくブラジャー以外に見られて困るような物なんてないけどな。


 エロ本を見つけようとしてるなら無駄だぞ、ギャル達! 今の時代、男のオカズはすべて『デジタル』なのだよ! ガハハハハッ!


「ねえ、オッサン! 誕生日いつ?」


 ミサキさんが何の前触れもなく部屋から声をかけてくる。


「え? 誕生日ですか? 8月3日ですけど……?」


 なぜ、このタイミングなのだろう?


(0803……っと。わはっ! 開いたぁ!)


 ああ、あれか。サプライズ的なやつを計画してくれたりするのだろうか? 例えばそうだな……。


「オッサンへのプレゼントは『ギャルの詰め合わせ、食べ放題』だぞ♡」


 なあーんてなあ!

 ちょいちょい! 3人一緒なんて、さすがに食べきれな――



【あんっ♡ あんっ♡ あんっ♡】



「え゛っ!? なにごとっ!?」


 穏やかな午後のひとときが特大の『喘ぎ声』によって破られる。


「ちょっと!? 何してるんですか!?」


 俺は菜箸片手に声の発信源である部屋へと突入する。


『わひゃあああああああああッッ!?』


 部屋の光景を目の当たりにした俺は絶叫する。


【あんっ♡ あんっ♡ 気持ちいいよお♡】


 テーブルの上に置かれた俺の『ノートパソコン』が大音量で喘いでいるではないか。


「ちょっ!? 勝手に何してるんですかっ!?」


 俺はテーブルへ倒れ込むようにしてパソコンを閉じる。


「オッサンさぁ……」


 テーブルの向こう側に並んで座るギャル3人と目が合う。


 やめろ……それ以上は何も言わないでくれ……。


 そんな俺の願いも虚しく、3人はニヤリと微笑む。


「オッサン、爆音で見てるじゃん!!」


「しかも『ギャルのハーレムもの』だしね」

 

「お兄さん、超スケベですね!」


 のオオオオオオオオ――――ッ!?


 俺は心の中でのたうち回る。


「てかオッサン、いくらエロ動画が好きだからって、あんな爆音で楽しんでたら近所迷惑だって」


「いや、動画見る時はちゃんとイヤホンしてますからね!?……っていうか、俺のパソコン勝手に見ないでくださいよ!?」


「ええー、なんで!? 別にいいじゃん!」


「ダメです!」


「リサがエッチの勉強したいって言ってるのに?」

 

「――言ってないから!?」


 リサさんのツッコミはキレッキレだ。


「別に恥ずかしがることないって、オジさん」


 アヤネさんが俺の頭をよしよしと撫でてくる。


「私たち、気になってるだけだからさ。オジさんがいつもどんな動画を見てるのかなーって……。彼氏のことを色々と知りたくなるのは、彼女として当然のことだと思うけどな」


「それはまあ……そうかもしれませんけど……」


「それにオジさん、今料理中でしょ?」


 アヤネさんは俺の握る菜箸を指差す。


「あっ!? しまった、忘れてたっ!?」


 俺はキッチンへとんぼ返りして、慌ててコンロをオフにする。幸いエビフライは無事だった。少し揚げすぎた感はあるが、これなら許容範囲だろう。


 ……にしても。


「オッサン、ギャルのハーレムものばっか見てるね」


「まあ実際、彼女が3人もいるからね」


「ねえ、ミサキ? 男の人ってさ。この動画みたいに、乳首舐めながらアソコを触ってあげると気持ちいいものなの?」


「リサ、興味津々じゃん!!」


「ちがっ――!? 聞いてみただけだから!?」


 ギャルたちが盛り上がる声が部屋から聞こえてくる。


「はぁ……」


 一方の俺はキッチンでひとり、料理を盛り付けながら溜め息をつく。


 俺の部屋で『第1回 エロ動画鑑賞会』が始まってしまった。日頃お世話になっている秘蔵っ子たちが次々とギャルたちの目に晒されていく。


「こっちは爆乳系で……こっちはロリ系じゃん!」


「人妻系もあるね」


「えっ!? この車、外から丸見えじゃない!?」


「マジックミラーゴウもあるじゃん!」


 もう、やめてくれ……。


 性癖を丸裸にされてるみたいで、恥ずかしいったらない。


「……ん? まてよ」


 あの子たちをもう一度お仕置きすればいいんじゃないか? 俺を辱めた罰として。


「いける!」


 さっきは受け手に回ってしまったが、次はそうはいかないぞ、小娘ども。


 俺が男……いや、強いであることを、その唇に徹底的に教え込んでやるからな!


 俺は揚げたてのエビフライを皿に乗せ終えると、ギャルたちが戯れる部屋へと向かう。


 覚悟しろ、お前たち! ヒーヒー言わせてやる! フハハハハハッ!!

 

「オッサン、超ニヤニヤで面白いんだけどお!」


 小娘たちが俺を見上げて笑っていやがる。まあ、楽しんでられるのも今のうちだ。


 俺は静かにノートパソコンを閉じる。


「お昼の用意ができましたよ? オッサンが腕によりをかけて作った洋食ランチです」


「わはああああ! あーし、彼氏の手作り料理なんて初めて食べるんだけどお!」

「私も。すっごく楽しみ」

「お兄さん、カッコいい!」


 3人は俺を見上げたまま目を輝かせる。

 

「ふふっ、その前にひとついいですか?」


 俺は軽く微笑んで3人の後ろへ回り込む。


「今から3人には罰を与えます。オッサンを辱めた罰です」


「へ? 罰って?」


「もちろん、お仕置きのチュウに決まってるじゃないですか!」


 俺は襲いかかるようにして並んで座るギャルの体を3人まとめて抱え込む。


「あはっ! オッサンに捕まったんだけどおお!」


 声を弾ませる彼女たちを立ち上がらせた俺は、3人とともにベッドへダイブする。


「きゃああああああ――」


 俺の腕に抱かれた3人は楽しげな悲鳴を上げながらベッドへ倒れ込む。


 俺は3人の体を抱きしめながら、彼女たちの匂いをクンカクンカと嗅いでいく。ここは天国か?


「オッサンが超スケベ顔なんだけどお!」

「もぉ……オジさん、くすぐったいってばぁ……」

「お兄さんがクンクンしてくるうー!」


 3人とも楽しそうにもがくだけで、逃げる気などまるでない。


 これはもう3人まとめてチュウしてくださいってことだよなあ!


 俺は3人のギャルをまとめてベッドへ押さえつける。


「抵抗してもムダですからね。3人が俺のモノだってこと、その唇にたっぷり教えてあげますからね!」


 2回戦の始まりだああああ!! ウヒャヒャヒャヒャヒャッ――



 ――40分後。


 俺はベッドへ仰向けになりながら天井を見つめる。


 見事、返り討ちに遭った。


 唇はもちろんのこと、ティーシャツをたくし上げられて露出した乳首まで唾液まみれである。


 俺の乳首は感覚がなくるなるほど舐め回され、吸われ続けてしまった。


 もうお嫁に行けない……。


 リサさんはぐったりとする俺の姿を見ながらウットリしている。

 

「お兄さんの感じる声……すっごく可愛かったなぁ……」


「リサってば、超ドSじゃん! オッサンの乳首、責めすぎだし!」


「えぇ? 別にドSってことは……。まあ、SはSかもしれないけど」


 俺の妹はSらしい。


 こうして、キス大会2回戦も俺がやられっぱなしのまま終了となった。


「お昼にしましょうか?」


 すっかり冷めてしまったエビフライをレンジで温め直して、俺たち4人は少し遅めの昼食を取った。


 俺の手料理は好評で。


「オッサン、お母さんになれるじゃん」


 とか言われてしまったが、俺がなりたいのは3人のパパである。


 将来、この子たちが俺の赤ちゃんを産んでくれるなら、これほど幸せなことはない。


 まあ、現実問題、難しいだろうけどな……。


 俺はシンクで皿を洗いながら、洗面所に向かった3人の会話に耳を傾ける。


「ここにある新品の歯ブラシ、好きなの使っていいって」


「じゃあ、あーしはピンク色!」


「私は青にしようかな」


「じゃあ、私は紫で」


「これ、使ったあとは持って帰るの?」


「何言ってんの、リサ! ここに置いとくに決まってんじゃん! 彼氏の部屋に自分の歯ブラシ置いとくのはね、彼女の特権なんだぞ!」


「なるほどー!!」


 この日から俺の部屋の洗面所には4本の歯ブラシが並んだのだった。



「お腹もいっぱいになりましたし、ちょっとでもしませんか?」


「ゲーム?」


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