第49話 オッサン、ギャルにお仕置きのキスをする

「言うことを聞けない悪い子たちにはお仕置きが必要みたいですねぇ……」


 俺はベッドの上で身構えるミサキさんとリサさんへ向かって、軽く笑みを浮かべてみせる。


「今から『お仕置きのキス』をします」


「へ……? キス……?」


 ミサキさんが間の抜けた返事をする。


「そうです。俺の気が済むまで可愛いお口をチュウチュウしちゃいますからね。イヤだって言っても止めません」


 俺がキッパリそう言い切ってみせると、ミサキさんとリサさんは目を輝かせる。


「ヤバッ! オッサンのお仕置きが、あーしら的に超ご褒美なんですけどお!」


 ミサキさんはベッドの上で体を弾ませながらリサさんに抱きつく。


「ヤバいね! イタズラする度にお兄さんがチュウしてくれるなら、私、悪い子になっちゃいそおー!」


「いや、それはやめてくださいね?」


 抱き合いながら大はしゃぎする2人に俺の声は届いてなさそうだ。


「……っと、そうだ」


 俺はベッドへ寄りかかって呆気に取られているアヤネさんの両脇を抱え上げる。


「えっ、何!?」


 前の2人に比べると、やっぱり重たいな。まあ、体つきがボリューミーだから当然か。


「ちょっとオジさん!?」


 俺は困惑するアヤネさんをベッドへ座らせる。


「アヤネさんも、もちろんお仕置きです」


「えっ、私も……?」


「当然です。さっき、俺がくすぐられている写真を盗撮してましたからね。そのお口にたっぷりお仕置きしないと……」

 

 俺がそう言いながら、ふっくらとした唇を親指で優しくさすると彼女は目をトロンとさせる。


「キスがお仕置きとかズルいって、オジさん……」


「イヤですか?」


「ううん……すっごいゾクゾクする」


「ふふっ、それはよかった」


 さすがドM。


「ちょっと、アヤネさん! お兄さんを独り占めしないでくださいよおー!」


 リサさんが隣に座るアヤネさんの体に甘えるように抱きつく。


「そうだぞ、アヤネ! オッサンはみんなのオッサンなんだからな!」


 そこにミサキさんが輪をかけるように抱きつく。


「おおっ」


 なんということだ。

 男なら一度は抱いてみたいと思うであろうギャルたちが、俺のベッドの上で仲睦まじく身体を寄せ合っているではないか。まさに至福の光景である。


 いやー。ホント、世の中の芋ども……じゃなくて男性諸君には申し訳ないよ。俺ひとりでこんな可愛い子たちを独占しちゃってさ。


 まあ実際のところ、これっぽっちも悪いなんて思ってないんだけどな! ガハハハハッ!

 

「オッサン、楽しそうに笑ってるね」


「うん。最初、駅前でこれを見たときはドン引きしたけど、今では愛おしいよ」


「オジさん? ひとりでニヤニヤしてないでさ。早くお仕置き始めてよ」


 っと、いかんいかん。

 俺としたことが、ちょっと幸せに浸りすぎてしまったようだ。


「はっはっはっ、待たせてごめんよぉぉ、俺の天使たちぃぃ」


「お兄さん、キモッ!」


「……」


 ちょっと調子に乗りすぎた。失敗失敗。

 俺は軽く咳払いをする。


「さて……誰からお仕置きしてほしいですか?」


 3人は顔を見合わせる。


「ミサキからでいいんじゃない? その次はリサかな。私は最後でいいよ」

 

「えっ、私が最後でいいですよ。昨日、お兄さんとチュウしてますし」


「そんなこと気にしなくていいって。ミサキから順番にした方が分かりやすいし」


「アヤネ、すまねーな! じゃあ、あーしからってことで!」


 ミサキさんは髪の毛を両手でサッと払って居住まいを正すと、顔を上げて目をつぶり、おねだりしてくる。


「オッサン、早くお仕置きしてぇぇー」


 え? 俺のギャルが可愛すぎるんだが?


 俺はミサキさんの肩をそっと掴む。


「いきますよ?」


「うんっ! 早く早くぅぅぅ」


 俺は目を閉じて顔を近づけていき、ミサキさんの唇に口先を軽く触れさせる。


 そこから小鳥がついばむようにチュッチュッチュッと短いキスを繰り返す。


「んふっ!」


 ミサキさんは目と口を閉じたまま楽しそうな声を上げる。


 そのあと俺とミサキさんは唇を強く重ね合う。時折、互いの唇の感触を確かめ合うように甘噛みも交えると、彼女の口から幸せの吐息が漏れた。


 俺とミサキさんは長めのキスをじっくり堪能してから、ゆっくりと顔を離した。


「ヤバぁ! オッサン、あーしの、覚えててくれたの!」


「もちろん。カラオケ屋で言ってましたもんね。チュチュチュのチューだって」


「わはあっ! 超嬉しいんだけどおお!」


 ミサキさんが首元に抱きついてくる。


「もっかい、チューしたい!!」


「ちょっと、ミサキ! 順番だって!」


 頬を膨らませたリサさんがミサキさんの腕を引っ張る。


「あっ、ごめんね、リサ。嬉しくてつい」


 ミサキさんは素直に俺を解放する。

 俺はそのまま隣へ移動する。


「緊張してませんか? リサさん?」


「そりゃあ、緊張してますよ。けど……キスしたいって気持ちの方が強いです。私、お兄さんとキスするの好きかもしれません」


「リサ、スケベだな!」


「えっ、女の子ならそれくらい普通じゃないの!?」


「スケベな子にはお仕置きしないといけませんね」


 俺はリサさんの肩をそっと掴むと、油断して隙間の空いた小さな口を塞ぐように唇を重ねるのだった。


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