3人のギャルと初めてのお家デート

第46話 オッサン、食べごろギャルのデリバリーを受け取る

 ――ピンポーン


 7月下旬、日曜の昼12時。

 来客を告げる呼び鈴が鳴る。


「はーい」


 1K 10畳の部屋に備え付けられた小さなモニターに私服姿のギャル3人が映る。


『オッサン、見て見てケーキ!』


 ミサキさんが嬉しそうに紙箱を見せてくる。

 俺の彼女は今日も可愛いさ絶好調である。


『今ならでね、食べごろギャルが3人も付いてきまあーーす!』


「いや、そっちがメインディッシュですね」


『オッサン、ドスケベじゃん!!』


「――――ッ!?」


 しまった!? なんて巧妙な罠なんだ!?


 というか、早くこの子たちを部屋へ上げなければっ! 他の住人も利用するマンションのエントランスで『食べごろギャル』だの『ドスケベ』だのとこれ以上騒がれるわけにはいかないっ!


 俺が急いで解錠ボタンを押そうとしたところで、モニターから3人の会話が聞こえてくる。


『うぅぅ……なんか緊張してきちゃった。私……男の人の部屋に入るのって、初めてなんだよね……』


『リサ、気をつけね! オッサンの部屋がイカ臭くても、イカ臭いって言っちゃダメだよ! オッサン、ああ見えてメンタルが豆腐な部分もあるからね!』


『えっ!? 男の人の部屋ってそんなにイカ臭いの!?』


『いや、イカ臭くないから。……あ、けど、ゴミ箱はどうかな? 丸めたティッシュが山盛りとかだと、ちょっと匂うかもね』


『オッサン、超シコってんじゃん!!』


「……」


 俺は解錠ボタンを押す。


「ひ……左手にあるエレベーターで3階まで上がってきてくださいね?」


『わかったあー!!』

 

 ミサキさんが元気よく答えるとギャルたちの姿がモニターから消える。


 俺は急いで部屋に置かれたゴミ箱(小)の中身を空っぽにして、窓を目一杯開け放つのだった。



 ピンポーン


 再び呼び鈴が鳴る。


「はーい」


 俺は胸の高鳴りを抑えながら玄関の扉を開け放つ。


「みんな、いらっしゃ――」


 もちろんそこには、とびっきり美人な3人のギャルがいるわけで……。わかってはいたものの。


 ――――絵面、ヤバっ!?


「オッサン! みんなで遊びに来たぞ!」


「あっ……はいっ。ど、どうぞ上がってくださいっ!」

 

 俺は扉を押さえながら3人を招き入れる。


「おっじゃまっしまーす! わはああ! けっこう広いじゃん!」


 甘い香りを振りまくミサキさんが真っ先に部屋へ突っ込んでいく。それに続いて、少し大人っぽい香りを漂わせたアヤネさんが靴を脱ぐ。


「部屋の中、スッキリしてるね」


「ええ、まあ。物欲はない方なので」


「よかったね、ミサキ。これならできそうで」


 えっ、お泊まり? しかも3人?……って、あれ? リサさんは……?


 振り返ると、彼女だけ玄関前で固まってしまっている。俺は顔をこわばらせる彼女の頭を軽くポンポンしながら微笑みかける。


「そんなに緊張しなくても平気ですよ? 友達の家へ遊びに……ちょっと違うな……。そうだ、リサさんのお姉さんの部屋へ遊びに来たと思ってくれたらいいですよ?」


「お姉ちゃんの?」


「はい。まあ、俺の場合は『お兄ちゃんの部屋』になっちゃいますけどね」


「お兄ちゃん……」


 リサさんは俺の顔をじっと見上げてくる。

 

「リサ! なにやってんの! 早く手伝って!」


 部屋の中からミサキさんが大声で呼びかけてくる。


「あ、うん! 今行くー!」


 リサさんが玄関へ入ったので扉を閉めると、彼女が小声で話しかけてくる。


「あの、お兄さん……たまにでいいので『お兄ちゃん』って呼ばせてもらってもいいですか?」


「え? まあ、それは別に構いませんけど……。普段からお兄ちゃんでもいいですよ?」


「ななな、なに言ってるんですかっ!? ミサキやアヤネさんの前で呼べるわけないじゃないですかっ!? お兄さんのバカ!!」


 顔を真っ赤にした妹に怒られてしまった。


「もおー!」


 大股歩きで廊下を進んでいくリサさんの後ろ姿を見て思った。


 女の子の気持ちって複雑だな……。


 まあ、いっか。可愛い妹に『お兄ちゃん』って呼んでもらえるみたいだし――


「――って、何やってるんですか!?」


 キッチンを抜けて部屋へ入った俺の目に飛び込んできたのは、ミサキさんとリサさんがベッドへ顔を沈めている驚きの光景だった。


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