1-46 妹ギャルはラインでお兄さんに甘えたい

「いや〜……この歳になって、現役JKと本気キスしちゃったよ〜」


 風呂上がり。ビールの入ったグラス片手に顔が緩む。帰宅してからニヤニヤが止まらな〜い♡

 

 だって、女子高生って匂いだけしゃなくて唇も甘いんだもん。あんなの反則だって〜♡


 まあ今の世の中。パパ活すれば女子高生とキスなんて簡単にできちゃうんだろうけど、俺はやっぱり好きな相手と愛のあるキスがしたい。


 ミサキさんとアヤネさん、そして今日から俺の恋人になったリサさんと……


 俺は大勢の人の行き交う土曜お昼の駅前広場でリサさんと愛を確かめ合ったことを思い出す――


「私はお兄さんのこと、その……大好きですよ。お兄さんは私のこと、好きですか?」


 可愛い妹が照れた上目遣いでそんな風に尋ねてきたんだ。嘘偽りのない気持ちを返してあげるのが兄ってもんだろ?


「もちろん俺も好きですよ! もう、ペロペロしたいくらいに♡」


「……」


 あの時はマジで焦ったな。リサさん、本気で警察に通報しようとするんだもん。ホント、俺の妹は冗談が通じないんだから。


 で、そのあとすぐにミサキさんとアヤネさんが俺たちに合流して――


「オッサン! あーし達ともチューするぞ! チュウうううううう」


 開口一番、キスを迫られたけど、どうにか我慢してもらった。さすがに真っ昼間の広場で女子高生とキスはできない。


 けれど諦めきれない2人は――


「あーし、涼しい場所で休憩したいかもー」

「2時間ぐらい休憩できる場所、私知ってるかも。そこなら人目もないしさー」


 と、明らかに俺をラブホへ連れていこうとする経験済みな2人に対して――


「ちょっと2人ともおお!! 私のお兄さんを誘惑しないでよおお!!」


 俺を守ろうと2人を引き剥がしにかかるリサさんの対比がおかしかったな。


「ふふっ」


 俺は部屋でひとり思い出し笑いをする。


「にしても、3人か……」


 気づけば、たった1週間で女子高生の恋人が3人もできた。しかも三股ではなく3人に仲良く『シェア』されている状態なので誰かと別れる心配もない。男にとって、まさに夢のような状況である。


「んふっ……やばっ」

 

 ピロン


 ベッドへもたれながら顔をユルユルに緩ませているとスマホが鳴る。今日から俺の妹……いや、俺の彼女になったリサさんからだった。


 俺はさっそくラインを開く。


▲リサ

【今日はお兄さんのおかげでとても楽しく過ごせました】


 とてもきっちりした文章だ。ふふっ、あの子らしい。


【こちらこそ】

【リサさんと一緒に過ごせてとても楽しかったです】


リサ

【一生忘れられない日になりそうです】


 嬉しいことを言ってくれるじゃないか。


リサ

【だって】

だったので……】

【もちろん、責任を取ってくれますよね?】


「…………ん?」


 俺は目を擦ってからもう一度画面を確認してみる。そこにはやはり『ファーストキス』と書かれている。


「ファファファ、ファーストキスううううッ!?」


 エッチはまだにしても、あんなに可愛いからキスの経験はあるものだと思い込んでいた。まさか昼間のアレが初めてだったとは……。


 女の子にとってファーストキスは一生モノだと聞く。それがロマンチックのカケラもない場所で、相手が10コも年上の俺。しかもキスの味がオジさんって……。


「トラウマ級!? と、とにかく謝らないと!?」


【すみません】

【キスが初めてだと思わなくて……】

【償いきれるか分かりませんが】

【俺にできることなら何でもさせてもらいます】


リサ

【じゃあ、明日はちょうど日曜日なので】

【両親とお姉ちゃんにに来てください】


「ん?」


【えっと……挨拶っていうのは?】


リサ

【そんなの決まってるじゃないですか】

ですよ】


「…………んん?」


 俺は目を擦ってからもう一度画面を確認してみる。そこには確かに『結婚の挨拶』と書かれている。


 そっか……俺、とうとう結婚するのか……


「って、結婚んんッ!?」


 俺は慌てて返信する。


【さすがに今日付き合い始めたばかりで結婚は早い気が……】

【もちろん、ファーストキスを奪ってしまったことに責任は感じてますし、結婚がイヤだというわけではないんですけど……】


 ピロン


リサ

【お兄さん、何言ってるんですか?】

【冗談に決まってるじゃないですかー!笑】


 えっ、冗談……?


リサ

【昼間、ボーリングで私をからかったお返しです】

【ビックリしましたか?】


 なんだそういうことか……


【心臓が飛び出るかと思いました笑】


リサ

【フフフフッ】

【ドッキリ大成功ー٩(๑>∀<๑)۶!笑】


 プッ、めっちゃかわいい。


【まんまとやられました笑】


リサ

【大人なのに情けないですよ、お兄さん笑】


【確認なんですけど】

【キスが初めてだったというのは本当ですよね?】


リサ

【あれは本当です】

【オジさんの味がしたというのも本当です】


「うっ……」

 

【それはその……すみませんでした】


リサ

【別に謝る必要ないですって】

【全然嫌じゃなかったので】


【そうなんですか?】


リサ

【はい】

【だって好きな人とキスできたんですよ?】

【嬉しいに決まってるじゃないですか】

【それに私、お兄さんのが好きかもしれません】


【味!?】


リサ

【間違えました笑】

【お兄さんの匂いです】


【ビックリしましたよ笑】

【今度会った時、ペロペロされたらどうしようかと思いました笑】


リサ

【しませんって笑】

【けどその……これからデートの時は毎回キスしてもいいですか?】


【もちろん】

【たくさんしましょうね笑】


リサ

【よろしくお願いします(♡ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾】


 冗談で言ったつもりが、リサさんもわりと乗り気だ。お兄さん、困っちゃうなあー!!


リサ

【すみません】

【お姉ちゃんに呼ばれちゃいました】

【そろそろお風呂に入らないと】


【わかりました】

【俺とのキスを思い出して、のぼせないように気をつけてくださいね笑】


リサ

【のぼせちゃうかもしれません笑】


 妹とのライン、めっちゃ楽しいんだが!!


リサ

【あの、お兄さん?】

【お風呂から上がったら、またラインしてもいいですか?】


【もちろん】

【明日は日曜日ですし、少しだけ夜更かししちゃいましょうか?】


リサ

【はい!】

【お兄さん、大好きでーす♡】


 大好き、頂きましたッ!


【では、のちほど】


リサ

【お風呂、いってきます( •̀ω •́ゞ)✧】


 リサさんが最後に送ってきた敬礼ポーズのスタンプでとりあえずひと区切りがついた。


「俺の妹が可愛いすぎるってぇぇぇぇ」


 ラインの画面を見ながら顔をほころばせているとスマホが鳴る。


ミサキ

【明日、みんなでオッサン家行くから!】

【みんなでチューしまくるから!】

【覚悟しといてね♡】

【(๑˘ ³˘๑)チュ~♡】


「……え?」


 俺はスマホを手にしたまま、しばらくの間フリーズするのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る