第42話 妹ギャル、初対面の男子に告られる
「今度、アヤネに黙って2人きりで会おうね?」
「いや、それはできませ――」
小悪魔ギャルからの秘密のお誘いを断ろうとしたところで、女子トイレの入口から賑やかな話し声が聞こえてきた。
「リサもオッサンと付き合えばいいじゃん!!」
ミサキさんは相変わらず元気いっぱいである。
「いや、さすがに私は付き合えないって!?」
妹ギャルのリサさんが慌てた様子で答える。
「けど、リサもオジさんのことが気になってるんでしょ?」
巨乳ギャルのアヤネさんが聞き返す。
「えっ、それは……まあその……」
「リサもシェアしようよー! 楽しいぞ!」
「そうかもしれないけど……」
「それにオッサン、言ってたよ! 免許持ってるから、そのうちドライブデートしよっか、って! リサ、してみたいって言ってたじゃん!」
「えっ! ドライブデート! 超してみたい!」
リサさんは目を輝かせる。
「ん? オッサン、何やってんの?」
トイレから出てきて女子トークで盛り上がる3人がようやく俺に気づく。
「ははは……やあ、みんな?」
俺は軽く手を振り返す。
「ええっ!? オッサンが若い男にカツアゲされてるんですけど!?」
いや、違うからね!
戸惑う3人に対して、イケメンが爽やかに声をかける。
「よっ、アヤネ」
「えっ、なんでツバサがここに?……って、げっ!?」
アヤネさんはギャル友4人の姿を発見して、あからさまに嫌そうな顔をする。
「ちょっと、アヤネ! 親友に向かって『げっ』ってなによ! げって!」
お団子ギャルがプンスカする。
「アヤネの知り合い?」
ミサキさんが小首を傾げる。
「ここにいる8人とも私の学校の友達……。なんでこのタイミングで会うかなぁ……」
アヤネさんは眉間を押さえる。
「って、隣にいるの〇〇高校の月城ミサキじゃん――――ッ!?」
お団子ギャルがミサキさんの顔を見て仰天する。
「えっ、あーしのこと知ってるの?」
「知ってるも何も。あんた、この辺りの高校じゃあ、アヤネと同じぐらい有名人だって!?」
お団子ギャルは呆れ気味に答える。
「あーし達、有名人なんだって! やったな、アヤネ!」
ミサキさんは嬉しそうにアヤネさんへ抱きつく。
「そ……そうねぇー……」
対するアヤネさんの笑顔が引きつる。
「えっ、2人ってどういう関係!?」
ミサキさんとアヤネさんの親しげな様子を見た陽キャ軍団はもちろん不思議がる。
「ミ……ミサキとはただのお友達よ。それより、オジさん? そろそろ次へ行く時間じゃない?」
「えっ? 次?」
ポカンとする俺に対して、アヤネさんは目で合図してくる。
「あっ、ああっ! そ、そうでしたね! では、俺たちはこの返で失礼させてもらいましょうか?」
俺は一番後ろで縮こまっていたリサさんの後ろへ回り込み、肩に手を乗せる。
「ひゃあッ」
可愛らしい悲鳴が聞こえた気がしたが、俺は構わず小さな体を押して歩き始める。
「ほっ、ほら。私たちも行くよ」
アヤネさんに腕を引かれたミサキさんは、なぜかニヤニヤとニヘラ顔を浮かべている。
「もおー、アヤネってばあー。恥ずかしがんなくたっていいじゃーん! あーし達、ただの友達じゃないだろ!」
「えっ!? じゃあどういう関係なんですか!?」
お団子ギャルが2人に詰め寄る。
「ミサキ! 答えなくていい――」
「あーし達ねぇ……」
ミサキさんがアヤネさんの腕に抱きついてピースサインしながら答える。
「2人で仲良くオッサンの
「ミミ、ミサキいいいい――――っ!?」
アヤネさんの取り乱す姿は初めて見る。
「えっ……ふ、2人とも……!?」
陽キャ軍団は面食らっている。
「そお! 2人でオッサンを『シェア』してるの!」
ミサキさんはとびっきりの笑顔で答える。
「「――――シェアああ!?」」
陽キャ軍団は開いた口が塞がらない様子である。まあ、オッサンをシェアしてるJKなんて聞いたことないもんな。
「あっ、あのっ!!」
不意に正面から声をかけられる。
いつの間にか俺とリサさんの目の前に、陽キャ男子のうちのひとりが立っていた。
明るく快活そうな雰囲気で、わりと男前な短髪の男の子だ。彼は緊張気味にリサさんへ向けて手を差し出す。
「好きです!! オレと付き合ってくださいッ!!」
「え?」
「は?」
しばし沈黙の時間が流れ。
「「ええええええ――――ッ!?!?」」
突然の愛の告白に、その場にいた全員が驚きの声を上げる。
「一目惚れっす!!」
短髪男子は清々しいほどハッキリと妹ギャルへ思いを伝えたのだった。
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