1-40 男は黙って正座。それが夫婦円満の(ry

「何が困るの……? オジさん……?」

「ずいぶんと楽しそうだな……おい」


「わひゃいっ!?」


 いつの間にか目的地へ到着していた俺は、可愛い妹との同伴現場をギャルたちに目撃されてしまう。2人の顔が怖いったらない。


「正座な?」


「はい……」


 オワタ。


 俺はボウリング場で正座させられる。時を同じくして、賑やかな女性グループが隣のボックス席へやって来る。女子大生らしき4人組だ。なかなかにレベルが高い。


「私、ボウリングなんて高校以来かも……って、隣の子たち、何やってるんだろ?」


 俺たちの様子を見た4人組からクスクスと笑い声が漏れる。


「……」


 オワタ×2


 結局俺は正座したまま、腕を組んだギャル2人に10分ほど説教された。内容はあまり覚えていない。


 だって、しょうがないだろ? 組んだ腕からこぼれ落ちそうなほど盛り上がるオフショルダーのGカップを間近で見せつけられたのだ。話なんて耳に入ってくるわけがない。


「お兄さん、こっち見てくださーい」


「え?」


 リサさんに声をかけられて振り返る。


「ミサキとアヤネさんもピースしてー。いくよー」


 カシャッ


 リサさんは可愛らしくピースしながら、俺たち3人を背景にスマホで自撮りした。


「あの……今のはいったい……?」


「ああ、これですか? 記念に撮っておこうと思って。タイトルは『ボウリング場でギャルに説教される情けないお兄さん』ってところですかね〜♩ あとで学校の友達にも送〜ろっと」


「……」


 オワタ×3


「プッ……あっははははっ」

「やばっ! リサ、超面白いんだけどおー!」


 アヤネさんとミサキさんはお腹を抱えて笑い始める。うん、もういくらでも笑ってくれ!


「あー、おかしかった。リサ、あとで私とミサキにも写真ちょうだいね?」


「もちろんです」


「なんか笑ったら、どうでもよくなっちゃった。ミサキ? そろそろ勝負を始めましょうか?」


「アヤネ、やる気満々じゃん! けど、残念でしたあ! あーし、スポーツは超得意なんだよねえー」


「あら? こう見えて私も運動は得意なのよ? いい勝負ができそうね」


「じゃあ、私は、こっちのレーンで平和にボウリングを楽しんどくね?」


「え?」

「え?」


 リサさんがボーリングの球を布でゴシゴシと拭きながら何気なく口にした言葉に、2人はピタリと動きを止める。


「あの、お兄さん? 私、ボウリングってあまりやったことがないので、上手くいかなかったら投げるコツを教えてくださいね?」


 とりあえず許してもらえたらしい俺は正座を解除して立ち上がる。

 

「もちろんいいですよ! なんなら、手取り足取りしてあげましょうか!」


「ふふふっ。そこまでしてもらわなくても平気ですよー」


「ははははっ。遠慮しなくていいですよ、リサさん? 俺の超密着レッスンを特別に体験させてあげますからね!」


「ふふふっ。もおー、何言ってるんですかー、お兄さんったらー。……警察呼びますよ?」


 笑顔のリサさんはスマホに入力した110番へ人差し指をスッと向ける。


「ははははっ……ははっ……は……調子に乗ってすいませんでしたぁぁぁ」


「わかればいいんです。以後、気をつけてくださいね?」

 

 リサさんはニッコリと微笑んだ。


「ねえねえ、アヤネ? オッサンとリサ……超楽しそうなんだけど?」


「うん……。私、エッチの順番はミサキに譲ることにする。みんなで普通にボウリングを楽しみましょう」


「あっ! あーし、いいこと思いついちゃった!」


「ん? いいこと?」


「そお! エッチは2人一緒にしようよ! あーしとアヤネ、2人でオッサンのチンコしごいてやろうぜ!」


 ミサキさんは親指をグッと立てる。


「それいいかも。私とミサキに一緒に責められたら、オジさん、しばらく立てないかもね」


 立てないどころか、たぶん昇天するな。


「リサ! あーし達、勝負するの止めたからさ! みんなでボウリングするぞ!」


「えっ? そうなの?」


「せっかくだから4人で勝負しない? その方が盛り上がると思う」


「じゃあ、最下位はみんなの前でね!」


「最下位って絶対私じゃんっ!?」


 ショックを受けるリサさんの肩へ俺は優しく手を乗せる。


「まあまあ、リサさん。とりあえずやってみましょうよ。案外いい線いくかもしれませんよ?」


「そ、そうですよね!」


「その意気です! 心配しなくても、リサさんの『変顔写真』は俺のスマホにバッチリ保存してあげますからね!!」


 俺が親指を立てると、妹のクリッとした目に涙が浮かぶ。


「アヤネさあああん! お兄さんが、私をイジメでくるうううう!」


 リサさんは泣きながらGカップの胸に飛び込んだ。アヤネさんはヨシヨシとリサさんの頭を撫でる。俺も今度してもらおう。


「確かに、普通に勝負したんじゃあオジさんに有利かもね。何かハンデをつけましょうか?」


 ハンデ?


「じゃあ、オッサンは一番重いボールね!」


「一番重いって……」


 俺は近くにあった16ポンドのボールを試しに抱えてみる。


「え゛っ!? 重っ!?」


 これ、片手で投げられるのか……?


「じゃあ、試合開始ねー! あーしが始球式しまーす!」


「いえーい!」

「いえーい!」


「えっ、ちょっ、待っ――!?」


 カコンッ!!


 開始早々、ミサキさんの投げた球が快音を響かせるのだった。

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