第38話 オッサン、妹ギャルとの同伴現場を目撃される

 俺はペットボトルを両手に1本ずつ握って、愛しきギャルたちの待つ一番奥のレーンへと向かう。


 飲み物を人数分買わなかったのはもちろん、現役JKたちとペットボトルの飲み合いっこを楽しむためだ。


 いや、恋人同士なんだから普通にキスできるだろと正論を言われてしまうかもしれないが、それとこれとは話が別なのである。


 だって、してみたいじゃん――


 陽キャ限定の特別イベント『きゃぴきゃぴギャルとの回し飲み』ってやつを!!


「今日から俺も陽キャの仲間入りだな!」


 軽くスキップ混じりにボウリング場の通路を進む俺の前方に、見知ったが見える。


「お……重い……」


 黒髪ショートカットの小柄な少女がボウリングの球を両手で抱えながら、ゆっくりと慎重に歩を進めているではないか。


 危なっかしくて見てられない。

 ここはとして可愛い妹を助けてやらねば!


 俺はペットボトルを後ろポケットへ突っ込んで彼女へ声をかける。


「大丈夫か? リサちゃん?」


「ふえ?」


 振り返ろうとする彼女の小さな体にそっと寄り添う。背中から包み込むように腕を回して、球を抱える小さな両手を優しく支える。


「あとはに任せなさい」


「よかったぁ……ありがとう、お兄ちゃん。……ん? お兄ちゃん?」


 俺のミゾオチあたりに収まった妹ギャルの頭が俺の顔を見上げる。


「お兄ちゃんだよ?」


 俺がニッコリと微笑みかけると、目をまん丸にした彼女の顔がみるみる赤くなる。


「おおおお、お兄さんんんん――――ッ!?」


 リサさんの顔が湯気が出そうなほど真っ赤になった。俺は彼女へ微笑みかけながら話を続ける。


「球は俺が持って行くので、リサさんは手を離してもらって大丈夫ですよ?」


「は……はいぃぃ……」


 急にしおらしくなったリサさんは俺の腕から脱出すると、俯きながら控えめにお礼を言ってくる。


「あ……ありがとうございます」


 俺は球を片手で抱え直して、彼女の頭を撫でる。


「お礼なんて別にいりませんよ。もう知らない仲でもないですし、これからは遠慮なく、俺のことを頼ってくださいね」


 彼女は静かに頷くと俺の腕にそっと両手を添えてくる。


 俺はどこか嬉しそうに微笑むリサさんを連れて、一番奥のレーンへの歩みを再開させる。


 ホントちっちゃくて可愛らしいよなぁ、この子。他の2人と違ってガツガツしてなくて控えめだし。

 歳の離れた妹ができたみたいで、お兄ちゃん嬉しいよ。


 まあ妹といっても、この場合、義理の妹であって。もちろんにもなれるわけで……。


 義理の妹と一緒にお風呂へ入ったり、同じ布団で寝たり、愛を育んじゃったりしてなあ!


「いやあー! お兄ちゃん、困っちゃうなあー!」


「何が困るの? オジさん?」

「鼻の下伸ばして、ずいぶんと楽しそうだな……おい」


「わひゃっ――――!?」


 いつの間にか目的地へ到着していた俺は、可愛い妹との同伴を愛しのギャルたちに目撃されてしまう。


 2人は静かな怒りを向けてくる。


「正座な?」


「はい……」


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