1-38 ギャル3人に懐かれて、むほほっ

「リサもオジさんと付き合って、ついでに『初体験』も済ませたら?」


「それ、いーね!!」


 ミサキさんは両手で親指を立てて「いいね」する。


「ははは、初体験んんッ――!?」

「ははは、初体験んんッ――!?」


 俺と雨宮さんの声が見事に重なる。


「けど、オッサンのチンコがデカすぎたら、リサのアソコに入んないかもおおー」


 美人ギャルは大興奮である。


「確かに……。じゃあ、私が先にオジさんとエッチして、アソコの大きさを確かめてあげるよ」


「何言ってんの、アヤネ! オッサンと先にエッチするのは、あーしに決まってんじゃん!」


「は?」


「なに? なんか文句あんの?」


 あ、あれ……?


 ミサキさんとアヤネさんの間に険悪なムードが漂い始める。2人は勢いよく立ち上がると、笑顔のまま睨み合って火花を散らす。


「ミサキには悪いけど。オジさんはさ、私のオッパイが大好きなんだよねえ。早く生で揉みたいって、顔に書いてあるもん」


 アヤネさんは自慢のGカップをこれ見よがしに見せつける。


「何言ってんの! オッサンはね、あーしのパンツが大好きなの! スケスケTバック履いたあーしとエッチしたくてウズウズしてんだから! だってオッサン。あーしが送った動画で毎日シコってるもん!」


 ミサキさんはお返しとばかりにスマホの画面を見せつける。


「へぇ……」


 笑顔を引きつらせたアヤネさんが一度俺に目を向けたあと、ゆっくりと顔を戻す。


「まあ、いいわ……。なら、私と勝負しましょうか?」


「勝負?」


「そう。勝った方が先にオジさんとエッチできる。それでどう?」


「いいじゃん、それ! 望むところだし! オッサンのチンコは渡さないし!」


 なんだか雲行きが怪しくなってきた。ここは大人として……いや彼氏として、ちゃんと2人の仲を取り持たねば!


 俺は決意と共に立ち上がる。


「2人とも! いったん落ち着――」


「オッサンは黙ってて!!」

「オジさんは黙ってて!!」


「あ、はい……」


 俺はすぐさまソファへ腰を下ろす。男は黙って女に従う――それが夫婦円満の秘訣である。


「ケーキ食べ終わったら『ラウンドツー』で勝負だからね! アヤネ!」


「いいわよ、ミサキ! 泣いて謝っても許さないから!」


 2人のギャルは到着したケーキセットをガツガツと食べ進める。あとはもう、この子に賭けるしかない。


「あの? 雨宮さ――」


 ポフ


 俺の胸に黒髪ショートカットの頭が乗っかってくる。


「まったく……。私がお兄さんと付き合うわけないじゃないですか……。ホント迷惑です……」


 口元にケーキの食べカスをつけた雨宮さんは目を閉じてフォークを咥えたまま、ブツブツと何かを呟いている。


「あ……あのー? 雨宮さん?」


「何してるんですか、お兄さん? 手が止まってますよ。ちゃんとヨシヨシって言いながら撫でてくださいね」


 要求が増えてるんだが?

 

「よ……よしよーし?」

 

「ンフフフっ♩ あと、私のことは『リサ』って呼んでくれたらいいですよ? ほら、言ってみてください」


「え? えーっとじゃあ……リサさん?」


「ンフフフフフー♩」


 リサさんはご機嫌な様子でケーキを堪能していく。今なら少しぐらい食べさせてくれるかもしれない。


「あのー? 俺もケーキを1つぐらい食べたいなー? なーんて」


「ンフフフフっ♩ イヤでーす♩」


 くそう……。


 結局俺が胃袋に収めたのは1皿分のライスだけだったが、お会計は1万を超えた。


 俺は泣く泣く会計を済ませると、セクハラ店長の恨めしい視線に見送られて、3人のギャルと共に店をあとにするのだった。


「はぁ……。女の子とのデートって、やっぱ金がかかるな……」


 俺は深い溜め息をついてから、前を歩くミサキさんとアヤネさんへ目を向ける。2人ともあれからずっといがみ合ったままだ。


 まあ、あれであの2人と別れずに済んだと思えば安いものだ。そして俺の隣にはもうひとり。


「フンフフーン♩」


 なぜか俺と腕を組んでいるリサさんは鼻歌混じりに上機嫌だ。


 ここまで懐かれる要素などあっただろうかと不思議に思いつつ、マスコットのように愛らしい妹ギャルのご機嫌な様子を愛でていると、前方から怒鳴り声が飛んでくる。


「オッサン!! なに鼻の下伸ばしてんの!!」


「うひっ!?」


 前を歩いていたギャル2人が怖い顔をしながら戻ってきた。


「ってか、なんでリサがオッサンと腕組んでんの!」


「うえっ!? こ、これは……」


「オジさんとは付き合わない、とか言ってなかった?」


「こ、これはその……。ま……迷子にならないためだよ? ほら、私、小さいからさ。人混みで逸れちゃわないようにだよ?」


 そんなに混んでない。


「なるほどね。じゃあ、私はこっち」


 アヤネさんが反対側の腕を組む。


「ああー!! アヤネ、ズルい!! あーしの場所が無いじゃん!!」


「早い者勝ちだって」


 アヤネさんは勝ち誇る。


「もおおー! じゃあ、あーしはここー!!」


 ギュッ


 ミサキさんが俺の胴体に抱きついてティーシャツに顔をうずめる。


「あーしねぇぇ、オッサンの匂い、超好きいぃぃ」


「あっ、ミサキ、ズルい! 私も嗅ぎたい!」


「ちょっとミサキ! それじゃあ歩けないでしょ!」


「ああぁぁ、幸せだなぁ……」


 3人の女子高生の甘い匂いがブレンドされて、俺の脳を溶かしていくぅぅぅぅぅぅ。


 結局俺たち4人は通常なら10分ほどの行程を、じっくり20分以上の時間をかけて、複合アミューズメント施設『ラウンドツー』へと向かったのだった。


 ◆


 ボウリング場の一番端のレーンで、ひとり荷物番をしている俺は椅子に座りながら2つ隣のレーンを眺める。今まさにお姉さんが投球しようとしている。


「あ、惜しい」


 お姉さんはナイスショットとはいかなかったものの、女子3人で和気あいあいと楽しそうだ。それにしても……


「でっか」

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