第30話 オッサン、ちっちゃくて可愛らしい妹ギャルと出会う

「あっ、オッサン、こっちこっちいーー!!」


 駅前に到着すると、いつもの待ち合わせ場所より少し離れた建物の陰から笑顔のミサキさんが手を振ってくる。


 うひょおおおお! 私服姿も超可愛いいいい!

 

 オシャレなブラウスに細身のジーンズスタイル。髪の毛を後ろでひとまとめにしており、スタイルの良さがいつも以上にほとばしっている。


「すいません、遅くなってしまって……」


「全然大丈夫だし! 今日は友達のも一緒だったから!」


 ミサキさんは隣に立つ小柄な女の子に手を向ける。


「ども」


 黒髪ショートカットで見た目は完全に中学生の美少女が軽く会釈する。


 ボーイッシュな出で立ちながら、そこはやはりミサキさんの親友。サラサラの黒髪には青色のメッシュが入っているし、耳には控えめながらピアスが輝いている。


 明るく元気なミサキさんとは対照的に、大人しそうな少女はとても小柄で小動物のような可愛らしさがある。


 初対面ながら、このまま抱っこして家へ持って帰りたい衝動に駆られてしまう。


 黒髪の美少女は小さな手を差し出してくる。


「初めまして、お兄さん。ミサキの親友の『雨宮リサ』です」


 お兄さん……だって……?


 なんて心地よい響きなんだ。

 今までオッサンとかオジさんだったから、そう呼ばれただけで好きになってしまいそうだ。


「どうも、初めまして」


 今日からキミのです!


 俺は『妹ギャル』と握手を交わしてからミサキさんに尋ねる。


「えっと……どうして、いもう……お友達がここに……?」


「リサがね、どうしても一緒に行きたいって言うから」


「はぁ……一緒に……?」


 改めてリサさんを見ると、俺と目が合った彼女が笑いを堪えるように『プフッ』と吹き出す。


 え? 俺の顔、そんなにおかしい?

 

「あっ、すいません。その……私のことは気にしないでください。今日はただのなので」


「付き添い?」


「はい。どうしてもで見たくて」


「何をですか?」


「それはもちろんに決まってるじゃないですか……ンプフフフフフッ」


 妹ギャルは両手を口に押し当てて必死に笑いを堪えている。


「……」


 ――これが3人目のギャル『雨宮リサ』との出会いである。


「と、とりあえず行きましょうか?」


 俺はファミレスへ向けて先頭を歩き始める。


 リサさんは修羅場を期待しているようだが、そんなことにはならない。


 なぜなら俺の『最高の彼女』がすべてを丸く収めてくれるのだから。


「フフフフフフッ――」


「ねえ、ミサキ……? お兄さん、なんかひとりで笑ってるんだけど……?」


 背中からヒソヒソ声が聞こえてくる。


「ん? ああ。オッサン、いつもこんな感じだから気にしなくていいよ」


「えっ……そ、そうなの……?」


「オッサン、面白いでしょ!」


「ソ……ソウダネ……」


 リサさんは棒読みだった。

 俺は早く『ダサい彼氏』を卒業しないとな。


 

 とびっきり可愛い2人のギャルを引き連れてファミレスの前へ到着した俺は、明らかに鼻息の荒い美人ギャルに声をかける。


「あの、ミサキさん。他のお客さんもいるので、なるべく静かにお願いしますね?」


「わかってるし! あのにガツンと言ってやるからね!」


 ミサキさんは腕をブンブン回し始める。


「あの? ミサキさん?」


 不安だ……。


 2人を伴って店へ入ると店員が声を掛けてくる。


 知り合いが中にいると伝え、巨乳ギャルことアヤネさんの待つテーブルへと向かう。


「ねえ、ミサキ。さっきから『デカ乳』って言ってるけど。その人、そんなに大きいの?」


「んー。あーしのぐらいかな?」


「おお、それはデカいね」

 

 ――なぬ?


「ん? どうしたの、オッサン?」


「あっ、いえっ」


 いかん。

 俺としたことが、思わず振り返ってしまった。


「確か、ミサキのお母さんってGカップだよね?」


「違うし! Hカップだし!」


 えええええ、Hカップ――――ッ!?


「ん? どうしたの、オッサン?」


「あっ、いえっ」


 また振り返ってしまったではないか!

 落ち着け、俺!


 しかし、アヤネママに続いてミサキママもHカップとはな……。これは近いうちにミサキさんのお家にもご挨拶に伺わないとな、うん。


 そうこうしている内にアヤネさんのいるテーブルへと辿り着く。


「お待たせしました、アヤ――」


『デカ乳女、オッパイ見えてんじゃんッ――――!?』


 ギャルの元気いっぱいな声が、お昼の平和なファミレスに轟く。


 ミミミ、ミサキさあああああん――――ッ!?


 ギャルのとんでも発言にプチパニックな俺がアワアワと狼狽えることしかできない一方、アヤネさんとリサさんは余裕の苦笑いを浮かべる。


「いや、谷間が見えてるだけだから」


「ミサキ、声がデカいよ……」


 もちろん居合わせた客(主に男性)の視線が一斉に集まり、いたたまれなくなった俺は堪らずヤツを呼び出す。


「や、山本おおおおおおお――――っ!?」


 早くも『お助けカード』を使うハメになってしまった。まだ席にすら着いていないのに残る2枚……。急に不安になってきた。

 

 美人ギャル、巨乳ギャル、妹ギャル、そして俺――4人が一堂に会するのはこれが初めてである。


 楽しい楽しいランチタイムが始まる。


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