1-31 オッサン、ちっちゃくて可愛らしい妹ギャルと出会う

「あっ、オッサン、こっちこっちいー!!」


 駅前に到着すると、いつもの待ち合わせ場所より少し離れた建物の陰から笑顔のミサキさんが手を振ってくる。


 うひょおおおお! 私服姿も超可愛いいいい!

 

 オシャレな夏ブラウスに細身のジーンズスタイル。髪の毛を後ろでひとまとめにしているからか、いつも以上に頭が小さく見える。まるでティーン雑誌のモデルだ。やばっ。


「すみません、少し遅れてしまって」


 山本のウザ絡みのせいで。


「全然大丈夫だし! と話してたから!」


「ああ、お友達の」


「ども」


 ミサキさんの隣に立つ小柄な女の子が軽く会釈する。黒髪ショートカットにボーイッシュな出で立ちで、明るく元気なミサキさんとは対照的に大人しそうな子だ。


 ただ、ミサキさんの親友というだけあって、サラサラの黒髪には青色のメッシュが入っているし、耳には控えめながらピアスが輝いている。


 くりっとした大きな瞳が印象的な美少女で、小動物のような可愛らしさがある。初対面ながら、このまま抱っこして家へ持って帰りたくなる。ただまあ……


 見た目は完全に中学生なので、確実にアウトだけどな。


 さっき、アヤネさんの豊かすぎるバストを間近で見たばかりだからか、とてもじゃないが同じ高校生とは思えな――


「あの? 私のに何か……?」


 ヒュオオ


 お友達の冷たい笑顔はおおよそ高校生とは思えないほどの恐ろしさである。

 

「あ……いえ……」


 怖っわ。


 怖い笑顔のお友達は小さな手を差し出してくる。


「初めまして、お兄さん。ミサキの親友の『雨宮リサ』です」


 お兄さん?


 悪くない響きだ。オッサンとかオジさんと比べて何倍も心地いい。


「どうも、初めまして!」


 今日からキミのになる名雲――


「痛い痛い痛いッッ!?」


 笑顔の雨宮さんが握手した俺の手を思いきり握り返してくる。


「ん? どったの? オッサン?」


「あ、雨宮さんがっ」


「どうもしてませんよね? お兄さん?」


 笑顔の圧がすごい。


「え、ええ……」


 俺の妹、怖っわ。


 雨宮さんと固い握手を交わし終えた俺はミサキさんに尋ねる。


「ところでその……どうして、いもう……雨宮さんがここに?」


「リサがね、どうしても一緒に行きたいって言うから」


「一緒に……?」


 俺と目が合った雨宮さんが笑いを堪えるように「プフッ」と吹き出す。


 え? 俺の顔、そんなに面白い?

 

「あ、すいません、つい……。私のことは気にしないでくださいね。今日はただのですので」


「付き添い?」


「はい。どうしてもで見たくて」


「何をですか?」


「それはもちろん、に決まってるじゃないですか! ンプフフフフフッ……」


 雨宮さんは両手を口に押し当てて笑いを堪えるのに必死だ。


「……」


 ――これが3人目のギャル『雨宮リサ』との出会いである。


「と、とりあえず行きましょうか?」


 俺は笑顔を引きつらせながら2人を連れて歩き始める。


 雨宮さんは修羅場を期待しているようだが、そんなことにはならない。なぜなら俺の『最高の彼女』がすべてを丸く収めてくれるのだから。


「フフフフフフッ」


「ねえ、ミサキ? お兄さん、ひとりで笑ってるんだけど?」


 背中からヒソヒソ話が聞こえてくる。


「ん? ああ、あれ? オッサン、いつもあんな感じだから気にしなくていいよ」


「えっ、そうなの……?」


「オッサン、面白いでしょ!」


「ソ……ソウダネ……」


 雨宮さんは棒読みである。


「……」


 俺は早く『ダサい彼氏』を卒業しないとな。


 俺とミサキさんに緊急参戦した『妹ギャル』を連れてダニーズへと向かう。


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