1-26 ギャルはオッサンと遠回りして帰りたい

【ファミレスの前で待ってます】


「送信、っと」


 美人ギャルことミサキさんがアルバイトをしているファミレスの前に到着した俺は彼女宛にラインを送る。


 スマホをポケットへしまい。手首にぶら下げていたビニール袋から『カラアゲさん』を取り出す。


 彼女のために買ったコンビニ唐揚げだが、匂いを嗅いでいるうちに俺も欲しくなってきた。ひとつだけつまませてもらおう。


 唐揚げを1個つまんで口へ持っていこうとしたところで店の自動ドアが開き、誰かが飛び出してきた。


「おっさあああああん!! チュうううううう!!」


 口を尖らせた制服姿の美人ギャルが俺へ向かってダイブしてくる。


「ちょっ――――!?」


 俺はとっさに手にした唐揚げで唇はガードしたものの、そのままギャルに押し倒されてしまう。


「チュうううう……うう? オッサン、なんか唐揚げクサいし……って、また唐揚げじゃんッ!?」


 ホント、この子は見ていて飽きないなぁ。


 それにしても危なかった。今の神状態でこの子とキスなんかしてみろ。お持ち帰りは不可避。時間的にそのままお泊まりコースになってしまう。高校生相手にそんな行き当たりばったりなことはできない。ご両親が心配する。


「お疲れ様です、ミサキさん」


 俺は体に抱きつくギャルの頭を撫でながら彼女の口元へ唐揚げを近づける。


「お腹が空いてるかなと思って買ってきました」


 ギャルは不服そうにしながらも唐揚げを口に入れてモグモグし始める。


「そりゃあ、お腹は空いてるよ。バイト頑張ったし。けど、オッサンとチューしたい! なんでさせてくれないの!」


 1日会わなかったせいか、いつにも増して気持ちが前面に出ている。


「い、今キスしたら2人の初めてのキスが唐揚げ味になっちゃいますよ?」


「ああ、確かに」


「だから、明日……そう! 明日しましょう!」


「え? 明日? 明日会ってくれるの?」

 

「もちろんです。明日俺と休日デートを楽しむってのはどうですか?」


 俺の提案にギャルは目を輝かせる。


「休日デート! 行きたい! あっ……けど、お昼ぐらいからでいい?」

 

「構いませんけど。もしかして予定がありましたか?」


「初めての私服デートだよ! 気合い入れて行きたいじゃん!」


「ふふっ、わかりました。とりあえず、立ち上がりましょうか?」


 押し倒されたままの俺はギャルの頭を撫でながらお願いするが、彼女は俺の体に頬ずりし始める。


「んふふぅぅ、そうするぅぅ」


「あの……ミサキさん?」


「いいじゃん! ちょっとぐらい! 誰もいないんだし! って、んん? クンクン」


 ミサキさんが鼻をヒクヒクさせる。


「どうかしましたか?」


「う、ううん……なんでもなーい」


 なぜか急に大人しくなったミサキさんは馬乗り状態の俺の体からゆっくりと下りる。ようやく解放された俺は立ち上がり、女の子座りする彼女へ手を差し伸べる。


「行きましょうか?」


「疲れたから歩けないかもぉー。だから、おんぶしてぇー」


 彼女は子供のように両手を差し出してくる。


「おんぶ!?」


「そお、おんぶうぅー」


 激カワギャルに園児のようにおねだりされて断れるはずもなく。


「ど、どうぞ……」


 俺が後ろを向いて腰を落とすと、すぐに彼女が背中へ乗ってくる。


「オッサン、大好き♡」


 ミサキさんは俺に甘えるように背中から頬ずりしてくる。


「じゃあ、行きますよ」


「レッツゴー!!」


 ミサキさんの太ももを両手で抱えて立ち上がり、駅へ向かって歩き始める。


 女子高生の生足は驚くほど滑らかで、見た目は細いのにちゃんとムチムチしていて非常に触り心地がいい。


「ちょっと、オッサン。太ももの裏がくすぐったいんだけど?」


「あ、すみません」


 無意識にギャルの太ももをスリスリとさすってしまった。いや、うっかりうっかり。


 生足が最高な一方で、背中に当たっているフワフワな胸に以前ほどのトキメキがない。圧倒的ボリューム不足に物足りなさを感じてしまっている自分がいる。由々しき事態だ。男たるもの、オッパイへのリスペクトは忘れてはならない。


「……んん? クンクン」


 俺が全身全霊をもって背中に当たるミサキっぱい(ミサキさんのおっぱい)を感じていると、彼女が首元の匂いを嗅いでくる。


「すみません、汗臭かったですか?」


「えっ!? そ、そんなことないよ!? あっ、そこ左だし!」


「え? 駅はここをまっすぐですよ?」


「今日はオッサンと、遠回りして帰りたい気分なのぉぉ!」


 ミサキさんは俺の首にギュッと抱きつく。


「ふふっ、わかりました。疲れたら休憩してもいいですか?」

 

「特別に許可したげる! はい、オッサン、口開けて? カラアゲさんあげるー」


「ありがとうございます」


 俺は彼女と一緒に冷めてしまった唐揚げを頬張りながら、できるだけ遠回りをして駅へ向かうのだった。


 このときの俺はまだ気づいていない。


 自分がすでにを犯してしまっていることに――

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