1-24 巨乳ギャルの汗だくブ◯ジャーって、マジ?

「暑っつうー」


 仕事帰り。冷房のガンガン効いた電車の車両からホームへ降り立った俺は自然とそんな言葉を口にしてしまう。夕方だというのに空気がムッとしている。


 それもそのはず。まだ7月中旬だというのに今日は猛暑日だったらしい。外に立っているだけで汗が出てくる。早く屋内へ避難したい。


 俺は改札へ向かって歩き出す。今朝、あれほど重たかった足取りは羽が生えたように軽やかだ。


 まあ当然と言えば当然か。今日という日を無事に乗り越えられることが確定しているのだ。神に感謝しなけらばならない。


 奇跡が起きたのは昼休み――


 ギャル2人との二股&ダブルブッキングという、とてつもない失態を冒した俺が昼食も取らずにデスクでひとり頭を抱えているとスマホが鳴った。


 ミサキさんからの連絡だった。


【オッサンごめん!】

【急にバイトの代わり頼まれちゃってさー】

【6時の待ち合わせに行けなくなったの!】

【8時までだから終わるころ迎えに来てほしいんだけど……いい?】


 そのメッセージを見た瞬間、俺、会社のオフィスでちょっと叫んじゃったよ。


 といっても最悪の事態を免れたというだけで、問題の根本的な解決にはなっていない。まあ、先のことを考えるのは明日からにしよう。


「今日は頭空っぽにしてギャルと戯れよ〜っと」


 階段を降り切って駅前に到着した俺は辺りを見回す。アヤネさんの姿はまだない。


 俺はハンカチで額の汗を拭いながらスマホに目を向ける。


 ミサキさんと知り合ってから今日でちょうど1週間か。俺たち、すでに付き合ってるらしいし、明日の土曜日だ。休日デートにでも誘ってみようかな。日曜日はもちろんアヤネさんと。


「俺、最低のクズじゃん!」


「何の話?」


「わひゃいっ――!?」


 真横から急に声をかけられて、危うくスマホを落としそうになる。


「オジさん、ビックリしすぎだって」


 いつの間にか隣に立っていたアヤネさんが楽しそうに微笑む。


「ごめんね、時間ギリギリになって。さっきまでモールで友達と一緒でさ。ちょっと話しすぎちゃった」


「大丈夫ですよ。俺もさっき到着したところなので」


「さっそくで悪いんだけど、忘れないうちに渡しとくね」


 アヤネさんはそう言って、学生鞄からハンバーガーが入っていそうな紙袋を取り出す。


「はい、これ。オジさんへのプレゼント。その……大切に使ってね」


 アヤネさんは少し照れくさそうに紙袋を手渡してくる。ハンカチにしてはやや厚みがある。


「ありがとうございます。けど、すみません。わざわざ用意してもらって……」


「気にしなくていいよ。家にあった物だし。けど、オジさんの好みが分からなかったからさ。とりあえず私のお気に入りのヤツにしといたんだけど……」


 アヤネさんは少し不安そうな表情をする。


「中を見てみてもいいですか?」


「うん、いいよ。あっ……けど、紙袋からは出さないでね。さすがにから」


「ふふっ、わかりました」


 アヤネさんは可愛いなぁ。贈り物のハンカチくらい周りに見られても平気だろうに。


 紙袋の入口を広げて中を覗いてみると、なぜかジップ付きのビニール袋が見えた。


「ん?」

 

 ビニール袋はこんもりと膨らんでおり、薄紫色のキレイなレース生地がわずかに見える。


 え? 女性用?


 気になった俺は紙袋の中でビニール袋を横向きにして、その正体を確かめてみる。


「えっ……」


 そこに現れたのは美しい花の刺繍が施されたお椀型の布地だった。しかも相当デカい。カップ部分なんて片手で収まりそうにない。


「あ、あのぉ……アヤネさん? これって……」


「私の


 やっぱり!?


「どどど、どうして!?」


「どうしてって、欲しいって言ったのオジさんでしょ?」


 俺が欲しいって!?


「あっ、もしかして昨日のラインの!? えっ、メッセージはすぐに消しましたよ!?」


 焦る俺に対して巨乳ギャルは呆れ顔である。


「一瞬だったけど、あんなの画面見てたら分かるから」


「なるほど……」


「欲しかったんでしょ? 私のブラ」


「それは……まあ……」


 俺はもう一度紙袋を覗き込む。これが現役女子高生の生のブラジャー。


「ごくり……」

 

 生唾を飲み込む俺の耳元にアヤネさんが顔を近づけてくる。


「今日さ、暑いなか体育があったんだよね。だからオッパイの汗がたっぷり染みついてると思う」


「オッパイの汗……」


 マジ?

 

 俺はアヤネさんに目で尋ねる。アヤネさんはウンウンと頷いたあと、再び耳打ちしてくる。


「それ、体操服から着替えたときのだから♡」


 脱ぎたてッッッ!?


「汗臭かったらゴメンね」


「いや、それがいいんですよ」


「オジさん、変態じゃん」


 ギャルはクスクスと笑いながら顔を離した。


「私からのプレゼント、喜んでもらえた?」


「はい、とっても」


「ならよかった」


 アヤネさんは満足そうな顔をして俺の腕に抱きついてくる。


「それ、好きに使ってくれていいからね」


「好きに……」


「けど、直接ぶっかけちゃダメだからね。カピカピになっちゃうから」


「それは気をつけないといけませんね」


「ちなみに私……Gカップ」


「ジジジ、Gカップッ!?」


「オジさん、声デカすぎ」


「あてっ!?」


 Gカップギャルに軽くチョップされた。


「プレゼントも無事に渡せたことだし、これからどこ行こっか? 明日はオジさんもお休みでしょ? 夜の10時ぐらいまで一緒にいてもいい?」

 

「あっ、すいません……。その……今日は8時前までしか一緒にいられなくて……」


 アヤネさんは俺の顔をじっと見つめてくる。


と会うの?」


「うぐっ……」


 す、鋭い。


「はい……会います……。すみません……」


「別に謝らなくてもいいって。私、そこまで気にしてないから」


「えっ、そうなんですか!?」


「だって、オジさん。私のこと、遊びで付き合ってるわけじゃないでしょ?」


「それはもちろん!」


「ならいいよ。私、あの子のことは別に嫌いじゃないし」


 え? アヤネさんって、聖母?


「じゃあ、時間もないし行こっか。とりあえずスタバ行っていい? 新作が飲みたい。そのあとは適当にモールをブラブラしよっか?」


「それ、さっき言ってたと会いませんか?」


「別にいいじゃん。会ったら会ったでオジさんのこと紹介するだけだし」


「えぇぇ……だってイケメンのツバサくんと比べられるんですよね? ヤダなぁ……」


「自信持ちなって。私の彼氏でしょ」


 気合い一発、背中をバシッと叩かれた俺はアヤネさんと腕を組みながら駅に併設されたショッピングモールへ向かうのだった。

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