第21話 オッサン、巨乳ギャルを自分のモノだと言い張る

「ダサい男と付き合うなんて、お前もになったよな!」

 

 イケメン幼馴染は吐き捨てるようにアヤネさんにそう言った。


「おい……」


 今の言葉は聞き捨てならない。


「なんだよ、オッサン」


 イケメンが睨みを利かせてくるが俺は怯まずに続ける。

 

「彼女に謝れ」


「は?」


「アヤネさんに謝れって言ったんだ!」


 俺は勢いよく立ち上がる。


「俺がダサいのは認める。キミみたいにイケメンでもなければ背もそんなに高くないもんな。……けど、彼女は違う」


 俺は手のひらをベンチへ向ける。


「彼女は……アヤネは最高の女だ! キミもそう思ってるから何度も告白してるんだろ?」


「そ、そうだよっ!」


 イケメンは怯む。


「なら、文句言ってないで自分を磨け! 俺から彼女を奪うつもりで来い! 他の誰にも渡さずに待ってるから」


 俺がイケメンの肩を軽く叩くと、イケメンは表情を和らげる。


「なんだよ……オッサンのくせに、カッコいいこと言うじゃん」


だ」


 俺はアヤネさんに謝るようイケメンに目配せをする。イケメンはバツが悪そうにしながらも彼女の前に立つ。


「あのさ、アヤネ。その……ごめんな。ダサいなんて言って」


「別に大丈夫……」


「お前、いい人見つけたな」


 アヤネさんは俯いて静かに頷く。


「じゃあ、また学校で」


「…………うん」


 アヤネさんは俯きながら小さく答えた。


 イケメンは彼女へ温かい目を向けたあと、俺に向かって握手を求めてくる。


「アイツのことよろしくお願いしますね、オジ……お兄さん!」


「おう! 任せとけ!」


 俺が差し出された手を握り返すと、イケメンは不敵に微笑んでみせる。


「まあ、少しの間だけですけどね。すぐに迎えに来ますから!」


「簡単に渡すつもりはないからな、ツバサくん!」


 俺はイケメン幼馴染と熱い握手を交わしてから、彼が友達の元へ戻るのを見送った。


「あのオジさん、誰だったの?」

「アヤネの新しい彼氏だってさ」

「うっそ、マジ!? 久しぶりの彼氏がアレ!?」

「おい、アレって言うなよ。失礼だろ。お兄さんだ!」

「じゃあ、学校のヤツらショックだろうなー。夏休み前だからって、狙ってたヤツが山のようにいたから。……ってか、ツバサが一番ショックか」

「まあな。けど、俺は諦めてないぞ。アヤネに相応しい男になって、もう1度告白するつもりだ」

「いやっ、お前、今でも十分すぎるほど男前だからな!?」

「マジ、それな!」


 ツバサくんは最後にもう一度爽やかな笑顔で俺に手を振ってくる。


「また会いましょうね! お兄さん!」


 彼に手を振り返す俺の額からタラリと汗が流れる。

 

 ――どうしよう……。なんであのイケメンと仲良くなってるのか全然覚えてない……。


 どうやら俺は興奮してハイになっていたらしい。今、ようやく我に返った。


 彼と話をするためにベンチから立ち上がったあとの記憶が曖昧だ。自分が何を言ったかすら定かではない。


 アヤネさんは魅力的な女の子だよー――みたいなことを言った気はする。


「……」


 ま……まあいいか! 丸く収まったみたいだし!


 それにしても、アヤネさんは格好いいな。あんな爽やか超イケメンを3回も振っちゃうんだもんな。


 アヤネさんと付き合えるんだって話だよなー。


 俺は軽く笑みを浮かべながら元いたベンチに腰掛ける。


「……ん?」


 隣に座るアヤネさんは静かに俯いて何も喋らない。どこか元気がないようにも見える。


 長い銀髪で顔が隠れてしまっており、その表情は読み取れない。


「あの、アヤネさん……? どうかしましたか……?」


 指先で彼女の髪の毛をそっと払おうとしたところ、彼女はそれを妨げるように俺の腕へ顔をうずめてしまう。


「ごめん、オジさん……今、顔合わせらんないかも……顔真っ赤だし、心臓バクバクかも」


 アヤネさんは俺の袖をギュッと掴む。

 

「えっ、大丈夫ですか!?」


 心配になった俺は彼女の顔を覗き込む。


「見ないでよ! 大丈夫じゃないって言ってるでしょ! 誰のせいでこうなったと思ってんの!」


「す、すいません!?」


 俺は慌てて顔を正面に戻す。


「なんで謝るの?」


「いや、その……怒ってますよね……」


「怒ってないって」


 じゃあ、なぜ口調がキツいんだ?


「……ねえ」


「は、はい!?」


「私がいいって言うまで頭ヨシヨシして」


「はい……わかりました……」


 困ったな。顔が見えないから、どういう心情なのかまったく読み取れない。


 そのまましばらくベンチで過ごした俺たちの耳に入ってきたのは夜8時を告げる店内アナウンスだった。


「あの、アヤネさん? 今日はもう帰りましょうか?」


「…………うん」


「駅まで送りますね」


「…………うん」


 明らかにしおらしくなった彼女は俺の手を握ると少し後ろを歩き始める。


 そのまま駅の改札へ到着するまでの間、俺が話しかけても彼女は『うん』と答えるだけだった。


「ホームまで一緒に降りましょうか?」


「いいよ、ここで」


 アヤネさんは名残惜しそうに手を離す。


「またね、オジさん。あとでラインする」


 彼女はスマホのストラップを可愛らしく揺らしてみせる。


「はい、また明日」


 俺はその姿に見惚れながら小さく手を振る。


 嬉しそうに微笑みながら手を振り返す彼女を見送り、余韻に浸りながらスマホを取り出す。


 いつの間にかメッセージが届いていた。俺は歩きながら確認する。


ミサキ

【今日オッサンと会えなかった分、イチャイチャするんだからね! 覚悟しとけよ!】


「ん? 明日……?」


 俺は立ち止まって首をひねる。


「ああ。そういえばさっき、アヤネさんも明日って…………明日あああああ――――ッ!?」


 アラサーサラリーマンの絶叫が駅の改札前に響き渡る。


「や……やっちまった……」


 俺は頭を抱える。


 ――人生初のダブルブッキングである。




――――――――――――――――――

(あとがき)

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