第19話 巨乳ギャルはオジさんとガチのデートがしたい(後編)

「んー、どこがいいかなぁー……」

 

 ふっくらとした唇で棒付きキャンディーをチュパチュパと舐める巨乳ギャルは、スマホと睨めっこしながら俺と過ごすデート先を探している。


「あの、ひとついいですか?」


「ん? オジさん、どっか行きたい所あるの?」


「いえ、その……俺とこうして2人きりで会っても平気なんですか? その……彼氏に悪いんじゃあ……」


 言いにくそうにする俺に対して巨乳ギャルは呆れ顔を向けてくる。

 

「いないって。いたらオジさんとデートしてないから。私、その辺の線引きはキッチリするタイプだし」


「な、なるほど……」


「ここ半年ぐらいは彼氏いないかも。学校の男子にはよく告られるけどね。たまに大学生とかにも」


 すごっ!?


「モテモテですね」


「まあね」


 棒付きキャンディーを咥えた巨乳ギャルがピースサインをして指先をチョイチョイさせる。仕草が可愛すぎるんだが。


「オジさん、光栄に思いなよ。モテモテの私とデートできるんだからさ……なーんてね」


 冗談めかして楽しそうに笑う彼女の姿に思わずドキッとしてしまう。


 い……いかん。俺にはすでにミサキさんというギャルカワ(ギャルでカワイイ)女の子がいるのに、このギャルにも惹かれてしまっている。

 ……というか今、タダって言った?


「えっ、お金はいらないんですか?」


「いらないって。パパ活じゃないんだからさ。私、普通にデートがしたいだけだし」


「はぁ……?」


「え? なんでそんな意外そうな顔するの?」


「いや、その……てっきりの身代金を要求されるものだとばかり……」


「ああ、これのこと?」


 巨乳ギャルは学生鞄から緑色のストラップを取り出す。


「はい、返してあげる」


「え? いいんですか?」


 俺はストラップを受け取る。


「キッカケが欲しかっただけだから、オジさんとデートするための。つまりアレだ。だ」


「――――逆ナンッ!?」


 生まれて初めてされたぞ!? 女の子からの逆ナンなんて!?


「どどど、どうして俺なんかを!?」


 もうパニックである。


「プッ、オジさん慌てすぎだってー」


 巨乳ギャルは楽しそうに笑うと夕焼け空を見つめながら話し始める。


「私さ。昔から、周りの子の持ち物がすごく魅力的に見えるんだよね。クレヨンとか髪留めとかペンとか服とかさ……。今回はそれがだった」


「クレヨンと一緒!?」


「例えだってば。オジさん、さっきから面白い」


 彼女はおかしそうに笑いながら続ける。


「あんな可愛い子がすごく楽しそうにしてるの見たら、オジさんのことが気になっちゃってさ。向かいの席からずっと観察してて、悪い人には見えなかったから思い切って声掛けたの。そしたら、あの子が彼女じゃないって言うし。ならオジさんとデートしてみたいなーって思って」


「それでたまたま目に入ったストラップを人質に?」


「そう。あの子とお揃いだったからこれ使えるなと思って……あっ、そうだ!」


 巨乳ギャルは何かを思いついたような顔をすると突然俺の手を引っ張る。


「わっ!? あのっ!?」


「私、行きたい場所ができたかも!」


 居ても立っても居られない様子の彼女は棒付きキャンディーを口に含んでモゴモゴさせてから、チュパッと取り出す。


「オジさんはこれでも舐めて、黙って私についてきてね♡」


 巨乳ギャルは小悪魔っぽく微笑むと、あろうことか舐めたてホヤホヤの唾液たっぷりキャンディーを俺の口へ突っ込んできた。


「もがっ――――!?」


「あとさ、私の名前は『藤咲アヤネ』っていうの。気軽にアヤネって呼んでくれたらいいから」


 巨乳ギャルはそう告げると前を向いて俺を引っ張るようにグングン歩いて行く。


 俺は彼女のゆるふわな巻き髪をボーッと見つめながら思った。


 ――ギャルって体の匂いだけじゃなくて、唾液も甘いんだなぁ。


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