1-20改 巨乳ギャルはオジさんを逆ナンしたい

「んー、どこでデートしようかなー」

 

 巨乳ギャルは棒付きキャンディーを舐めながら楽しげにスマホを操作している。


「あの、ひとついいですか?」


「ん? オジさん、どこか行きたい場所でもある?」


「いえ、その……俺とこうして2人きりで会っても平気なのかなと……。その……彼氏さんに悪いんじゃあ……」


 俺の歯切れの悪い言葉を聞いた巨乳ギャルは呆れ顔を向けてくる。

 

「いや、いないって。彼氏いたらオジさんとデートしてないから。私、その辺の線引きはキッチリするタイプだし」


「な、なるほど……」


「ここ半年ぐらいはいないかも。学校の男子にはよく告られるけどね。たまに大学生とかにも」


 すごっ。


「モテモテですね」


「まあね」


 棒付きキャンディーを咥えた巨乳ギャルは自慢げにピースサインした指をチョキチョキさせる。仕草が可愛すぎるんだが?


「オジさん、もっと喜ばないと。モテモテの私とデートできるんだからさ。なーんてね♩」


 冗談めかして楽しそうに微笑む彼女の姿に思わずドキッとしてしまう。


 い……いかんっ! この子にどんどん惹かれてしまっているっ! 俺にはすでにミサキさんという運命の女性が……。っていうか、今「タダ」って言った?


「えっ、お金はいらないんですか?」


「いや、いらないって」


 めちゃくちゃ呆れられる。


「パパ活じゃないんだからさ。私、普通にデートがしたいだけだし」


「はぁ……?」


「え? なんでそんな意外そうな顔するの?」


「いや、その……って言うくらいだから、てっきり身代金でも要求されるのかなと……」


「ああ、これのこと?」


 巨乳ギャルは学生鞄から黒色のストラップを取り出す。


「はい、返してあげる」


「え? いいんですか?」


「いいもなにも、それはオジさんの物でしょ? 私はキッカケを作りたかっただけだから」


「キッカケ、ですか?」


「そっ。オジさんとデートするためのキッカケをね。つまりアレだ。だ」


「――――逆ナンッ!?」


 生まれて初めてされたぞ。女の子からの逆ナンなんて。


「マジですか!?」


「マジです」


 巨乳ギャルはきりりと答える。可愛い。


「ちなみに、俺のどこが良かったんですか?」


「それはこれから探す」


「…………は?」


「だから、今日は『オジさんの良いところを探すデート』なんだって」


 え? ドユコト?


「えーっと……。いいなと思った相手とするのがデートなんじゃ?」


「別にどっちでもいいじゃん。あの子とまだ付き合ってないなら、オジさん今"フリー"ってことでしょ? なら私とデートしても全然問題ないわけだし」


「いやまあ……」


 そう……なのかなぁ?


「この話は終わり。そろそろ行かないとデートの時間がなくなっちゃう」


 彼女は会話を打ち切ると俺の手を握って一歩踏み出そうとする。


「行くってどこに?」


「私の行きたいところ。ついてくれば分かるって。ほら、早く」


 彼女は俺の手を引いて歩き始める。


「あっ、ちょっと!?」


「もー、しょうがないなー」


 彼女は何を思ったのか、舐めかけの棒付きキャンディーを口に含んでモゴモゴさせてからチュパッと音を立てて取り出す。


「オジさんにコレあげるから、大人しく私についてきてねっ♡」


 巨乳ギャルは小悪魔っぽく微笑むと、あろうことか唾液がたっぷりコーティングされた舐めたてホヤホヤの飴玉を俺の口の中へ押し込んできた。


「もがっ!?」


「あと、私のことは名前で呼ぶこと。気軽に『アヤネ』って呼んでくれたらいいからね」


 彼女はそう言ってニッコリと微笑むと、俺を引っ張って人混みの中をグングン進んで行くのだった。


 俺はふわふわと揺れる銀髪の巻き髪をボーッと見つめながら思った。


 ――ギャルって体の匂いだけじゃなくて、唾液も甘いんだな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る