【1章完結】オッサン、３人のギャルに『シェア』される！？〜元気いっぱいな美人ギャルに懐かれた平凡サラリーマン、ギャルづくしな毎日が始まってしまう〜

第10話 ギャルはマッグでイチャイチャしたい(前編)

「男なら見ちゃうよな、これは……」

　トレーを両手で持った俺はファストフード店の階段を上りながら、前を行くギャルの楽しげに揺れる制服スカートを眺める。

　絶妙な長さに調節された見えそうで見えないスカートの話だけではない。

　彼女の華のある容姿は街行く男たちの視線を自然と集めてしまうのだ。

　駅前にいるときも、店へ来るまでの道中も、レジへ並んでいる間も、その場に居合わせた男たちの視線は彼女へ注がれていた。

　彼女自身がそれを気にする素振りはないが、慣れない俺にとって他人の視線はけっこう気になる。

　しかも明らかに俺と彼女を見比べる視線。思ったことを口にする男も少なくなかった。

　けど、今の俺にとっては彼らの勝手な意見など単なる妬みにしか聞こえない。

　それもこれも、彼女が俺にかけてくれた魔（・）法（・）の（・）言（・）葉（・）のおかげだ。

「気にしなくていいよ、オッサン。アイツらただの『じゃがいも』だから」

　ツンと澄ました表情で、周りの男たちをただの芋（・）と言い切ってしまう彼女がとてもカッコよく見えた。

「――フッ、芋どもめ」

　店の２階へ到着すると、先に席へ着こうとしていた彼女がじ（・）ゃ（・）が（・）い（・）も（・）達（・）に絡まれていた。

　俺は彼女へ声をかける。

「ミ（・）サ（・）キ（・）、３階に行くよ」

◆

「ねえ、オッサン……マジで彼女いないの？」

　２人席へ座ろうとした俺を引っ張って、一番奥の４人席まで連れてきたギャルが、どこか納得できないといった表情でそんな質問をしてきた。

「いないですって。もちろん結婚もしてませんし。でないと、３日も続けてミサキさんとこうして会えませんよ」

「そおーだーけーどおー……」

　ギャルはムスッとしながら壁側のソファ席へ座る。少し顔が赤い気がする。

「初めて名前呼ばれて、超ビックリしたし……しかも呼び捨てだったし……タイミング完璧だったし……オッサン超カッコよかったし……あれで彼女いないとか絶対おかしくない？」

　ごにょごにょと話すギャルの独り言は聞き取れない。

「帰ったらリサたちに報告だな！！」

　え？　俺、何かしたっけ？

　心当たりのないまま、とりあえず通路側の椅子へ座る。

「って、オッサンどこ座ってんの？」

「えっ……一緒に食べちゃダメですか？」

「なに言ってんの！？　こっちだって！」

　ご機嫌斜めのギャルがソファをバシバシ叩く。

「あ……はい……」

　俺は言われたとおり彼女の隣へ座り直す。

「オッサンの席は、あーしの隣！　向かいに座ったらくっつけないじゃん！」

　彼女はそう言って俺の肩に頭を乗せてくる。怒ってはないみたいだけど、喋ってくれない。

　とりあえず、俺はポテトをひとつ摘んで彼女へ見せる。

「食べますか？」

「ん」

　ギャルは無言で口を開く。俺は彼女の顔へポテトを近づけていき――

　ぴと

　鼻先へひっつけた。

「そこ、鼻じゃんッ――――！？」

「ふふっ、すいません。間違えました」

　俺は笑いを堪えながら、彼女にポテトを咥えさせる。

　彼女は少し照れくさそうにしながらもポテトをモグモグと食べ終える。

「俺にも１本、食べさせてください」

　俺は目を閉じて口を開き、ギャルのポテトを今か今かと待ちわびる。

　グサッ

　鼻の中に何かを突っ込まれた。

　目を開くと俺の鼻からポテトが伸びていた。ひでえ……。

「さっきのお返しだし！！」

　ドヤ顔を決めたギャルがポテトを引っこ抜いてヒョイっと口へ放り込む。

「あっ……」

「ん？　なに？」

「いや、その……嫌じゃないのかなと思って……鼻の穴に……」

　ギャルは大きく溜め息をついてから、トレーに乗ったポテトを口へ運んでいく。

「いい？　あーしら女の子はね、股の間にチ（・）ン（・）チ（・）ン（・）入れられるんだよ？　鼻クソくらい、どうってことないし！！」

　俺はハッと気付かされる。そして自然と手が彼女の頭へ伸びていた。

「ふふっ、確かにそうですね。女の子は大変だ」

　俺は彼女の頭を優しく撫でる。

「ほんとそれ！　女の子は超大変だし！」

　ミサキさんのことが愛おしくて仕方ない。

「あのね、オッサン……」

「ん？」

「あーしね……オッサンのチンチンならさ、大歓迎だから……」

　ほんのり頬を染めた彼女はそれだけ伝えると、うつむきながら黙々とポテトを食べ進めていくのだった。

「そっか、ありがとうございます。ただ……」

　たまたま通りがかった店員と目が合う。

　先ほど下で注文を受けてくれたレジのお姉さんだった。お姉さんは再び笑顔を引きつらせている。

　俺はゆっくりと顔を戻す。

「そういうことは、もっと人の少ない場所で言ってくださいね、ミサキさん」

「あーし、思ったことはすぐに伝えたいタイプだし！」

「そ、そうですか……ははははっ……」

　俺も笑顔を引きつらせるのだった。

◆

「バイトがしたい？」

「そ！　でないとストラップ代、返せないし！」

　ポテトとバーガーを食べ終えたギャルは、シェイクをすすりながら求人のフリーペーパーを渡してくる。

「前にも言ったじゃないですか、あの代金は返さなくてもいいって」

「だって今のままだと、あーしがプレゼントしたことにならないじゃん！　あーしのプレゼントとして、オッサンにはストラップをつけててほしいの！」

「な……なるほど」

　女の子の気持ちって複雑だな。

　俺はフリーペーパーをパラパラとめくっていく。すでにいくつか丸がしてある。

　スーパーのバイトって感じはしないな。

　本屋も違う気がするし。

　ラーメン屋とか西洋レストランでこの子を働かせるのは何か嫌だ。男たちの距離感が近そうで。

　となると、この子に似合いそうなのはファストフードにカフェにファミレスあたり。

「ファミレスか……」

　俺の頭にあ（・）る（・）男（・）の顔が浮かぶ。