第15話 誰がなんと言おうと魔王は戦犯
ラウラは焦りに焦ったまま、現在のねぐらたる洞穴へと転移してきた。
絶望に打ちひしがれるカエデはひとまず森の広間に置いてきた。
「あ、ラウラ様つ! ……って、ええ!? どうして、はんっ……、全裸、なのですか!?」
「ああ、紆余曲折あってないないした」
「〝ないない〟した!?」
シロが「どういうこと!?」と口をあんぐり開けて頭上に不可視の疑問符を大量に浮かび上がらせる。
「というより、今すぐ、ぅんっ、この鉄鎖を、んぁ……っ、はずして、くださいっ!!」
「シロ、悪いがそれどころではないのだ」
「こんな辱めを与えておいてそれどころじゃないって意味が分からないのですが……!?」
シロは真っ赤に染めた顔で叫ぶ。
妙に艶やかで、いうなれば女の貌をしていた。
鉄鎖が彼女の肢体に食い込む姿は蠱惑的で、男の本能を十二分に刺激する──が。
今はそれどころではない。
ラウラはAmaz○nの空箱の山を押し倒しながら、洞穴の中をぐるぐると歩き回る。
「魔力、魔力魔力魔力魔力……! 今、一瞬で我が吸い上げることのできる大量の魔力が必要なのだ!!」
「いっ、いったい……、ぁんっ、何が、あったのですか……?」
「────」
ピタリ、と立ち止まる。
それから昏い目でシロの方を向くと、
「──我、カエデたそのアカウント、BANしてしまった」
「はい…………?」
低い声音でそう懺悔した。
ラウラは頭を抱える。
「ああ、どうしてあの時我は着替えを持っていっていなかったのだ! いや、そもそもエリアの部下の一撃を格好つけて受けなければ……! はっ、何なら服を生成するればよかったではないか!?」
「……ああ。全裸のまま、あの娘の配信に映り込んだんですね」
一瞬で状況を理解するシロ。
流石、先代魔王の専属秘書である。飲み込みの早さはピカいちである。
「……まてよ。大量の魔力……。我、一つだけ心当たりがあるな」
そう言って、ラウラは頭上を見上げた。
天井の遥か先。
その先にあるのは──現魔王軍本部。
そのラウラの視線の意図に気付いて、シロが息を呑む。
「まっ、まさか……っ、んっ、それは、ダメですっ、ラウラ様!」
「先代魔王に魔力がないなら、当代魔王から奪えばいいじゃない──であるな」
「であるな、じゃありませんってっ!!!」
そう言うと、ラウラは虚空に手を滑らせる。
それだけでいつもの黒のジャージ一式が身体に張り付いた。
「ラウラ、様っ! ……ぁんっ。一体、その魔力で、なにを、するおつもり、ですか……っ」
ラウラは振り返り、言った。
「シロよ。──我、ちょっと世界を書き換えてくる」
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