転覆


   転覆


ぼうっとシルエット 浮かぶ

一等星の下が暗闇だなんて

誰が考えたジョークなんだろ

彼はそう考えて

甲板の欄干に腕かける


ゆらゆら 行き先も分からずに

ふらふら 煙は迷ってんの

消えたらもう それでお終い

すぅーっ ふーっ

彼女のタバコ 赤く輝いて ゆっくり眠る


星空 いっぱい背に受けて

機関士が下ってく

よーそろー おもかじいっぱーい

なーんて 言うのが夢だったんだよ

ゴウゴウ エンジンのお返事


ボルトをほんの一本だけ緩めてみた

ギギギーっ

ギ   

 ギ    

  ギ  

    ご


         ご  

     


                 ご   

                          


                           

                           ――ドゴォーン!!!

                            



カランカラン 警鐘 ビービー 警笛 ポー ポ  パー ポ 要請 

ホントは見習い君が出てきて喚くと思ったけど

怖がって引っ込んじまったかなぁ


ごめんなぁ

あの子

ごめんなぁ

その子

ごめんなぁ

お客さん

ごめんなぁ

あんた

でも もう 過ぎたことだろう


さぁ、みんな 転覆に

身を


任せよう

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る