デリバリー


  デリバリー


来年こそチキンでもつまもうか。

闇に際立つ街灯下

電話口は冷えきっていた

ふらふら舞う雪が

照らされては消えていく

きっと来年こそ休めるはずだから。

真っ赤な嘘が口元から

白く吐き出されては消えていく。


戸を開ければ

いつもそこに立っている

誰かが気が付くことはない

今日も軒先のベルを鳴らす。

黒ずんだ目の上に赤い帽子 垂れたポンポン

笑みと喜びが迎え、後に残るは孤独のみ

白い手袋には濡れた紙幣


イルミの並木が

荒れた頬を

いい加減に輝かせる

ねぇ きみ おめでとう。

プレゼントが籠の中で

ガサリと崩れる。

道路を横断していく

ベージュの人々

良い子にしていた人々。

ガンガンガン!

プップップー!

滑稽な叫びが辺りに木霊する。


店に帰れば 長生きなあの人たち

東京タワーを写すテレビが喚いてる

おなか空いてるでしょ。

よかったら一切れどうぞ。

一つ取って とろり 口に運ぶ。

口を焼くトマトソースの熱に

ただ 喉を詰まらせて泣いた。


メリー・クリスマス。

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