第45話 ゴーレム美女爆誕

「出来ましたよ!どうですか?結構自信作なんですけど」

『素晴らしいわ!私に似せてくれたのね…それにしても、ゴーレムってこんな見た目にも出来るのねぇ』

「なるほど、古代ゴーレム技術ですな。儂も大まかにしか存じ上げませんが、このような精巧な物だとは…いやはや勉強になります」

「造ったのは初めてだったけど、問題なく動かせて良かったよ」

「素材は粘土ですか?」

「うん、基本はそうだよ。今回はミスリル粉末と世界樹の雫を混ぜて強度を上げる紋様を描いてあるんだ。身体の芯は世界樹の枝と女神の涙を使ってあるよ。前世の時に持ってた素材がそのまま引き継がれてるとは思わなかったけど、在庫はまだまだあるからね」


女神も喜んでいるし造った甲斐があったよ。今まで気付かなかったけど、父の胸で大泣きしたあとから急に空間収納の中身が増えたんだよね。中身はゲーム時代に集めたモノ。こっちの世界では希少素材でも、ゲーム内では割と手に入れやすかったから無駄に貯めてたんだよね。使い道があってよかった。


「いやいやいやいや、おかしいよね?!なんで一介の貴族令嬢が世界樹だの宝玉だの持ってるの?!それと古代ゴーレム技術って、あれだよね?完全に失われた技術で現存している遺跡ゴーレムも壊れたら二度と直せないって理由で国の最重要保護設備になってるよね?!もしかして君、直せるの?!」

「え、直せますし造れますよ?」

「は…?」

「素材があれば造れます。結構簡単ですよ?」

「まって、アーシェ。そんな技術どこで覚えたの?」

「どこと言われましても…」

『ねぇ、そろそろこの身体使わせて貰えるかしら?』

「あ、どーぞどーぞ」


父も王子もキャラ変わってないかな?ま、いいか。女神はいそいそと人形の前へ立つと薄いピンク色の光の球に変化した。おそらくコレが本来のカタチなのかな?魂むき出しの状態だから穢れの影響も受けやすいって事だよね。神様も大変だなぁ。


光の球が人形の胸元に吸い込まれる。しばらくすると人形がフワリと光を放ち、やがて一人の女性の姿になっていった。見た目は俺が造ったのと代わりはないのだが、関節の継ぎ目は消えて瞳には光が宿り、肌は生き生きとしている。元が人形だなんて誰が信じるだろうか。


「すごい…すごいわ!この感覚…本当に肉体を得たみたい!」

「素材が素材だし、思った以上に相性が良かったのかも?」

「…!まって…まさか…」


クルクルと回りながら喜んでいた女神だが、急に止まるとワナワナとした様子で口に手を当てている。なにか問題でもあったのだろうか?


俺が声をかけようとすると、女神はそのままテーブルにあったケーキを一つ手に取った。そして、匂いを嗅いでからケーキを一口齧った。その目は驚きで見開かれている。


「すごい…匂いも味も感じられる…」

「え?」

「これ、完全に受肉してるわよ?!」

「えぇっ?」


受肉…つまり、神が本物の肉体を得たって事だ。えっ、中身は人形だよね???


「何度か依代に憑依した事はあったけれど、アレはあくまで内側から依代を動かしていたに過ぎないの。粗悪品だと思念を飛ばすのがやっとだったし。だから、依代の身体ではお茶もお菓子も飲んだり食べたり…ましてや匂いを感じる事もなかったのよ」

「へぇ〜」

「もう!これはとんでもない事なのよ?貴女が人形を作れば、どんな神だって本物の肉体を得られるって事なの!依代ではどうしても力が出せないけれど、この身体なら神界のように力が出せちゃうわ」

「…えぇと、つまり?」

「神に肉体を与えられる者として、悪しき者に狙われる事間違いなしよ!」

「えぇ?そんな大げさな…」

「大げさではないかもしれないぞ」

「えっ、お父様まで何を…」


父が難しい顔で何やら考え込んでいる。


「これは一部の者しか知らないのだが、邪神降臨を目論む者達がいると聞いている。その者たちがアーシェの造る人形に神を降ろせる力があると知ったら…」

「確実に狙われるだろうね」

「ひぇっ」


なにそれ怖い!!


「まぁ、流石に普通の素材で作った人形では無理でしょうけどね」

「で、ですよね〜」

「それでも用心するに越した事はないな」

「アムディ様もゴーレムの身体と知れたら危険が及ぶやもしれませんな」

「えっ、それは困るわよ!私は神としては強くないし…」

「あぁ、それなら大丈夫です」

「…どういう事?」


説明する前にお菓子食べていいかな?

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